ザムのギルド時代
私がメガホーンゴブリンの軍団を一人で征伐したことはあっという間にギルドで話になった。あいつらのせいで若干の犠牲は出たものの、ギルドの戦士や町の人々は私を英雄だと言っていた。そんな中で、私が裏で糸を引いていた役場の人間を殺したことに、誰も気付いていなかったがな。まぁ、悪党のことなんてどうでもいい。あんな奴の命なんてゴミと同じだ。
その後、私はギルド内での地位が上がった。それに伴い、私に舞い降りる仕事は難しさを増していた。だが、私の剣の腕や天才的な頭脳、そして魔力の前ではどんな仕事も楽にこなすことができた。楽勝だったのだ、どの仕事もな。いろんな犯罪者を相手に戦ったが、どれもこれも私の相手ではなかった。仕事をこなすにつれて、ギルド内における私の地位も上がって行った。私が熱心に仕事をしていた時は、三桁の裏ギルドを壊滅させたな。裏ギルドに属していた人間は強い奴も弱い奴も関係なしに殺していたから、中にはやりすぎだという奴がいたが、私はその声を無視した。悪を逃せば、そいつが何をするか分からないからな。
そんな中、仕事を終えた私の前に見知らぬギルドの役員が訪ねてきた。その役員は、大きな町のギルドの役員だった。その当時いた私のギルドよりも大きく、事件も多発しているという。私の力を知ったその町の役員が、異動してこの町に来てくれと言われたのだ。その話を知った私はすぐに了承した。大きな町になると、大きな悪が存在するものだ。その悪を滅ぼすためにと思い、私はその町へ向かった。
異動してからも、私は前のギルドと同じように活躍していた。凶暴なモンスターを殲滅し、大規模な裏ギルドの壊滅を行った。私の力を見たギルドの戦士たちは、目を丸くして驚いていた。
「噂には聞いていたが、まさかこれほどの強さだったとは」
「こんなに強い奴がいたなんて、俺知らなかったよ」
「ザムさんがいれば、この町は平和だ! できることなら、ずーっといてくれよ!」
などと、共に働いていたギルドの戦士たちは私にこう言っていた。私は必要してくれるのなら、いつまでもこの大きなギルドにいようと思っていた。
そんな中、私はある裏ギルドの存在を知った。その裏ギルドの名前はシークレットマネー。主に、麻薬密売や人身販売を行っていた裏ギルドだ。末端の連中をしばく中、私はある情報を耳にした。シークレットマネーには、多数の政治家が関わっている。麻薬密売や人身販売で得た金の一部は、その政治家たちに流れていると。多分、金を渡すついでに自分たちの悪行が世間に広がるのを防ぐように伝えたのだろう。何て非道な奴らだと思ったよ。
その情報を知った私はすぐに動こうとした。だが、一人のギルドの重役が私に声をかけた。
「シークレットマネーのことで動くのか、ザムよ?」
「その通りです。金のために薬で多くの人々が人生を狂わせ、人身販売で見知らぬ土地に売られ、酷い目に合う人たちがいます。その人たちを救うべく、同じような犠牲者が出ないようにあの組織を潰さないといけないのです!」
私は声高々にこう言った。だが、その重役はため息を吐いてこう言ったんだ。
「シークレットマネーに関しての依頼は来ていない。一人の判断で勝手に動くのは正しい選択ではないぞ」
この言葉を聞き、私は腹が立った。犠牲者が出ているというのに、何もしないのは正しい選択ではないと思ったからだ。
「何を言っているんですか! 我々ギルドが何のために存在するのか忘れたんですか!」
「忘れてはいない。だが……世の中には触れてはいけないことがあるのだ」
「そんなの分かりませんよ。私は一人でシークレットマネーを潰しに行きます! これが正しい選択なんですから!」
「止めろというのが分からんのかザムよ? 腕っぷしのおかげでお前の人気や評価は高いが、お前はただの戦士。高い地位にいるわけではないぞ」
重役はそう言って足早に去って行った。ふざけるなと渡すは叫んだ。困っている人を見捨てて生きろというのか? 私はそんなのが嫌だった。だから、その重役の言うことを無視し、一人でシークレットマネーのアジトへ向かった。
