ザムの青年期
私は夢であったギルドに入ることができた。最初のころの仕事内容は君でも分かるだろう。薬草を取りに行ったり、弱いモンスターの相手だ。それらの仕事は私にとっては楽な仕事だった。薬草の知識は剣聖の森で学び、大体理解している。弱いモンスターの相手なんて、本当につまらないものだ。剣を振るうだけで弱いモンスターの首をはね飛ばすことができたのだからな。その時の私はこう思っていたよ。弱いモンスターの首を跳ねるよりも、悪人の首を斬り飛ばしたいと。
そんな毎日がしばらく続いた。ギルドの役員が私に少し難しい仕事を用意してくれたのだ。この仕事を無事に終わらせることができれば、ギルドにおける私の立場がかなり上がるだろうと思い、私はこの仕事を受けることにした。仕事の内容はその当時、私が所属していたギルドの周辺に生息していたメガホーンゴブリンというゴブリンの討伐。メガホーンゴブリンは他のゴブリンと違い、力もあり、知識もある。そのため、奴らはどんなことをすれば仲間を増やせるか理解していた。どういう意味か分かるよな? あいつらは女性を犯し、無理矢理ゴブリンを出産させていたんだよ。あいつらによって、若い女性がさらわれる事件が多発したんだ。ギルドも対処して事件解決を急いだのだが、メガホーンゴブリンを倒せる戦士はいなかったんだ。皆、メガホーンゴブリンの強さを恐れていたのだ。私はこの事件を解決するため、一人でメガホーンゴブリンが生息するという洞窟へ向かおうとした。そんな私を見たギルドの役員は、私を止めた。
「一人で行くんですか? 止めた方がいいですよ! あいつらがどんな奴かあなたも理解しているでしょう?」
役員の言葉を聞いたギルドの戦士たちは、俺に近付いてこう言った。
「役員の言う通りだ。一人で行くのは死に行くようなもんだ」
「確かにあいつらに対して対策はしないといけないけど、一人で行っても……」
「とにかくあいつらの討伐は後でもできる。他のギルドの要請をしてから向かった方がいいよ」
彼らはメガホーンゴブリンがどれだけ危険か知っており、あいつらの手によって多数の仲間も命を落としていた。私がメガホーンゴブリンを討伐に行く数日前、優秀なギルドの戦士がメガホーンゴブリンを討伐しに向かったが、バラバラ死体になって帰って来たからな。彼らが必死になって私を説得するのも納得する。しかし、私はこう言った。
「何もしなかったら、あいつらが調子に乗るだけだ。一人でもあいつらを殺しに行く」
私はそう言って、反対する声を押し切ってメガホーンゴブリンが生息する洞窟へ向かった。
一日かけて私はメガホーンゴブリンが生息する洞窟に到着した。修行のおかげで、一日歩いても疲れは感じなかった。私は洞窟の前に近付き、あいつらがいるかどうか耳で聞いた。奥からは、女性の悲鳴とメガホーンゴブリン共の気持ち悪い笑い声が聞こえた。あいつらは口では言えないおぞましいことをやっている。なんて卑劣な奴らだと思った私は洞窟内に入った。すると、近くにいた見張りのメガホーンゴブリンに見つかった。
「何だぁ? 一体誰が入って来たんだぁ?」
私はすぐにそいつの首を剣ではねたさ。足元に転がるメガホーンゴブリンの頭を踏みつけ、周囲を見回した。私が洞窟に入ったことをこいつの仲間は察しただろう。
「おい、何だ今の音は!」
「お楽しみの時間中に、変な音出してんじゃねーよ」
と、奥からメガホーンゴブリンが現れた。数は二匹。私はそいつらに向かって斬り落としたメガホーンゴブリンの頭部を蹴り飛ばした。
「うわっ! 何だこれ……な!」
「こいつは見張り! 一体誰が殺しやがった!」
「私だよ」
メガホーンゴブリンが仲間の頭部を見て動揺している隙に、私はそいつらに近付いて剣を振るい、あっという間に斬り殺した。この調子ならメガホーンゴブリンを制圧できると察した私は奥へ向かって歩き出した。
しばらく歩くと、私はあいつらが寝床にしている場所にたどり着いた。そこであいつらはさらってきた女性をおもちゃにするかのような行為をしていた。
「何だテメェは?」
「その鎧、ギルドの戦士のようだな」
「ゲハハハハハ! 何だ、俺たちと一緒に楽しみたいのか?」
