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エクスとティノの復活


 ギルドの戦士たちが命を懸けて時間を作ってくれたおかげで、エクスとティノは完全に傷を癒すことができた。そして、エクスが持つネメシスソードがザムの腹を貫いた。


「あ……が……」


「完全に腹を貫いたわね。引き抜いたら血がかなり出るわよ。それでも、引き抜く? 私と戦う?」


 エクスがザムにこう聞いたが、ザムは目を開いて自分から後ろに下がり、ネメシスソードを腹から引き抜いた。引き終えた瞬間、ザムの腹から血が流れた。


「グアッ! グググ……グオオオオオ!」


 ザムは叫び声を上げながら魔力を解放し、治癒を始めた。無理矢理治癒する形だが、それでも腹の傷を治そうとする気迫を感じる。エクスはザムに接近し、再びネメシスソードを振り下ろした。狙いはザムの右肩。エクスはザムの右肩を斬り落とすつもりだ。


「そんなことは! させるか!」


 攻撃を察したザムは右手を上げ、バリアを展開した。エクスの斬撃はバリアによって阻まれ、ネメシスソードがバリアに命中した時に発生した衝撃でエクスは後ろに下がった。


「まだまだ踏ん張るわね。だけど、もうこれ以上踏ん張ったら倒れるから、大人しく倒れた方がいいわよ」


「フフフ……くだらない冗談を言うな。私はまだ戦える!」


 治癒を終えたザムは立ち上がり、エクスに向かって走り出した。だが、魔力を解放したティノがザムに向かって無数の氷柱を放った。ザムは右腕を盾にし、飛んでくる氷柱を防いだ。


「あなたにやられた分、倍にして返します!」


「フン! こんな氷柱が私に通用すると思っているのか!」


「私は通用するって思っているわ」


 ザムが氷柱を防ぐ隙に、エクスはザムの背後に回って攻撃を仕掛けた。エクスの奇襲を察したザムは再びバリアを張り、エクスの攻撃を防いだ。しかし、今回のエクスの攻撃はただの斬撃ではない。とてつもなく強い魔力が込められた斬撃だ。勢いよく振り下ろされたネメシスソードはザムのバリアに命中し、勢いをつけたままザムのバリアを破壊した。


「な……何だと……私のバリアが壊れただと……」


「バリアが弱っているってことは、あんた自身が弱っている証拠よ。これでも喰らいなさい!」


 エクスはそう言って、ザムに一閃を与えた。攻撃を受けたザムは後ろに下がり、治癒しようとしたのだが、ティノがザムの足元を凍らせた。


「なっ! 足元が凍っただと!」


 たとえザムのような超人でも、いきなり足元が凍ったらどうすることもできないのか。ザムは足を滑らせて転倒し、大きな隙を見せた。エクスはネメシスソードに魔力を発し、倒れているザムに向かって飛び上がった。


「これで終わりにしてやるわ!」


「ふ……ふざけたことを言うな! 私はまだ終わらんぞ! この程度で戦いが終わると思うなァァァァァ!」


 ザムは左腕に剣を持ち換え、エクスの攻撃を防ごうとした。だが、氷が一部解けて水となり、腕のような形となってザムの左腕を掴んだ。


「何! また卑劣な手段を使ったな!」


「今ですエクスさん! ザムを斬ってください!」


 ティノの声を聞き、エクスは頷きながらネメシスソードを振り下ろし、床の上に着地した。




 手応えあり。ティノちゃんのおかげでザムに大きな隙ができた。このおかげで、ザムに深い傷を付けることができた。


「ぐ……がぁ……」


 ザムの胸からは、大量の血が流れている。普通の人ならこの出血で気を失っているか、失血死しているだろう。だけど、ザムはまだ生きているし、動こうとしている。私はそうなることを予測していた。あのタフガイはこの程度の攻撃では死なない。


「ここまで……追い込まれるとは……グハッ!」


「無理矢理立ち上がらない方がいいわよ。あんた、本当に死ぬわよ」


 私はネメシスソードを構えてこう言った。だが、ザムは私の言葉を無視し、魔力を解放して傷の手当てを行い、私を睨んだ。


「死ぬのは貴様だ! エクス・シルバハート!」


「やれやれ、あまり無理しない方がいいのに……」


 私は呆れつつ、ネメシスソードを構え直した。次の攻撃で確実にザムを倒す。いや、倒さなければならない。


「何を考えているか分からんが……エクス・シルバハート、貴様はここで命を落とすことになる!」


「そんなこと決めつけないでよ」


 私がこう言うと、ザムは私に向かって走り出した。気が付いた時には、すでにザムが私の目の前にいて、剣を振り上げていた。早い。一瞬の間だけ気を抜いていたが、この隙をザムは見計らったのか。


