命を張った作戦
エンカとソセジさんが援護に来てくれた。他のギルドの戦士たちが呼びに行ったのか、それとも自主的に来てくれたのか分からないけど、とにかく来てくれたんだからありがたい。二人の援護の下、レパンを追い詰めることには成功したのだが、大きなダメージを受けたレパンはストッパーブレイクを使ってしまった。
「二人とも気を付けて! 幹部クラスがストッパーブレイクを使ったら、きっとかなり強くなるわよ!」
私の声を聞き、ソセジさんとエンカは頷いた。しばらくして、項垂れていたレパンが顔を上げた。シクの時とは違い、レパンは我を失ったように見える。目は虚ろで、口は半開き。だが、その虚ろな目からは確実に私たちに対して殺意があると察した。
「殺す……殺す殺す殺す!」
「まずい、薬の影響であいつの頭がやばいことになりやがった!」
エンカは後ろに下がりながら、レパンの様子を告げた。その直後、レパンは物凄い速さでエンカに接近した。
「マジかよ……」
この時の動きを私は見切れなかった。私は急いでエンカの元へ向かおうとしたが、遅かった。しかし、ティノちゃんが氷の刃を放ってレパンの攻撃の邪魔をした。そのおかげでエンカが逃げる時間を稼ぐことができた。
「かなり強化されていますね。裏拳で私が放った氷の刃を粉砕しました……」
レパンは左手の裏拳だけで、ティノちゃんが放った氷の刃を壊した。この時魔力を感じたが、ティノちゃんはかなり強い魔力を放っていた。普通、威力が高い氷の刃を片手だけで壊すことは不可能だ。やろうとしたら、逆に氷の刃によって斬り落とされてしまうだろう。だが、レパンは片手だけで氷の刃を壊した。ストッパーブレイクのせいで、体が強く、硬くなったのだろう。
「うがァァァァァ!」
突如、レパンは獣のような大きな声を上げた。私は前に出て、ネメシスソードでレパンに攻撃を仕掛けた。だが、ネメシスソードの刃はレパンの体に切り傷を与えることはできなかった。
「硬い!」
私はそう呟くと、レパンが私の方を振り向いた。私が近くにいることを察したのか、レパンは右の拳で私の腹を殴った。殴り飛ばされた私は地面を転がり、しばらくしてその場で倒れた。まだ戦えるが、さっきの攻撃であばらの一部にひびが入っただろう。かなり痛む。
「エクスさん! 大丈夫ですか!」
心配したティノちゃんが、慌てて私に近付いて治療を行った。このおかげで大分楽にはなったけど、私への追撃を防ぐためにソセジさんがレパンの前に立っている。かなり苦戦しているようだ。
「ティノちゃん、すぐにソセジさんの所へ行くわよ。かなり苦戦しているわ!」
「はい!」
「俺も行くぞ」
後ろに立っていたエンカは、態勢を整えて戦う準備を終えたようだ。私たちは武器を持ち、レパンの元へ向かって走って行った。レパンは私たちの存在に気付き、大声を上げた。その後、レパンはエンカに向かって走り出した。
「俺が狙いかよ!」
自分が攻撃の目標にされていると察したエンカは魔力を解放し、迫って来たレパンに向かって剣を振るった。エンカの剣はレパンの左の拳に命中したが、レパンの左手を斬り落とすことはできなかった。
「ぐが……ぐぐぐ……」
「ちょっと待ってて、援護するから!」
私は魔力を解放し、レパンに斬りかかった。レパンはエンカへの攻撃を止め、私の攻撃を受け止めた。その時、ネメシスソードの刃はレパンの右手を斬った。攻撃を受けたレパンは右手を抑えながら、悲鳴を上げて後ろに下がった。
「どうやら、魔力を使えばそれなりにダメージを与えられるようね」
私はこう言うと、後ろに下がったレパンを睨んだ。ダメージを与える方法が分かれば、勝てる!
