シクとの再戦
ネメシスソードを手にし、私は迫るシクに向かって攻撃を仕掛けた。シクは途中で走るのを止め、高く飛び上がった。攻撃をかわすつもりだ。
「これでも喰らいなさい!」
宙に浮いたシクは、私に向かって魔力の刃が発した小剣を振るった。すると、魔力の刃が私に向かって飛んで来た。私はネメシスソードを振るって魔力の刃を斬って破壊し、後ろに着地したシクを睨んだ。
「ちょこまかと飛び回るわね。お猿さんみたい」
私はそう言うと、襲い来るシクを睨んで再びネメシスソードを構えた。次はシクの接近を狙って攻撃を仕掛けよう。そう思い、わざと何もせずその場で待機した。
「何を狙っているか分からないけど、動く前に殺してあげるわよ!」
シクはそう言って私に攻撃を仕掛けた。私は反撃のために少しだけ体を動かし、ネメシスソードが降りやすい姿勢にした。私が攻撃を仕掛けてくると察したシクは走る速度を落とし、私の攻撃のタイミングをずらそうとした。だが、そんなことをしたら自分が攻撃を仕掛けるタイミングもずれる。私はその隙を狙い、シクの腹に向かってネメシスソードを突いた。
「グガッ!」
シクの口から苦しそうな声が聞こえた。突きは命中。ネメシスソードはシクの腹を少しだけ突き刺していた。
「くっ……クソッ!」
シクは無理矢理後ろに下がり、腹からネメシスソードを抜いた。それなりに深く刺さったためか、抜いた瞬間に血が流れだした。
「ゲホッ! ハァ……ハァ……グウゥ……」
「苦しそうね。無様な姿」
私は魔力を使い、ネメシスソードに付着したシクの血を払い落としながらこう言った。私のこの言葉を聞き、挑発をするような態度を見たシクは苛立ち、大声で叫んだ。
「お前ら! 時間稼ぎをしなさい! 私を守るのよ!」
その叫びの後、周囲の建物の裏に隠れていたジャッジメントライトの戦士が現れた。隙を見て私を攻撃するつもりだったんだな。私はそう思いつつ、何て無駄なことを考えるのだろうと思った。ジャッジメントライトの戦士は私に向かって襲い掛かったが、その前にティノちゃんが魔力を解放して強い風を放った。
「エクスさん、雑魚は私が片付けます。シクとの戦いに専念してください!」
「それじゃあお願いね、ティノちゃん。あの女は私がやっつけるから」
私はそう言って、ネメシスソードを構えて吐血するシクに近付いた。
誰が見ても今はエクスの方が有利な状況だ。エクスが放ったネメシスソードによる突きはシクに大きなダメージを与えた。時間稼ぎをするために呼んだジャッジメントライトの戦士もティノが発した風によってあっという間に倒された。深手を負った以上、シクはどうすることもできないだろう。
「グッ……クソォォォォォ!」
シクは叫び声を上げながら、魔力を解放して無理矢理突きで受けた傷を治療した。傷は塞がったが、まだ痛みは残っているだろうし、それなりに血を失ったため貧血を起こす可能性もある。今のシクにできることは限られるだろう。
「エクス・シルバハート! よくもこの私を深く傷付けたわね! 絶対に許さないわよ!」
「あんた、自分で自分が強いと思っているの? 残念ね。私はこれでもまだ全力で戦ってないわよ。まだまだ余裕」
立ち上がったシクに向かって、エクスは冷たくこう言った。この言葉は本当だ。エクスはまだ魔力を解放していないため、その言葉通りに本気を出して戦っていない。少しだけ手を抜いて戦っている。この言葉を聞いたシクは、目を丸くして驚いていた。
「じゃあ……手を抜いて戦っていたってわけ?」
「そういうこと。言ったでしょ? あの時はアソパと戦った後だから、ちょっと疲れてただけ。今は本気で戦えるわ。ま、あんたみたいな奴に本気を出して戦うつもりはないけどね」
エクスはそう言うと、素早くシクに接近してネメシスソードを振り上げた。攻撃が来ると察したのだろう、シクは急いで後ろに下がったが、エクスはその後を追いかけてネメシスソードを振り下ろした。ネメシスソードの刃は、シクの右肩を深く傷つけた。
「ギャアアアアア!」
「今度は左肩を貰うわよ」
