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ザムの本気


 ザムが魔力を解放した。奴の剣から放たれる雷の刃は大きく広がり、うなり声を上げるような火花が音を鳴らしている。


「これでお前をあの世へ送ってやる! 私自身の手であの世へ逝くことを嬉しく思うんだな!」


 ザムはそう言ってエクスに攻撃を仕掛けた。エクスは小さく息を吐き、足元に向かって魔力の塊を放った。そうか。足元を爆発させ、その勢いで吹き飛び、攻撃を回避するのか。ダメージを負うかもしれないが、ザムの手によって致命傷を負うよりましか。


「ふん。爆発の勢いで後ろに下がったのか。それなりに頭は回るようだな。褒めてやろう」


 煙を払いながらザムはこう言った。そして、目の前の光景を見て驚いただろう。エクスは吹き飛んで攻撃を回避すると同時に、ティノの元へ移動したからだ。そして、ティノがエクスに魔力を注ぎ、エクスはネメシスソードから大きな魔力の刃を作り出していた。


「これであんたの剣と互角ってところね」


「私には力はありませんが、魔力は人一倍あると思っています。もちろん、あなたよりも強い魔力を持っていると思っています!」


 二人はそう言った後、ザムに攻撃を仕掛けた。攻撃を仕掛ける二人を見て、ザムは呆れるようにため息を吐いていた。


「呆れた……確かにお前たち二人は強い。だが、その程度で私の魔力を越えたと思わない方がいいぞ!」


 その瞬間、さらにザムから強い魔力を感じた。まずい……まだザムは魔力を残しておいたのか。ザムが魔力を解放した直後、屋敷が震えた。建物が揺れるくらい強い魔力を持っているが、まだザムの表情には余裕の色が見える。こいつ……まだ戦えるのか!


「どちらが上か試そうではないか! 私の剣でお前らを斬り殺してやる!」


「上等! 倒れるのはあんたよ!」


 エクスはそう言ってネメシスソードを振り下ろした。その動きに合わせるかのように、ザムも手にしていた剣を振り上げた。二つの剣の刃がぶつかり合った。ぶつかった瞬間、小さな花火のようなものが刃と刃の間で発生し、周囲に火花を散らした。エクスとザムは力を込めているのか、歯を食いしばっていた。


「グググググ……」


「フン……やるではないか……この私の攻撃を受け止めるとは……」


「あんたみたいな野郎に褒められても嬉しくないわね」


「この私から褒められたのだ。少しは光栄に思えよ!」


 ザムがこうった直後、火花が破裂し、その勢いで二人は後ろに下がった。


「エクスさん!」


 後ろに下がったエクスを見て、ティノは心配した表情で近付いた。エクスの顔には、小さな火傷の痕があった。火花が散って、顔に付着したのだろう。粒のような大きさの火花だが、火傷を作るくらいの熱があったのか。


「フッ……もう少し踏ん張れば私が勝っていたが……途中で逃げたな、エクス・シルバハート」


 ザムは顔の火傷を治療しながらこう言った。エクスは素早く立ち上がり、俺を構えた。


「勝つためなら逃げるわよ。文句ある?」


「あるさ。正々堂々と戦えよ。敵を前にして逃げるなんて、ギルドの戦士らしくないなぁ」


「正々堂々? あんたみたいな卑劣な極悪人の口からそんな言葉が出て来るなんて思わなかったわ」


「私は極悪人ではないさ。むしろ、正義側の人間だ」


「はぁ、自分で正義側の人間だって言って恥ずかしくないの? 恥を知りなさいよ恥を!」


 と言って、エクスは魔力を解放してザムに襲い掛かった。




 私はザムに向かって攻撃を仕掛けた。少しでも奴の隙を作り、ティノちゃんが攻撃しやすい状況を作らないと。だけど、ザムはずっと強い魔力を解放している。戦いが始まってまだ三十分ぐらいしか経っていない。建物が揺れるくらいの強い魔力を解放し続けていると、いずれ魔力切れを起こして戦えなくなるはずだけど。


「どうした? 動きが鈍くなっているぞ。疲れているのか?」


 ザムの声を聞き、私は我に戻った。ザムが剣を振るう態勢を取ったため、私は宙返りしながら後ろに飛んだ。ザムは攻撃がかわされたことを察し、剣を突きの構えにして私に襲い掛かった。私は左手に持つネメシスソードを使い、ザムが放つ突きを防御し、ヴァーギンさんを振るってザムの体に傷を付けようとした。だが、ザムは左手でヴァーギンさんによる攻撃を防いだ。


(な……素手で剣の攻撃を受け止めただと!)


