新たなる剣を作るために
ザムを倒すために必要なもの。それは剣。剣となったヴァーギンさんの威力はかなりすごいものだが、ヴァーギンさんに頼っていてはダメだ。いざという時、もう一本強い剣があれば安心できる。私はその答えを出し、ラゴンさんと話をしていた。そんな中、ラゴンさんは剣聖の森の地図を持ってきた。
「いいかエクス? この森のどこかの洞窟には、強い魔力がこもった鉱石が眠る洞窟がある」
「洞窟ですか?」
(師匠、俺はそんな洞窟の存在を知りません。修行をしていましたが、そんなものを見た記憶はありません)
どうやら、ヴァーギンさんもこの洞窟の存在を知らなかったようだ。私たちが声を上げると、ラゴンさんは小さく笑ってこう言った。
「このことを教えなかったのは、洞窟に住むモンスターがかなり危険だからじゃ。エクスやヴァーギンが地上で戦ったモンスターと比べてかなり強い。そんでもっておっかない。今のエクスのねーちゃんでも勝てるかどうか分からない」
「そんなモンスターが、どうして地上に出ないんですか?」
ティノちゃんがこう聞くと、ラゴンさんはティノちゃんの方を向いて答えた。
「奴らの食料はその洞窟の川に住む魚や虫じゃ。それに、魔力がこもった場所で過ごしたせいか、奴らは他の奴らより頭がよくなっている。そのためか、雑魚を相手にしないっつープライドを持ってるんじゃろう。プライドを持つのは無駄だと思うが……ま、そのおかげで暴れずに済んでいるから逆にありがたいの」
ラゴンさんはそう言った。モンスターがプライドを持つなんて不思議な話だが、まぁいい。とにかく、新しい剣を作るためにはその洞窟に向かって、鉱石を手に入れなければならない。
「私、その洞窟へ行ってきます。そして、剣の素材を手にしてきます!」
「場所は分かったか?」
「はい。三年間、ずっとこの森で過ごしてきましたので、地理は覚えています」
「そうか。じゃが、危険だから何かあったらすぐに戻って来い。今回は修行の時のように自分の都合に話が進むと思うなよ。それと、ヴァーギンはここに置いて行け、自分の力で切り開くのも修行じゃ」
「分かりました。では、鉱石を取ってきます」
私はそう言って、外へ出て行った。ティノちゃんが後を追おうとしたが、ラゴンさんに止められていた。一人で行けということだろう。それなら、一人でもちゃんと素材を手にして戻って来る!
ティノは動きを止めた師匠の方を向いて怒鳴り始めた。当たり前か、行こうとしたら止められたんだから。まぁ……止める際に体に触れなければならないが、胸を触るのはどうかと思うが……。
「何するんですか変態セクハラスケベエロクソジジイ! どうして私を止めるんですか! 後、胸を触らないでください!」
「今回は修行の一環を備えている。エクスのねーちゃんだけ行かせるんじゃ。それと、わしに対する暴言酷くない?」
(師匠、そんなことを言われても反論する資格はありませんよ。止めるために胸を揉む必要はありません)
「そんなこと言うなよヴァーギン。さてはお前、手がないからおっぱいを触れないからって、わしに嫉妬しとるのかー?」
(嫉妬しませんよ。それ以上バカなことを言うと軽蔑しますよ)
「そりゃー勘弁」
はぁ……師匠のスケベ癖は本当にどうしようもない。ティノは杖を持って師匠の頭を叩き始める中、俺はエクスの無事を祈った。
ラゴンさんの家から数分で鉱石が採掘できる洞窟へ到着した。ふーむ。予想以上に深い洞窟だ。私は岩場を飛び移りながら下へ潜って行き、鉱石を探した。
潜り始めて数分後、まだまだ上から日の光が届く。だけど、もう少し奥深く潜ったら暗くて何も見えなくなるだろう。ライトを持ってきてよかった。そう思っていると、後ろから気配を感じた。私は剣を持ち、後ろにライトを照らした。そこには、私の身長と同じくらいの高さのムカデがいた。
「うわっ、キモ!」