レパンへダメージを与える方法が分かり、勝利への道が開かれたようだ。だが、まだレパンは戦える。この状況をどうやって打破しようか。俺はそう思っていると、息を切らせていたソセジが立ち上がった。
「皆、足止めを行えるか?」
ソセジの言葉を聞き、エクスたちは一斉に頷いた。この時、俺はソセジが何を考えているか分かった。エクスたちがレパンを足止めし、ソセジがありったけの魔力を解放してレパンにとどめを刺すのだと。
「ソセジさん、無茶しないでくださいね」
「ああ。十分承知しているさ!」
エクスにそう言って、ソセジは魔力を解放し始めた。強い魔力を感じたレパンはソセジの方を振り返ったが、エクスがレパンのうなじに蹴りを放った。その後、エクスは蹴りを放った足を抑えた。
「あいたたた……硬いわね、あいつのうなじ」
「ストッパーブレイクを使って硬くなったって言っただろうが」
エンカは呆れながらこう言ったが、エクスの蹴りのおかげで、レパンはエクスたちの方を向いた。
「私がやります」
と言って、ティノは解放した魔力を床に発し、レパンの足元から炎の腕を発した
「おお! それであいつの動きを止めるんだな!」
エンカはそう言って、ティノの作戦が上手く行くことを願った。だが、そう簡単に行かなかった。レパンは無理矢理足を動かして炎の腕を消し去り、エクスに向かって走り出した。
「今度は私が狙いってわけね!」
エクスはネメシスソードを構え、レパンの接近に合わせてネメシスソードを振るった。レパンは持っていた大剣でエクスの攻撃を防御し、力を込めて振るった。エクスは吹き飛ばされたが、エクスの後ろにいたエンカが強い魔力を解放し、剣をレパンに向けて突いた。
「これで動きを止めやがれェェェェェ!」
エンカが持っていた剣の根元にひびが入ったが、それでもエンカは剣をレパンに突き刺そうとした。そのおかげか、エンカの剣は徐々にレパンの体にめり込んでいく。しかし、レパンは左腕をエンカの頭に向かって伸ばし、エンカを掴んでしまった。
「ぐ……が……」
「死ねェェェェェ!」
レパンは力を込めてエンカを壁に向かって投げた。投げられたエンカは壁に激突し、気を失ってしまった。だが、このおかげでかなり時間を稼ぐことができた。ティノが魔力を解放し、無数の炎の腕を作り、レパンの動きを封じたのだ。
「ガッ! ガァァァァァ!」
「ソセジさん! 今です!」
ティノの言葉を聞き、ソセジは強い魔力を解放し、剣を構えた。
「ジャッジメントライト幹部、レパン! お前はここで倒す!」
ソセジはそう言うと、レパンに向かって走り出し、持っていた剣をレパンの左胸に突き刺した。
「ガッ……ガァァァァァ……」
剣を突かれたレパンは、弱弱しく悲鳴を上げた。ソセジの剣が心臓を貫いたのだろう。レパンは両腕を動かし、ソセジを掴もうとしたのだが、両手がソセジに届くことはなかった。
「ふぅ……終わったか……」
ソセジが剣を抜いた後、レパンは力が抜けたようにその場に倒れた。様子を見ているが、レパンは動く様子を見せない。あの攻撃でレパンは死んだ。
これでジャッジメントライトの幹部は全員戦える状況ではなくなった。最後の一人であるレパンが、ソセジさんの攻撃を受けて息絶えたからだ。ソセジさんは私を見て、申し訳なさそうな表情になった。
「すまない、エクスさん。君が望む決着にならなくて……」
「相手はストッパーブレイクという危険な薬物を使っています。私が望む終わり方にならないことを予想していました」
私は立ち上がり、倒れているレパンを調べた。体は冷たくなっており、左胸から流れている血は止まらない。確実にレパンは死んだだろう。そう思っていると、ソセジさんはその場に座った。
「すまない……さっきの攻撃で全ての力を使ってしまった」
「そうですか。分かりました。少し休んでください」
「ああ……そうするよ。援護に来てこのざまだ。すまない」
「謝らないでください。ソセジさんとエンカが来なかったら、レパンを倒すことはできなかったんです」
「後は私とエクスさんに任せてください!」
と、ティノちゃんが私の後ろからこう言った。その後、ギルドの戦士たちが気を失ったエンカと、魔力を失ったソセジさんを連れて後ろに下がって行った。さて……残りはザム一人だけだ!
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