二つの力で反撃を
エクスは気を失ったふりをして、ザムの隙を狙っていた。エクスの作戦は見事に成功した。ザムは目を覚ましたエクスを見て、驚いて隙をさらしてしまったのだ。エクスは俺を振るい、反撃を仕掛けた。狙いはザムの右腕。斬り落とすことができなくても、深い傷を与えれば奴は攻撃ができなくなるはずだ。
「グッ……卑怯なことを!」
「私が卑怯だとしたら、あんたらはそれ以上の卑怯者よ、犯罪者! 卑劣者!」
エクスがこう言うと、俺の刃がザムの右腕に刺さった。エクスは勢いを付けて俺を振ろうとしたのだが、攻撃を受けた瞬間にザムは魔力を解放し、防御力を上げた。刃でザムの体内が急に硬くなったことを感じた。
(戻せエクス。これ以上刃が奥に行かない)
(分かりました)
俺の話を聞き、エクスはザムの右腕から俺を引き抜いた。魔力を抑えたザムはエクスを睨みながら治療を始めた。その時にエクスは攻撃を仕掛けたが、ザムは左手に剣を持ち換え、エクスの攻撃を対処していた。
「左手でも剣が使えるのね。無駄に器用な奴」
「フン。いざという時に鍛えていたのだよ」
と言って、ザムは力を込めて近くにいるエクスに向かって剣を振るった。エクスは後ろに飛んで攻撃を回避したが、その時にザムは右腕の傷を治してしまった。
「残念だったなぁ。傷が治ってしまったぞ」
ザムは右腕をエクスに見せながらこう言った。エクスは呆れたようにため息を吐き、左手でネメシスソードを掴んだ。
「だったらまた傷付けてやるわよ。今度はその腕を斬り落とすかもしれないから、覚悟を決めなさい」
エクスは俺とネメシスソードを構え、ザムにこう言った。
二刀流。この技で戦うのは初めてだ。修行の時に攻撃の手数が増えるかもしれないと思い、一度やってみた。だがまぁ難しい。剣を同時に振ったとしても、時折刃同士がぶつかり合い、攻撃の邪魔になる。それと、片手で剣を振るったら太刀筋が安定しない。片手で剣の重さに耐えながら攻撃するのは意外と難しかったのだ。攻撃の手数が増えるよりも、逆に減っているような気がする。
だけど、今はザムの予想を外すことを専念しなければ。私が予想外の行動を起こしたら、動揺して少しは隙を見せるだろう。
(二刀流で戦うつもりか? 大丈夫か、エクス? 二刀流の訓練をしたことはないだろう)
(ぶっつけ本番で行きます! あらゆる手を使って戦わないと!)
私はヴァーギンさんにこう言うと、ザムに向かって走り出した。
「ふん。あらゆる手を使っても私を倒すつもりだな。すぐに無駄だということを教えてやろう!」
ザムは突っ込んで来る私に向かって剣を向けた。私は左手に持つネメシスソードを振り上げ、奴の剣を上へ弾いた。
「むっ!」
上に弾かれた剣を見て、ザムは動揺していた。その隙に、私はヴァーギンさんでザムの腹を突いた。攻撃は命中! 少しだけど、刃がザムの腹にめり込んだ!
「グッ! また傷を……」
ザムは私を睨みながら剣を振るった。ヴァーギンさんを握って後ろに下がろうとしたのだが、ザムは腹に力を入れていた。私を逃さないつもりか!