 ヴァーギンさん自身も攻撃を止められたことを察して驚いていた。ただ、攻撃を受け止めるだけはない。ザムは素手で、刃を握って動きを止めていたからだ。


「どうした? 私は素手で攻撃を防御しているのだぞ? このままお前のお得意の手足ぶった切り攻撃ができるではないか? どうした、やってみろよ」


 と、ザムは笑いながらこう言っている。ザムの言う通り、このまま力を込めればザムの左手を斬り落とすことができる。だが……力を込めてもヴァーギンさんが動かないのだ。魔力を使っているせいか、ザムの左手が強くなっているのか!


「何もしないのか。拍子抜けだな……それがお前の全力なのだな!」


 と言って、ザムは左腕を大きく振るった。そのせいで、私はバランスを崩して転倒した。転倒した隙にザムが攻撃を仕掛けてくるだろうと私は思ったが、後ろにいたティノちゃんが炎の剣を放ち、ザムに攻撃を仕掛けた。


「相変わらず魔力で作った剣を飛ばして攻撃するのか。こんなもの、一度攻撃を見れば対処法が分かるぞ。同じ攻撃を何度も行うのは得策ではないな」


 飛んでくる炎の剣を見て、ザムは笑いながら剣を振るった。その直後、炎の剣の先は大きく変形した。まるで植物の根っこのような形となり、うねうねと動いてザムの体に絡んだ。


「何! クソッ、こんな芸ができるとは!」


「私をただの魔力使いだと思わないでください」


 ティノちゃんはザムの動きを封じてこう言った。そして、鋭い棘のような風を発し、ザムに向かって放った。強い魔力を感じる。この攻撃なら、ザムに大きなダメージを与えることができる! 私はそう思ったが、予想は大きく外れた。


「グッ……グッガァァァァァ!」


 ザムは力ずくで体を封じていた炎の剣を破壊し、飛んでくる風の棘を殴って破壊した。


「エクス・シルバハートが厄介だと思ったが……一番厄介なのはお前の方だったか! ティノ・オーダラビト!」


 この言葉を聞き、私はザムがティノちゃんを狙うと察した。そうはさせるか! 私はティノちゃんの前に立ち、魔力を解放してザムに斬りかかった。ザムは右手で私の攻撃を封じたが、私は右手で持っていたヴァーギンさんを話し、下に降りてザムに向かって足払いを放った。


「うおっ!」


 予想外の動きだろう。ザムは後ろに倒れ、その隙に私はヴァーギンさんを回収した。


(倒すなら今だ。奴の体に俺を突き刺せ!)


(はい!)


 私はザムの腹に向かってヴァーギンさんを突き刺そうとした。しかし、いきなり目の前に分厚いバリアが発生した。そして、ヴァーギンさんの剣先がバリアに触れた瞬間、私の体内に強い電流が流れた。


「キャアアアアアアアアアア!


(グワアアアアアアアアアア!)


 私とヴァーギンさんは悲鳴を上げ、その場に倒れた。すぐに立ち上がりたいが……強い電流が体中を走る。動かしたら、強い電流がその部位を襲う。ぐ……クゥ……早く……早く動かないと……。




 まずい。エクスが感電して動けない。俺はティノの方を向き、急いで叫んだ。


(逃げろティノ! ザムがお前を狙って攻撃を仕掛けようとしている!)


 俺の声はティノに聞こえた。ティノはバリアを張って後ろに下がった。だが、ザムは猛スピードでティノに接近し、バリアを素手で破壊した。


「そ……そんな……私のバリアが……」


「こんなバリアで私の攻撃を防げると思っていたのか? どうやら、君は一人では何もできない、救いようのない落ちこぼれのギルドの戦士のようだなぁ」


 ザムはにやりと笑ってこう言うと、ティノの首を掴み、床に向かって叩きつけた。ティノの悲鳴が聞こえる。それから、ザムは何度もティノを殴った。


「私をここまで怒らせた愚か者はお前たちが初めてだ! 褒美として、恐怖と絶望と痛みを与えてやるぞ! それらを感じながら、あの世へ逝くがいい!」


 ザムは剣を持ち、地面に倒れているティノに突き刺そうとした。


(ティノ! 何でもいいから身を守れ! 一瞬でもいい、強いバリアを張れ! それなら、あいつの一撃を防げるはずだ!)


 俺は大声でティノに向かって叫んだ。だが、ザムの攻撃で大きなダメージを受けたせいか、ティノの返事がない! まずい……このままだとティノは……。


「死ね! ティノ・オーダラビト!」


 ザムの叫び声が聞こえた。次の瞬間、ザムの剣がティノの腹に突き刺さった。


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