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全てが悪だと知った後で


 裏ギルド、シークレットマネーが雇った金に汚い傭兵共が私に襲い掛かって来た。奴らは戦いのプロ。それなりに面白い戦いになるだろうと私は思っていた。だが、私はすぐにシークレットマネーのボスとその家来に話を聞かなければと考えを改めた。こんな雑魚と遊んでいる暇はないのだ。


「雑魚と遊んでいる暇はないのだ。大人しく死んでもらおう!」


 私はそう言って、素早く傭兵共を斬り裂いた。あっという間に傭兵共の三分の二が私に斬られ、命を落とした。ま、所詮雑魚だったってわけだ。


「ぐ……クソ……」


「仲間があっという間に……」


「何という強さだ……」


 運良く生き残った傭兵は、私に対して恐ろしい物を見るような目をしていた。死に損ないはどうでもよかった。私は後ろで怯えていたシークレットマネーのボスに近付いた。


「さっきの話は本当か? 貴様らが政治家に賄賂を渡し、動きやすいようにしていたというのは?」


「あ……ああ。本当だ! 政治家共に賄賂を渡し、その見返りとしてギルドに圧力をかけていたんだ!」


「そうか……分かった」


 私は腹が立った。自分たちのために政治家に賄賂を渡すシークレットマネー。その賄賂を受け取り、裏ギルドの言いなりになる愚かな政治家共。そして、その愚かな連中に圧力をかけられて何もできない非力なギルドに対し、怒りを覚えたのだ。


「た……助けてくれ……私を殺せば、お前のギルドの立場がなくなるぞ!」


 私の怒りの表情を見たのか、シークレットマネーのボスは情けない声でこう言ったんだ。私はその声を聞き、感情に任せてそいつを真っ二つに斬り裂いた。


「ヒィィィィィ!」


 近くにいたボスの家来は、真っ二つになったボスを見て悲鳴を上げた。私はそいつに近付き、剣を振るってボスと同じように真っ二つにしてやった。話は聞いた後、私は足早にギルドへ戻って行った。




 ギルドに戻って来た私を待っていたのは、苦い顔をする重役だった。それに、空気が重苦しい。まぁ、そんなことになるだろうと予想はしていたが。重役は私に近付き、肩を叩いた。


「君は何をしたのか分かっているのかね?」


「悪を滅ぼしただけです。それと、私は幻滅しました。賄賂を受け取った愚かな政治家の言う通りに動くなんて、悪の手先じゃありませんか!」


 私は大声でこう言った。重役は深いため息を吐き、私にこう言った。


「ザム。この世界に正義や悪という言葉はあっても、意味はない。政治家がいるから、彼らの援護があるからギルドは成り立つ。世の中は理不尽だ。己の正義を通すのは難しいのだ」


 そう言って、重役は去ろうとした。私は強い者、愚かな政治家の言いなりにしかならないギルドの重役を殴ろうとしたのだが、近くにいたギルドの戦士が私を止めた。


「止まれザム! 気持ちは分かるが、政治家が絡んでいる以上、俺たちにはどうしようもない!」


「世の中お前みたいに真面目な奴ばかりじゃないんだ。悔しい気持ちや、腹立たしいのは分かるけど……逆らったら俺たちもどうなるか……」


 ギルドの戦士たちも、悔しそうな顔をしていた。だが、私は彼ら以上に腹が立っていた。正義を貫くはずのギルドが、卑劣な手を使う奴らに屈していたことに対してだ!




 その後、私はギルドに繋がる政治家のことを調べた。奴らが裏でどんなことをしているのか調べるためだ。調査を終えた後、私はすぐにそいつらを殺そうとした。そんな中、私が調査をしていることを知った政治家の一人が接近してきた。私は指定されたレストランへ行き、そいつと会うことにした。


「どうも。あなたがザム・ブレークファートですね」


 その政治家は豪華な身なりをしていて、指には光輝く宝石が埋め込まれた指輪、さらには純金でできたセンスの悪いネックレスをしていた。見た目でこいつは金を持っていて、センスがないことを把握した。