思わず私は声に出して叫んだ。化け物並みに大きなムカデを見たら、誰だって叫ぶだろう。私の声を聞き、大きなムカデは口を大きく開けて私を食べようとした。だがその時、上から糸のようなものが大きなムカデに向かって発射された。後ろを見ると、巨大なクモがムカデに向かって糸を吐いていた。その後、クモは糸を操ってムカデを縛り、そのまま自分の口へ運んだ。巨大なクモは私を見たのだが、すぐにそっぽを向いてどこかへ去ってしまった。なんかむかつく、私が格下で、食べる価値もないから去ったようなものだ。この洞窟の住人にとって、私はただ迷い込んだ食べる価値もない雑魚ということだろう。
少しイラつきながらも、私は奥へ向かった。完全に真っ暗になったため、私はライトを点けた。すると、周囲には紫色に光る石が大量にあった。それに手を触れると、体中にサメ肌が立った。石が光るのは魔力があるってことだ。しかも、かなり強い魔力だ。私はぞくぞくしながら石を取ろうとしたのだが、背後から音が聞こえた。そこには、大きな黒い狼が立っていた。この洞窟のモンスターは雑魚を相手にしないと言っていたが、この狼からは強い殺意を感じた。私を殺すつもりなのだろう。
「私とやるつもり? やるなら殺すわよ」
私は剣を手にしてこう言った。その瞬間、狼は素早い動きで私の背後に回った。その動きを私は見抜けなかった。
「なっ!」
私は驚きつつ、剣を盾にするように構えていた。狼は私に飛びつき、大きな口で私の体を噛み砕こうとしていた。だが、剣があったため、それが邪魔になった。私は剣を払って狼の口を傷付けたが、深い傷を与えることはできなかった。
「クッ! 早い!」
狼は私の剣が当たる前に、素早く後ろに退いていたのだ。その後、私の隙を見た狼は再び私に向かって襲い掛かった。私は魔力を解放して高く飛び上がったが、狼のジャンプ力は魔力を解放した私と同じくらいの高さを飛んでいた。魔力なしでこれだけのジャンプ力か……まずい! やられる! そう思った瞬間、狼の爪が私に向かって振り下ろされた。私は防御をしたのだが、剣が破壊されてしまい、爪の攻撃を受けてしまった。
「ガアアアッ!」
地面に叩き落とされた私は、ふらつきながらも立ち上がった。地面に激突した際、硬い所に両肩を当ててしまった。動かそうとしたのだが、両肩は動かなかった。まずい、脱臼したかも。
「クッ……仕方ないわね」
私は無理矢理脱臼を治した後、魔力を解放して高く飛び上がった。これはまずい。一度逃げて、対策を練った方がいい。
エクスが傷だらけで戻って来た。ティノが傷だらけのエクスを見て悲鳴を上げ、急いで師匠の下へ駆け寄った。師匠はこうなることを予測していたのか、すでに治療の支度をしていた。
「やっぱりこうなったか。強かったか? あの洞窟のモンスターは?」
「強すぎです。修行した私でも、コテンパンにやられました」
エクスはティノの治療を受けながら師匠にこう言った。両肩を見ると、濃い紫色に染まっていた。
(エクス、両肩が変色しているぞ。派手にぶつけたのか?)
(ええ。攻撃を受けて、その衝撃で地面に強く激突したんです)
(どんなモンスターにやられたんだ?)
(やたらデカい狼です。あの洞窟、本当に危険ですよ。私と同じ身長のムカデがいましたし、そのムカデを大きなクモが食べちゃったんですよ)
エクスは洞窟で遭遇したモンスターのことを教えてくれた。狼どころか、ムカデやクモまでも生息しているのか。しかも、とんでもない大きさの。だとしたら、あの洞窟は危険だ。俺が付いて行かないとエクスが死ぬかもしれない。そう思うと、師匠が俺に触れた。
「ヴァーギン。話を聞いて手助けしてやりたい気持ちを持つのは分かるが、お前はここでお留守番だ」
師匠が俺に向かってこう言ったのだ。ティノもその言葉を聞いて驚き、師匠に詰め寄った。
「どうしてヴァーギンさんを連れて行くのはダメなんですか? それなら、今度は私がエクスさんと一緒にその洞窟へ行きます!」
「ティノの嬢ちゃんも付いて行くのは禁止じゃ。これはエクスのねーちゃんの試練。ヴァーギンとティノの嬢ちゃんには関係ない。エクスのねーちゃん自身がこの問題を解決しないといけないからの」
と、師匠はお茶を飲みながらこう言った。エクスはその言葉を聞き、静かに呼吸をしていた。
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