新たなる剣
私とティノちゃんが軽くストレッチをしていると、ラゴンさんに呼ばれた。
「どうかしたんですか?」
「エッチなことだったら張り倒しますよ」
「んなわけあるかい。素材が集まったから、剣を作るぞ」
剣を作る! どうやら、いよいよ目的を果たせそうだ! 私とティノちゃんはラゴンさんの元へ向かった。ラゴンさんは鉱石が入った丈夫な袋を持ち、先頭に立った。
「今から鍜治場へ向かう。ちゃんとついて来てくれ」
「分かりました」
鍜治場? この辺りに鍜治場なんてあったっけ? 私はそう思いながら、ラゴンさんの後を追いかけた。移動を始めて数分後、私たちは修行で使った小屋の近くにいた。私は修行の時にこの辺りにいたけど、鍜治場っぽい所なんてなかった。どこにあるんだろう。
「さて、ちょっと待っててくれよ。用意が必要じゃからの」
ラゴンさんはそう言うと、魔力を解放した。とても強い魔力だ。私とティノちゃんは魔力が解放された際、吹き飛ばされそうになった。
「ふぃー、しばらく使ってないからちょっと落ち葉が集まってたのー」
どうやら、鍜治場は落ち葉によって埋もれていたようだ。そこには、武器屋の裏で目にしていた鍛冶の道具が置かれていた。
(こんな所に鍜治場が……俺、こんな場所があるなんて知りませんでしたよ)
「普段は使わないからの。まぁ、何十年も放置していたから、落ち葉が山のように集まっちまったからの。そのせいで鍜治場が隠れてたんじゃよ」
そう言いながら、ラゴンさんは準備を始めていた。私とティノちゃんもその手伝いをし、すぐに剣が作れる環境を作った。
「さて、まずはどんな剣を作るか教えてくれ。まず、刃はどうする?」
刃か……片刃か両刃ということね。いつも両刃の剣を使っていたから、そっちの方が扱いやすい。
「両刃でお願いします。いつもその型の剣を使っているので」
「了解了解。それ用の型は……あったあった」
ラゴンさんは両刃用の型を手にし、机の上に置いた。その後、ティノちゃんの方を向いて口を開いた。
「嬢ちゃん、火の魔力を解放してくれ。とびっきり熱い奴を頼むぞ」
「はい。分かりました」
「さて、そろそろ始めるぞ。時間はかかる、覚悟を決めるんじゃぞ」
ラゴンさんは私とティノちゃんの方を見てこう言った。それから、キツイ作業が続いた。剣を作ることは初めてだ。熱い熱を使って鉱石を叩き、一つにして型にはめてまた叩く。それを何度も繰り返す。ティノちゃんが熱を出すために魔力を解放しているが、相当高い熱ではないと鉱石が柔らかくならないのだろう。
「嬢ちゃん! もっと火の熱を高めるんじゃ! この程度の熱じゃあ鉱石は柔らかくならないぞ!」
「は……はい!」
「エクスのねーちゃん! もっと力を込めて叩くんじゃ! 相当な力じゃないと形を変えることはできないぞ!」
「わ……分かりました!」
今までのラゴンさんの口調とは全然違う。エロいことばかり考えているしょーもないエロジジイだと思っていたが、やる時は本当にやるようだ。こんな真剣なラゴンさん、見たことがない。私とティノちゃんは周囲の熱波を感じながら、ラゴンさんと共に剣を作り続けた。
作業が始まって数時間が経過した。どれだけ時間が経過したのか分からない。だけど、そのおかげで納得のいく剣ができた。
「ふぅ……刃の形は決まったの」
「そうですね……」
ラゴンさんは出来上がった刃を水に浸し、冷やした。そして、冷やした刃を机の上に置き、肩を鳴らした。
「さーてと、こっからは仕上げの時間じゃ! わしに任せろ!」
と言って、ラゴンさんは手慣れた手つきで剣を組み立てて行った。そして、数分後に出来上がっていた。
「どうじゃ? これが新しいエクスのねーちゃんの武器じゃ!」
と言って、ラゴンさんは私に出来上がった剣を渡した。刃は紫色に光り、魔力を流すとその光は更に強さを増す。そして、握り手も使い勝手を考え、かなり握りやすいようになっている。柄や鍔にある装飾品もかなり立派なものだ。
「すごい剣ですね。これなら長年使っても壊れることはなさそうです」
「長年? 一生使っても壊れんぞ! あの洞窟の鉱石と他の鉱石を比べないでほしい。剣としての素材として、頂点に立つかもしれない素材だからの! まぁ、魔力を持つ奴じゃないと扱えないがの」
ラゴンさんは笑いながらそう言った。私は試しに出来上がった剣を素振りした。軽くて扱いやすく、片手で持っても太刀筋にブレはない。今まで使って来た剣の中で、ヴァーギンさんに次ぐほどのいい剣だ。そう思っていると、後ろから魔力を感じた。誰かと思いながら後ろを見ると、そこには怪しい戦士が立っていた。
「何じゃお主は? 危険だからここから去れ」
ラゴンさんはそう言ったが、怪しい戦士は何も言わず私の方を見ていた。こいつ……もしかしてジャッジメントライトの戦士か?
