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最終決戦の幕上げ


 最後までザムのくだらない過去を聞いた。くだらない、本当にくだらない。正義のためと言っているが、結局は自分の理想が違っていたというくだらない理由で大きな犯罪組織を作り、俺の故郷を滅ぼし、世界中の人々を苦しませていたのか! あの男の正義は狂っている! そんなものが正義と呼んでいいわけがない!


「ようやくあんたの長話が終わったみたいね……あーあ、余裕で昼寝ができたわ」


 エクスはそう言ってのんびりと立ち上がり、ザムの方を見た。エクスの横で寝ていたティノも起き上がり、両肩を回していた。ザムは二人の様子を見て、驚いていた。


「お前たち……本当に私の話を聞いていなかったのか?」


「ええ。あなたの昔の話に興味はありません」


「悪に落ちた奴のバカな話なんて、聞くだけ時間の無駄よ。だったら、昼寝をした方がいいわよ。おかげでかなり休めたわ」


 二人の返事を聞き、ザムは苛立ちで震え始めた。そんなザムを見て、エクスはにやりと笑ってこう言った。


「あんたの過去話なんて、聞く価値がないくだらない話よ!」


「お前たち、ふざけるなァァァァァ!」


 ザムは怒りながら魔力を解放した。改めてザムの魔力を感じるが、威圧感を感じると思わんばかりの迫力がある。周囲の壁や柱にひびが入り、床もタイルがはがれている。それだけザムの魔力があると言うわけだ。ティノは少し驚いていたが、エクスはネメシスソードを構え、その場に立っていた。


「さて、そろそろね」


 と、エクスはにやりと笑ってこう言った。その言葉を聞き、ティノはあることを思い出したのか、はっとした表情になった。その直後、足元から爆発音が聞こえた。




 ギルドの戦士による破壊活動が始まった! デリートボンバーを逆に使うという展開にはなるが、これでこのアジトを木端微塵に破壊できる!


「そうか……このためにギルドの連中はいなかったのだが。エクス・シルバハート、私に嘘をついたな」


「敵の言うことをまともに信じたあんたが悪いのよ」


「嘘をつくのは悪人だけだ」


「だとしたら、殺人、賄賂、麻薬製造販売、テロ活動をやっていたあんたも悪人よ」


「私が起こした行為は犯罪ではない! 正義だ!」


 ザムは大声で怒鳴り、私に襲い掛かった。その直後、再び爆発が発生した。このおかげで、屋上にいた私たちは下の階に落ちた。私とティノちゃんは何とか着地できたけど、ザムの奴も何とか着地したようだ。怪我をすればよかったのに。そう思っていると、ザムは剣を持って私に襲い掛かって来た。


「よくも私をこけにしてくれたな、エクス・シルバハート! お前だけは私の手であの世へ送ってやる!」


「あんたの手下も同じようなことを言ったけれど、誰も私を倒すことはできなかったわよ!」


 私は言葉を返しながら、ネメシスソードを振るった。剣と剣の激しい衝突音が響いた。それから、私は少し後ろに下がって余裕を作り、ザムを斬るためにネメシスソードを振るった。だが、ザムも私を斬るために必死に剣を振るっていた。


「フン。私の攻撃を対処するとは、なかなかのものだな」


 ザムは少し笑いながらこう言った。ザムの太刀筋は確実に私の攻撃と合わせていた。そのせいで、互いの刃が当たってしまい、ネメシスソードの攻撃が奴に命中しない。


「守ってばかりでは戦いが続く。こちらも攻めるぞ」


 と言って、ザムは魔力を解放した。私はザムの攻撃に対し、防御のために身構えた。しばらくして、ザムは私に向かって剣を振り始めた。私の目では、一振りしかしていないように見えたが、二回金属音が響いた。ザムは私が気付かないレベルの速さで剣を振っていた。恐らく、連続で剣を振るったということだ。


「どうした? 私の攻撃を見切ることはできなかったのか?」


 ザムはそう言いながら、私に攻撃を続けた。防御を続けていたのだが、次第に私の防御は薄れ、少しずつ私の体は傷付いていった。


(エクス!)


 心配したのか、ヴァーギンさんが叫んだ。これ以上攻撃を受け続けたらまずい。ザムのくだらない長話を聞かず、眠って体力を回復してもザムの攻撃に追いつけない!


