再びラゴンの元へ
この前、長年の修行を終えたと思っていたが、またラゴンさんの元へ向かうなんて思わなかった。私とティノちゃんは剣聖の森を抜け、ラゴンさんが住んでいる小屋へ到着した。私とティノちゃんが来ることを知っているせいか、小屋は少しだけ掃除されていた。私が修行を終えて小屋に戻って来た時は、小屋の壁に泥汚れがかなり付着していたのに。よく見ると、水で濡らして拭き取った跡がある。
「わざわざ掃除なんてしなくても、小屋の中はエロ本エログッズまみれなのは知っているのに」
「一応カッコつけたいんですよ。ジジイでも」
「そうね。男って女の子の前だとどーしてそうなるのかしら?」
「本当に分かりませんね」
私とティノちゃんはそんなことを話しながら、小屋の玄関を叩いた。すると、すぐに玄関が開き、ラゴンさんが出迎えた。
「魔力を察したぞい。ま、とりあえず中に入ってゆっくり茶でも飲め」
「お邪魔します」
私はそう言うと、すぐに客間へ向かった。
客間に着いた後、ラゴンさんはお茶を飲んで口を開いた。
「昨日、ヴァーギンから話の最初は聞いた。まず、幹部の一人を倒したと。お疲れさん。きつかったじゃろ」
「はい。でも、修行のおかげでかなり楽に戦えました」
「そうじゃろう。でも、そいつはどうなった? 大人しくギルドに捕まったわけじゃないだろ?」
ラゴンさんは大体のことは察しているかもしれない。私は息を吐き、次の言葉を発した。
「ラゴンさんの予想通りかもしれません。私が倒した幹部の一人、アソパは倒れた後、仲間に殺されました」
「やはり、わしの予想が当たってしまったな。ジャッジメントライトのやることじゃ。どんな手を使ってもでも、情報漏れを防ぐ。人の命を奪うことはやりすぎじゃ」
ラゴンさんは呆れているのか、深いため息を吐きながらお茶を飲んだ。その後、私の顔を見て真剣な目でこう言った。
「それで、ザムの奴と遭遇したのか?」
「その通りです。アソパを殺したのは、ザムです」
私はラゴンさんにかつての弟子、ザム・ブレークファートと遭遇したことを伝えた。一言聞いたラゴンさんは、再びため息を吐いた。
「あの野郎。裏ギルドに認定されたのに、まーだ懲りずに悪さをしているのか。本当に救いようのない正義バカじゃ」
「私はあいつに挑みました。ですが、アソパと戦った後なので、しっかりと戦えませんでした」
「エクスさんはその後、別の幹部と戦って追い返したんです。本当にギリギリの戦いでした!」
ティノちゃんが私の話のタイミングを見計らい、こう言った。フォローのつもりなのだろう。ティノちゃんの話を聞いたラゴンさんは、お茶を飲んでこう言った。
「まぁ、いろいろと言いたいことはある。他の幹部は多分、アソパよりちょっと強い程度じゃ。今の嬢ちゃんが戦っても、十分に勝てる相手じゃ。しかし、ザムの奴にはまだ勝てないかもしれぬ」
私はこの言葉を聞き、まだ何かが足りないのかと思った。三年間の修行で、私は体力も魔力も強くなった。だけど、まだ私は弱いのか。
エクスがザムに勝てない。俺でもその理由は少しだけわかる。だが、俺が口に出したらいけないことだ。エクス自身が理解しないと、エクス自身がこの問題を解決しないと成長しないからだ。
「一体私に何が足りないんですか? まだ、修行の時間が足りないんですか?」
「十分足りておる。またサバイバル生活を始めても、今の嬢ちゃんは成長しない。同じ修行をまたやっても、積む経験は少ない」
師匠はお茶のおかわりを注ぎながらこう言った。エクスはまだ、何が足りないのか分からないようだ。師匠はお茶を一口飲み、続けてエクスに話をした。
「ま、答えが出るまでゆっくりしなさい。疲れたんだったら、わしがリラックスできるようにマッサージをしてやるぞー。ぐひひひひ」
「結構です」
エクスは冷たくそう言って、ティノと共に茶の間から出て行った。
その後、エクスは外に出て考え事を始めた。俺は黙っていたが、しばらくしてエクスが声をかけてきた。
(ヴァーギンさん、今の私に足りないものって何ですかね?)