攻撃を受け、悲鳴を上げるシクに向かってエクスはこう言った。その言葉を聞いたシクは魔力を使って足元に強烈な衝撃波を発した。衝撃で発した勢いで後ろに下がったのか。
「クッ……こんな目に合うなんて……」
後ろに下がったシクは、悔しそうにこう言った。格下だと思っていたエクスに、大きなダメージを与えられたことにショックを受けているのだろう。エクスはネメシスソードを振り、発した煙を払っていた。
「もう終わり? 諦めるんだったら、さっさと諦めなさい」
エクスは勝ち誇ったかのようにこう言った。だが、シクはその言葉を聞かず、立ち上がった。
「諦める? 悪いけど……ここまでされて諦めるわけにはいかないわよ」
「右肩に大きな傷がある状態でまーだ戦うつもりなの? それで、まともに戦えるわけないじゃない」
「右が使えないなら、左がある!」
と言って、シクは小剣を左に持ち替えた。この女、まだ戦うつもりか。
はぁ。やるんだったら徹底的にやらないとダメなようだ。利き手が使えない以上、戦うのは難しいと思うのだが、まぁシクが戦意を失うまで相手をするしかないだろう。私は迫るシクを睨みつつ、攻撃をかわした。ダメージを受け続けたせいか、シクの動きは少し遅い。
「グッ! たぁっ! せあっ!」
シクは声を発しながら攻撃を仕掛けているが、どの攻撃も私に当たることはなかった。利き手ではない手で小剣を扱うせいか、どこかぎこちない動きだ。まるで初心者と戦う気分だ。
「死ねっ!」
「こんな攻撃で死ぬと思う?」
私はそう言いながら、攻撃を仕掛けたシクに向かって蹴りを発した。蹴りを受けたシクは悲鳴を上げながらその場に倒れた。
「グググ……くっそぉ……」
「だーかーらー、もう戦いは終わったようなもんだから、さっさと諦めなさい。今なら腕や足を斬らないでいいにしておくから」
「ふざけるな! まるで格上のような言い方じゃない!」
「そりゃそーよ。あんたと私。どっちが上って聞いたら、誰もが私の方が上って言うわよ」
「この……」
私の言葉を聞き、シクは肉体どころかプライドもズタズタに傷が付いただろう。私は呆れながらも、ネメシスソードを構えた。
「腹が立ったのならかかって来なさいよ。死にぞこない」
この言葉を聞いたのか、シクのこめかみが動いた。かなりイラついているようだ。
「この女……これ以上私を怒らせると……後悔するわよ?」
「後悔? 動けないほど傷付いているのに、そんなご立派なことを言える立場だと思うの?」
私は笑いながらこう言うと、シクは立ち上がって私を睨んだ。
「おーおー、怖いですねー」
「これ以上ふざけたら殺す。ふざけなくても殺す!」
と言って、シクは小剣を持って襲い掛かって来た。怒りで我を忘れ、ダメージによる傷みも忘れている。こんな状態で戦ったら負ける確率が上がるというのに。私はそう思いながら、シクの攻撃をかわした。
「このっ! クソッ! いい加減斬られて死になさい!」
シクは叫びながら攻撃を仕掛けているが、どんな攻撃も私に当たらない。これ以上戦うのは時間の無駄だし、さっさと終わらせよう。
「じゃあこの無駄な戦いを終わらせるわね。覚悟しなさい」
私の言葉を聞いたシクは、怒りのあまり強い魔力を解放した。おっ、ギリギリになって本気で戦うか?
「それじゃあお望み通りこの無駄な戦いを終わらせてあげるわよ! だけど、勝つのは私だけどね!」
そう言って、シクは私に向かって走り出した。だが、急に体を激しく動かしたせいで傷が開き、そこから血が流れた。これで動きが更に鈍くなるだろうと私は思ったが、シクの動きは鈍くなるどころか、早くなっていた。どうやら、出血しているのに気付いていないようだ。
「死ねェェェェェ!」
シクは小剣を構え、私に飛びかかった。私はネメシスソードを構え、飛んでくるシクを睨んでこう言った。
「弱った奴の攻撃を受けて、私が死ぬと思わないで!」
そう言った後、私はタイミングを見計らい、ネメシスソードを振るった。
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