「そうです。で、ウラガネさん。私に一体何の用ですか?」


 ウラガネにこう聞くと、机の上に分厚いアタッシュケースを置き、中を開いた。その中には予想通り、無数の札束が入っていた。


「シークレットマネーの事件の際の活躍、私も耳にしています」


「あなたもあいつらから賄賂を貰っていた。そのことを黙らせるために金の力を使うんですね」


「それと、あなたが私の命を狙っている可能性もあるということで……」


 と言って、ウラガネは笑った。気持ち悪い笑顔だ。金の力で私が止まるだろうと思っているのだろう。そう思うと、本当に腹が立った。持っている剣でこのクソ野郎の頭を斬って割りたいと思ったが、ウラガネは続けてこう言った。


「ザムさん。我々政治家や上の立場の人間に歯向かおうなどと考えない方がいい。中には、あらゆる事件を起こし、揉み消した奴もいます」


「警告ですか?」


「そう読み取ってもいいでしょう。あなたは優秀なギルドの戦士だ。ギルドの戦士は戦士らしく、我々の安全を守るために戦ってもらいたいですね」


 その言葉を聞き、私はあることを思いついた。汚い金を受け取った政治家の犬になるようなギルドを辞めれば、私は自由に自分の正義を貫くことができる。自分で正義のために戦う組織を作ればいい。そう思い、私はウラガネが出したアタッシュケースを手にした。


「おお。理解が早いですね」


「まぁな」


 私はそう言って、レストランから去って行った。汚い金だが、これさえあればギルドに匹敵する組織を作れるかもしれないと思ったのだ。




 その後、私はすぐにギルドを辞め、ウラガネから得た金を使って仲間を集めた。そして、私たちが住めるような場所もな。それから数年後、私が集めた仲間たちによって、ジャッジメントライトが組織された。君が倒したアソパ、シク、レパンはジャッジメントライト結成時の最初の仲間だったのだよ。


 それから、私はジャッジメントライトを大きな組織にするため、ギルド時代から作っていた政治家との繋がりを利用し、金を得ていた。もちろん、脅してね。だけど、ウラガネのようなずる賢い連中は私たちに金を渡す代わりに、選挙などの活動で有利になるように動いてくれと言われていた。奴らの言うことを聞くのは腹が立ったが、金を貰い、脅しのタネを得るようなものなので、そこは我慢した。


 私は長年努力して、このジャッジメントライトを大きな組織にすることができた。新手の宗教だと勘違いして仲間になる奴もいたが、まぁ好意を持って仲間になるから問題はない。だが、中には我々のことを快く思っていない連中もいた。確か……後の英雄ヴァーギン・カリドの故郷を滅ぼしたと言われたな。ま、私にとっては英雄ヴァーギンなんて雑魚と同じだが。あ……あいつは死んだんだったな。だとしたら、恨む奴が一人減ったと言うわけだ。


 ジャッジメントライトを作ってからも、私が憎むギルドや汚い連中はこの世界にはびこんでいた。こいつらがいる限り、この世界には真の平和が訪れない。正義の心を持った者だけが生きる世界にしなければならない。私はそう思い、悪のギルドやその精神を持つ者を削除することにしたのだ。




「私は真の平和のために、正義のためにデリートボンバーを作り上げた。そして、正義のために戦う神の戦士のために、力を与えるべくストッパーブレイクを作り上げた。これを使えば悪は滅びると思った。だがしかし! 君たちが……エクス・シルバハートとティノ・オーダラビトが現れた! 君たちのおかげで、計画は進まなくなった! 君たちは悪だ! 正義の味方である我々を妨害する悪だ! だから……私は君たちと戦わなくてはならない! 君たちに手を貸すような悪のギルドを! 我々に反感する政治家共を殺さなくてはならない! 理解できるか? 君たちが存在するから、世界が……世界中に住む正義の心を持った人たちが苦しんでいることを!」


 中身がないことを延々と話していたザムが、横になっている私とティノちゃんの方を振り返った。私とティノちゃんの表情を見て、ザムは驚いた顔をしていた。


「何だ、そのふざけた態度は? 私の話を聞かなかったのか?」


 ザムがこう言うと、めんどくさそうに私は大きなあくびをした。


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