「ラゴンさん、あいつはもしかしてジャッジメントライトの戦士かもしれません」
「ジャッジメントライトの? どうしてこんな所に?」
「ストッパーブレイクを使わされて、使い物にならなくなった人をどこかに捨てているんです」
「じゃあ、さっきのあれは使い物にならなくなったから剣聖の森に捨てたと言うわけか。酷いことをするのう。ザムの奴……」
ラゴンさんはジャッジメントライトの戦士を見ながら、ため息を吐いた。だが、丁度いい時に来てくれた。この剣の切れ味を確かめたいところだったんだ!
「エクス……シルバハート……お前を……殺す!」
ジャッジメントライトの戦士は私に襲い掛かって来た。私は攻撃をかわし、出来上がった剣を一振りした。確実にジャッジメントライトの戦士の右腕を斬った感覚はあった。だが、右腕は落ちなかった。
「あれ? どうして? 確かに斬ったはずなのに」
私は不審に思いながら、剣の刃を見た。刃には、ジャッジメントライトの戦士の血が付着していた。やはり、斬ったんだ。だけど、どうして腕が落ちないのだろう?
「エクス・シルバハート! お前を殺す!」
ジャッジメントライトの戦士の声を聞いて私は我に戻った。私はジャッジメントライトの戦士の攻撃をかわそうとしたのだが、その時に奴の動きが止まった。
「う……があ……」
どうしたのだろうと思っていると、ジャッジメントライトの戦士の右腕がゆっくりと動き、地面に落ちた。
「切れ味がすごすぎたんじゃな。だから、斬ってもすぐには落ちず、動いた後で落ちたんじゃな」
ラゴンさんが納得したようにこう言った。その後、私はジャッジメントライトの戦士を蹴り倒し、動けないように束縛した。
倒したジャッジメントライトの戦士をふもとのギルドへ連行した後、私は出来上がった剣を眺めていた。これはいい剣だ。本当に素晴らしい威力を持っている。そう思っていると、ティノちゃんが近付いた。
「名前を付けたらどうです? 愛着がわきますよ」
「そうねぇ……」
私はしばらくこの剣に付ける名前を考えた。数分後、あることを思いつき、私はこの剣にこう名前を付けた。
「この剣はネメシスソード。悪を斬る剣。いい名前でしょ?」
「そうですね。覚えやすいですし、エクスさんが持つのにふさわしいと思います」
「でしょでしょー。我ながらいい名前を付けたもんよ」
私はそう言いながら笑っていた。そんな中、チャイムが鳴り響いた。
「今日は客人が多い日じゃのー」
ラゴンさんはそう言いながら立ち上がり、玄関へ向かって歩いて行った。しばらくすると、ラゴンさんが私の方を向いた。
「エクスのねーちゃん。ギルドのお客さんじゃよー」
「ギルドの?」
私はさっき、ジャッジメントライトの戦士を連行した時に会ったギルドの戦士かと思ったが、その予想は大きく外れた。
「エンカ! よくここが分かったわね!」
「魔力を辿って何とかな。それと、強い魔力を感じたから、すぐに場所を突き止めることができた」
客としてやって来たギルドの戦士というのはエンカだった。私はエンカが来るなんて思ってもいなかったから驚いた。
「話があって来た。エクス、重要な話だからちゃんとよく聞いてくれ」
エンカは真剣な目で私の方を見ながらこう言った。重要な話ね。ジャッジメントライトが絡んだ話だろう。
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