「死ね!」
ザムの声と共に、剣の刃が私を襲った。少しだけ後ろに下がることができたが、この斬撃で私は左目付近に傷を負ってしまった。
「ウグッ!」
左目の近くに傷を負ったが、目に傷は入っていない。それに、後ろに下がったおかげか傷も浅い。少し安心したが、ザムは次の攻撃の態勢に入っていた。
「このままお前の首を斬り落としてやる!」
今度の狙いは首だ。だが、今の私の状況をザムは理解していない。左手にネメシスソードを握っているのを忘れているのか? 私はそう思いながら、ネメシスソードをザムの右目に向かって突いた。
「フン!」
ザムは首を後ろに動かし、私の攻撃をかわした。そして、ザムは反撃を行おうとした。だけど、突如上空から雷の矢がザムに向かって落ちてきた。
「またティノ・オーダラビトか!」
雷の矢を受けたザムは、周囲を見回して魔力を解放しているティノちゃんを見つけた。その時、ティノちゃんはにやりと笑って両手を前に出した。
「覚悟してください。あなたの腕を斬り落とすつもりで攻撃します!」
と言って、ティノちゃんは両手から風を発し、ザムに攻撃を仕掛けた。
「この程度の風で、私を倒せると思うなよ」
風を受けても、ザムは余裕のようだ。だけど、時折風の中に氷の剣や炎の槍が現れ、ザムを襲った。
「グッ、こんな手を使うとは……予想外の強さだ……」
どうやら、ティノちゃんの攻撃を受けてザムはそれなりにダメージを受けているようだ。私はヴァーギンさんとネメシスソードを構え、ザムに斬りかかった。
「これで倒れなさい!」
私は無我夢中でザムを斬りつけた。私の攻撃に気付いたザムは後ろを振り向く前に何回か斬撃を与え、ダメージを与えることができた。それからはザムも防御をしていたが、最初の攻撃がそれなりに痛手になったのか、ザムの防御が緩い時があった。
「ツウッ! 小娘共が……この私を……」
「ギャーギャーうるさいわね、これでとっとと倒れなさい!」
私は大声を上げながら、ヴァーギンさんとネメシスソードを同時に振り下ろした。二つの斬撃は同時にザムに命中し、大きな傷を作った。
「ガアアアアア!」
攻撃を受けたザムは、悲鳴を上げ、血を流しながら後ろに倒れた。私は倒れたザムを見て、この後の展開を予想した。まだザムから魔力を感じる。とどめを刺そうとしたら、さっきの私のように不意を突いて動く可能性が高い。そう思った私はティノちゃんの方を見て、炎の拳を使って追撃するように伝えた。ティノちゃんは私の言うことをすぐに理解し、倒れているザムの真上に炎の拳を作り、そのまま落下させた。激しい衝突音がしたのだが、ザムの魔力はまだ感じる。どうやら、ザムは攻撃を防いだようだ。
「グググ……容赦のない攻撃だな……」
「あんたみたいな奴には情けをかけないようにしているの。それにしても、しぶといわねあんた。さっさと倒れなさいよ」
私は倒れているザムを見下すようにしてこう言うと、ザムは立ち上がった。やはり私の予想通り、まだザムは戦える。
「予想外だぞ。お前たちがここまで強いのは」
「マンガの悪者みたいなことを言うもんじゃないわよ。負けるわよあんた」
と言って、私はザムに向かって斬りかかった。ザムは私の攻撃をかわし、背後に回った。ティノちゃんがその隙に炎の矢を使ってザムに攻撃を仕掛けたが、ザムは左の拳で飛んで来た炎の矢を殴って消してしまった。
「ふん。話は終わっていないぞ」
「あんたのくだらない話を聞くのはもう結構! 昼寝の時間はもういらないわ!」
私はそう言ってヴァーギンさんを使ってザムに攻撃を仕掛けた。だが、ザムは剣を使って私の攻撃を防御した。この隙にティノちゃんが氷の矢を使い、足元に雷を発してザムに攻撃をしたのだが、攻撃を受けてもザムは悲鳴を上げず、動じることもしなかった。その後、何かに気付いたティノちゃんが大きな声で叫んだ。
「エクスさん! 離れてください! あの人、何かを企んでいます!」
ティノちゃんの声を聞いた私はすぐに後ろに下がった。その直後、ザムが私に向かって雷を纏った剣を振り下ろしてきた。
「ティノ・オーダラビト。ただの魔法使いかと思ったが、なかなか勘が鋭いじゃないか」
「長年戦ってきたからね。にしても、あんたやっぱり卑怯者ね。不意打ちするなんて酷くない?」
「正義のためだ。仕方ないと思っている」
「正義という言葉を言い訳の道具として使っているのね」
「言い訳の道具ではない! エクス・シルバハート! 正義と言う言葉を汚すなァァァァァ!」
と言って、ザムは怒りながら私に攻撃を仕掛けてきた。ザムの攻撃は早かったが、ティノちゃんが背後から氷の剣を飛ばして攻撃してくれたおかげで、ザムの動きが少しだけ鈍くなった。
「く……この程度で私を止められると思うなよ? まずは……エクス・シルバハート! お前から殺してやる!」
と言って、ザムは魔力を解放し、私に向かって剣を振り下ろした。私は攻撃を防御しようとしたのだが、私の予想以上にザムが解放した魔力は強く、そのせいで刃の周りに発している雷はかなり大きく広がっていた。まずい、これじゃあ避けることもできないし、防御したら確実に感電する! この状況……どうやって打破しよう?
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