一匹のメガホーンゴブリンが下種な笑みをしながら私にこう言った。苛立った私はそのメガホーンゴブリンに近付き、首を斬り飛ばした。一瞬だけ静寂がこの場を支配した。その隙に私は周囲にいたメガホーンゴブリンを一閃で殺していった。
「う……うわァァァァァ!」
仲間が惨殺されていることを察したメガホーンゴブリンは、悲鳴を上げながら逃げようとした。逃げる奴がいる中、私に向かって襲い来る奴がいたのだが、私は難なくそいつらを斬り殺した。その後、逃げたメガホーンゴブリンを倒すために私は魔力を解放して動いた。そのおかげで先回りすることができた。
「ひっ! た……助けてくれ!」
「誰が貴様の命乞いなど聞くか!」
そう言って、私はそのメガホーンゴブリンを惨殺した。それから、私はそのまま周囲にいたメガホーンゴブリンを全て斬り殺した。
私の活躍によって、捕まっていた女性たちは救助された。だが、完全に納得がいく結末ではなかった。一部の女性は、口では言えない過酷で酷い目にあい、心が死んでいたからだ。
「こりゃ……ひでぇな」
私が呼んだギルドの戦士たちは、次々にこの場の惨状を口にした。私は近くにいたギルドの戦士に近付き、話しかけた。
「そうだろう。私がいなかったら、この場にいた女性たちはもっと酷い仕打ちを受けていた」
「そりゃーそうだけどよ。ザム、お前ちょっとやりすぎだよ。周りの女性たちの目を見て見ろ。バケモンを見ているような目をしているぞ」
この言葉を聞き、私は女性たちを見た。私を見て、怯えているように見える。助けられたのに、そんな態度はないだろう。
「礼くらい言えばいいのに。私がいなかったらもっと酷いことになっていたのに」
「お前が怖いんだよ。あまりにも強いから」
そうか、強すぎるのもあまりよくないのか。周りから化け物呼ばわりされるのは……まぁ、力を付ければ誰も文句言わないだろうと私はそう思った。
しばらくし、私は洞窟の奥の方へ向かった。ギルドの戦士がどうしたと言ったが、私は用があると言葉を返した。私の用。この騒動には裏がある。モンスターであるメガホーンゴブリンが簡単に町の中に入ることはない。あいつらも知能があるなら、町の周りに見張りが存在し、姿を見たらすぐに通報されるだろうと知っている。だが、奴らはそれでも町中に入り、女性たちを攫っていた。どうして女性たちを攫うことができたのか? それは、奴らに手を貸している奴がいるということだ。戦っている中、私は人のような影が奥へ逃げる光景を見ていた。それを見た瞬間に私はそう思ったのだ。
奥の部屋は食糧庫のような部屋だった。保存食のための干した肉や、飲み水が入ってある綺麗なツボが置いてあった。そのツボの間にしゃがむように、人のようなものがあった。私はそれに近付き、剣を向けた。
「立つがいい。貴様がこの騒動の裏で何かをやっていたのは察しできるぞ」
私がこう言うと、人のようなものはゆっくりと立ち上がった。服装から見て、こいつは町の役場の人間だと察した。しかも、かなり上の位にいる奴だ。
「た……助かった。あなたがいなければ、私もゴブリンに殺されていました」
「ふざけたことを言うな。お前がメガホーンゴブリンと共に酒を飲み、笑っている所を私は見たんだぞ。すぐに逃げたと思っていたのか?」
私はそう言うと、役場の人間は声を上げながら、後ろに下がった。私は素早く剣を振り、そいつの左足を斬り落とした。
「ギィィィィィヤァァァァァ!」
「私の話を聞き、逃げた……やはり、私の考えは当たっていたようだな」
「頼む! 洗いざらい話すから! メガホーンゴブリンと裏で繋がっていたことも、金や宝石を貰う代わりに町の中に入るようにし、女性たちが攫われても見て見ぬふりをしていたことも!」
「私が代わりに話をするから大丈夫だ。貴様のような悪は、私の手であの世へ送ってやる!」
この男の話を聞き、苛立った私は思わず剣を振り下ろした。役場の人間は私の斬撃を受け、そのまま真っ二つになった。ま、悪事を働く人間だ。殺しても罪悪感はわかなかったよ。
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