シークレットマネーへの侵入は一人で行った。私が動くのを知っていたのは、一部のギルドの戦士だけだった。重役には一言も言わなかった。言ったら言ったで、面倒な口喧嘩が始まることになるのだからな。本当は真正面から攻め込んで、シークレットマネーの連中を一人残らず始末したいが、今回はこのことが重役にばれると、面倒なことになるからこっそり一人残らず始末することにしたのだ。
私は見張りを一瞬で斬殺し、アジトへ侵入した。見張りが斬殺されたことは周りの奴らは気付いていなかった。呑気な顔でアジト内の廊下を歩いていた。私は気配を消し、シークレットマネーの戦士に近付いては気付かれないように殺していった。そんなことをしていると、一部の戦士が怪しそうな表情をした。
「おかしいな、仲間の数が減ってるような気がするけど」
「そうだな。それにさ……何だか変な臭いがしないか?」
「臭い? うーん……確かにそうだな。鉄っぽい臭いがする」
あいつらは殺した戦士の血の臭いに気付いたのだ。すぐに始末しようと動いたのだが、他の戦士たちも以上に気付きだした。まずい状況になったと私は思い、引き返そうとした。だが、周囲から戦士たちが姿を現した。下手に動いたらばれると考え、私は身を隠しながら移動することに決めた。そうすれば、いずれ出口に出るだろうと安易な考えを持っていた。
しかし、私が到着した場所はシークレットマネーのボスの部屋であった。その時、私は天井裏を移動していたため、奴らは私の存在に気付くことはなかった。
「ワッハッハ! 賄賂を流せば流すほど、わしらの守りは固くなる!」
「そうですねぇ。金はあっても困らない物。あればあるほど暮らしは楽になる」
「それに、政治家という優秀な武器もある! そいつらに賄賂を渡し、ギルドの動きを封じることができるから、何かがあっても問題ない! 麻薬作り放題、若い女もさらい放題!」
「若い女は風俗で売れますからねぇ。グヘヘヘヘヘ」
「それに、金で優秀な傭兵共を見張りに頼んだから、変な奴が侵入してもすぐに始末されるだろう!」
「いやー、本当に楽な人生ですねぇ」
ボスとその手下が、笑いながら話をしていた。奴らの話を聞き、人身販売や麻薬販売で得た金を賄賂として政治家に渡し、その見返りとしてギルドの動きを封じるように頼んでいたのだ。そういうことだろうと予測していたのだが、実際にその話を聞いた私は感情的になり、思わず下のボスの部屋に飛び降りた。
「なっ! 何だお前は!」
「こいつの顔はニュースで見たことがあります! 確か、今話題のギルドの戦士。ザム・ブレークファートです!」
手下がボスにそう言うと、ボスは急いで傭兵共を呼び寄せた。傭兵共はすぐに私を取り囲み、武器を手にした。
「一人で乗り込む勇気は認める。だが、無謀だな。一人で多勢に勝てるわけがない」
「金を貰っている以上、仕事をしなければならないのだ。すまないが、お前をここで殺す!」
「皆、行くぞ!」
愚かなものだと私は思った。金のために悪事に加担するクソな傭兵共が私を殺すことはできないからだ。私は剣を手にし、素早く目の前にいた傭兵の腹を斬り裂いた。
「ぐわあああああ! あ……あああああ!」
傭兵共は分厚い鎧を装備していたのだが、魔力を解放した私の手にかかれば一振りで破壊することができる。つまり、装備しても無駄なのだ。腹を斬られた傭兵の腹から、いろいろなものが出てきた。それを見た他の傭兵共は私を見て、恐ろしいものを見る表情となった。
「どうした? さっきの威勢はどうした? 一人で多勢に勝てるわけがないと言っていたが、お前たちは多勢で一人の男を倒すことができないのか?」
私がこう挑発すると、傭兵共は私に対し、殺意を放った。
「この野郎! よくもやりやがったな!」
「お前は倒した後、手足をズタズタに斬り裂いて、その後で殺してやる!」
怒り狂った傭兵共は、私に襲い掛かった。この時、私はそれなりに面白い戦いが始まるだろうと思っていた。
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