「それなりにやると思ったが、まだまだ私に敵わないようだな。だが、お前に次はない!」


 ザムは剣を大きく振り上げて、私にとどめの一撃を放とうとしていた。だが、悪人の思い通りにはならない。ティノちゃんが雷で作った腕を伸ばし、ザムの腕を止めていたのだ。


「グガッ!」


 腕を掴まれた瞬間、ザムは一瞬だけ苦しそうな顔になった。感電したのだろう。この一瞬が私を救ってくれた。そして、ザムに大きな隙を作った。


「ティノ・オーダラビト! 貴様も厄介だな!」


 ザムはティノちゃんの方を向いてこう言ったが、奴は私のことを見ていなかった。私は魔力を解放し、力を込めてネメシスソードを振るった。


「なっ……」


 私が放った一閃はザムの脇腹に命中した。切り口から血が流れ、ザムの表情も苦痛の色を見せていた。だが、傷口はすぐに塞ぎ、ザムの顔も元に戻った。


「一瞬だけの隙を突き、私を攻撃したか。だが、二人がかりでこれだ。これだけしかダメージを与えられない」


「上等。どんな手を使ってもあんたを斬り倒すわよ」


 私がこう言うと、ザムは私に向かって剣を突いた。私はネメシスソードを振るってザムの剣を上に上げた。ティノちゃんがその隙に氷の剣を作り、ザムに向かって飛ばした。


「今度は氷の剣か!」


 ザムは高く飛び上がり、自分に向かって飛んでくる氷の剣を叩き落とした。ティノちゃんはそうなるだろうと予測していたのか、すでに次の攻撃の支度を終えていた。


「これが本命の攻撃か」


 目の前の光景を見たザムがこう言った。ティノちゃんは大きな炎の拳を放っていた。ザムは剣を使って炎の拳を斬って消そうとしたのだが、ティノちゃんの魔力が強すぎるせいで、一振りで炎の拳は消えなかった。


「ほう。なかなかいい攻撃ではないか」


 ザムの奴がこう言った後、炎の拳はザムに命中した。だが、ザムは魔力を解放して炎の拳を消し、着地した。私はその隙にネメシスソードをザムに向けて振るったが、ザムは足元の瓦礫を上に蹴り上げ、盾にした。


「グッ!」


「アジトを壊したのはいい選択ではなかったな。こうやって落ちている物を使って盾にすることができる」


 と、ザムは自慢げにこう言った。ネメシスソードは蹴り上げられた瓦礫を斬り裂いたが、後ろにいたザムはいなかった。この隙にどこかに行ったのだろう。


「私を探しているのか?」


 上空からザムの声が聞こえた。あの野郎、私が瓦礫に気を取られているうちに、高く飛び上がったな。そして、その状態で攻撃を仕掛けるつもりか。


「今度は私の魔力を見せてあげよう。光栄に思えよ、エクス・シルバハート!」


 ザムは魔力を解放し、右手で持っている剣を上に上げた。その直後、刃全体に雷が走った。あいつの魔力は雷か。


「正義の雷を受けるがいい!」


 大きな声と共に、ザムは剣を振り下ろした。振り下ろした瞬間、剣先から巨大な雷が私に向かって飛んで来た。


(この雷を受け止めるのはまずい! 横に飛んで回避しろ!)


 ヴァーギンさんの言う通りに、私は横に飛んで雷を回避した。だが、これはただの雷じゃないことを私は予測していた。


「避けたか。無駄なことを」


 ザムはにやりと笑ってこう言った。やはり追尾するのか! ザムが放った雷は私に向かって動いた。


(やはりそうか……エクス。俺を使って防御しろ。耐えられるかどうか分からないが、あの雷からお前を守ってやる)


(大丈夫ですか? 刃にはひびが……)


(お前が傷付きながらも戦っているんだ。俺も死ぬ覚悟を持って戦わないと)


 ヴァーギンさんがこう言った。私はヴァーギンさんの覚悟を無駄にしないため、鞘から抜いて飛んでくる雷に向かって構えた。しばらくして、ザムが放った雷はヴァーギンさんに命中した。


(グオオオオオオオオオオ!)


 電撃を受けたヴァーギンさんが、苦しそうな悲鳴を上げた。ヴァーギンさんがこれだけ悲鳴を上げるなんて初めてだ……これほどまで、この電撃の威力が恐ろしいということか。


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