「死ね!」


 ザムの声と同時に剣が私を襲った。私はザムの声と同時に横に移動したため、攻撃をかわすことができた。だけど、これで終わりではない。二撃目が来る。ザムは攻撃をかわされた時のことを考え、剣を横にして振るったのだ。


「チッ!」


 私はその場にしゃがんで攻撃にかわし、ザムの後ろにいるティノちゃんにウインクをして合図をした。ティノちゃんは魔力を解放し、風を発した。


「おっと、お前もいたか、ティノ・オーダラビト!」


 ザムは自分に向かって飛んでくる風を防御しながら、ティノちゃんを睨んだ。私はその隙にヴァーギンさんに持ち替え、ザムの背中を斬った。


「グウッ!」


「一瞬だけ隙を見せたわね」


 私がこう言うと、ザムは私の方を振り向いて左の裏拳で攻撃をした。まさか裏拳で攻撃してくるとは思わなかった。裏拳は私に命中し、そのせいで私は後ろに倒れた。


「私が手を使うとは……剣士である以上、あまり手を使いたくなかったがな」


「真面目過ぎるのもどうかと思うわよ! 私も剣士だけど、しょっちゅう蹴りを使っているわ、こんな風にね!」


 私は起き上がりながら、ザムの腹に向かって蹴りを放った。蹴りは命中。ザムは苦しそうな声を上げながら後ろに下がった。手で蹴られた個所を抑えているため、相当なダメージが入ったと思われる。


「グッ……まだ……負けんぞ!」


 ザムは剣を構え直し、私に向かって走り出した。その時、ティノちゃんが雷の剣を作り、ザムに向かって放った。


「今度は雷の剣か! エクス・シルバハートを始末してからお前を始末するからな、ティノ・オーダラビト!」


 ザムは後ろを振り向き、飛んでくる雷の剣を受け止めた。しまった! 私もティノちゃんもこの展開を想像していなかった。まさか、ザムが雷の剣を受け止めて、武器として使ってしまうなんて思ってもいなかった! だが、驚いているのは私だけだった。


「引っかかりましたね。あなたが私の攻撃を受け止めることは計算の中に入っていました」


 ティノちゃんはこう言うと、指を鳴らした。その瞬間、ザムが手にしていた雷の剣は派手に爆発した。


「グアアアアア!」


 流石ティノちゃん。攻撃を受け止められた時のために、爆発するように魔力を使っていたんだ。このおかげで、ザムは全身痺れただろう。


「ぐ……ぬかった……油断した……か……」


 ザムは苦しそうな声を上げ、私を睨んだ。攻撃するなら今がチャンスだ!


(エクス、俺を使え。倒すことができなくても、大きなダメージを与えることができる!)


 と、ヴァーギンさんが私にこう言った。私はヴァーギンさんに持ち替え、ザムに接近した。


「お前を斬る!」


 私は大声を発し、勢いを付けてヴァーギンさんを振り下ろした。渾身の一撃はザムに命中。再び深い傷を付けることに成功した。


「ぐ……ああ……」


 激しい痛みを感じているのか、ザムは苦しそうな声を上げていた。そして、後ろに倒れて体中を動かしていた。


「ぐ……ううう……こんな……ことが……あってたまるか……」


 倒れながらも起き上がろうとして動くザムの姿は、死にかけのゴキブリのようだ。毒薬を浴び、あるいは強く叩かれて致命傷を負っているにもかかわらず、生きるために動き、逃げようとしているのだ。だが、もう奴に戦うという選択肢はないだろう。


「惨めな終わりね。これで、ジャッジメントライトも終わりね」


 私は倒れているザムに向かってこう言った。だけど、ザムは再び魔力を解放し、再び傷を治してしまった。呆れるくらいの魔力の量だ。あと何回復活するつもりなのだろう。いい加減しつこい。深い傷を負ってまだ戦うつもりなのか。


「私はまだ倒れん。お前たちを殺すまで、絶対に倒れん!」


「いい加減倒れなさいよ。しつこい男は嫌われるわよ」


 私は呆れながらこう言った。その時、手に持つヴァーギンさんの刃を見て言葉を失った。刃の傷が広がっている。さっきの攻撃でさらに傷が広がってしまったのか。これ以上使ったらヴァーギンさんは……一体どうなるのだろう? もしかして……死んでしまうのか?


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