(それは自分で考えることだ。今までの戦いを思い出してみろ)
(今までの戦い……ですか)
エクスはそう言って、再び何が足りないのか考え始めた。答えを当てるんだエクス。何が足りないのか知れば、お前はきっと再び強さを得ることができる。
今までの戦いを思い出すか。私は剣士として、常に剣を使って戦った。どんな敵でも、強敵でも手足を斬り飛ばして相手の戦意を失わせていた。弾に蹴り技を使っていたけれど。うーむ……戦い方はこれでいいと思う。
体力の問題か? それは違うかもしれない。三年間の修行で私は力を得たし、魔力も強くなった。これで、弱い戦士ならあっという間に倒すことができる。それと、敵も私の力の差を感じて戦うことを避けるだろう。いや、これも違う。
じゃあ何が足りない? 私に足りないものは何だろう? そう思っていると、不意に私の右手が剣に触れた。その時、何となく剣が気になった。修行後、ベトベムからラリネットへ向かう前に武器屋で買った安い剣だ。アソパたちとの戦いで、結構派手に使ったから、刃がボロボロだ。無茶な戦い方をしたからなー。新しい剣を買わないといけない。新しい剣……剣。そうか。私に足りないものがようやく理解した。
(分かりました。私に足りないものが)
(それは何だ?)
ヴァーギンさんがこう聞くと、私は導き出した答えを告げた。
(剣です。私専用の強い剣。ヴァーギンさん以外の、新しい剣)
(そうだ。ようやく理解したな。今までは、店で売っている剣を使っていたが、それでは限界が来る。アソパとの戦いで感じただろう、俺の切れ味でも倒せぬ敵がいると)
(はい。私に合った剣を探す。もし、なかったら作ればいい)
(その通りだ)
ヴァーギンさんと会話をする中、ティノちゃんの悲鳴が聞こえた。あのエロジジイ、ティノちゃんに何かしたのだろう。私はそう思い、急いで小屋の中に入った。
「エクスさん! このエロジジイ、私のシャワーを覗こうとしました!」
シャワールームから、バスタオル一丁のティノちゃんが出てきた。その足元には、大きなたんこぶを作ったエロジジイがみっともない姿で倒れていた。
「すまん……嬢ちゃんの姿が予想以上にエロかったから……体が条件反射でつい……」
「条件反射でつい? そんな理由が通るわけありませーん!」
ティノちゃんはそう言いながらエロジジイを踏み続けていた。
とりあえずティノちゃんが落ち着いた後、私はボロボロになったラゴンさんに話を始めた。
「話をする前に頼みがある。治療して」
「嫌です」
着替えたティノちゃんは、ツンとした態度でそっぽを向いた。まぁ、塩対応されるのも当然だ。私は咳ばらいをし、話しを進めることにした。
「とりあえず。今の私に何が足りないのか分かりました」
「そうか。じゃあ、何が足りない?」
「剣です。ザムを倒すためには、市販の剣では無理です」
「そうじゃ。かといって、ヴァーギンに頼りすぎるのもダメじゃ。ヴァーギンの切れ味は、切り札にすべきものだからの」
ラゴンさんはそう言うと、立ち上がってどこかへ向かった。
「どこへ行ったんですかね?」
「トイレじゃなさそうなのは確かよ」
「大事な話をしているのに……私のシャワーを覗く暇があったら、用を足せばよかったのに」
「確かのその通りね」
私とティノちゃんが話をしていると、ラゴンさんが一枚の紙を持って戻って来た。
「便所のために席を立ったわけじゃないぞ。こいつを取りに行ってたんじゃ」
「これって何ですか?」
「この森の地図じゃ」
地図? 剣聖の森に地図ってあったんだ。私はそう思いながら、机の上に広げられる剣聖の森の地図を眺めた。
「ここがわしんち。で、ここがエクスのねーちゃんが修行で使った小屋」
「へぇ。地図を見ていたら、修行のことを思い出してきました」
私は修行のことを思い出しながら、地図を見ていた。地図からでも分かる。狼に襲われた場所、緊急の時の飲み水用に使っていた川の場所、よく食用キノコが採取できる場所などが脳裏に浮かんだ。そして、金色の熊と戦った場所も思い出した。
「さて、問題はこれからじゃ」
と言って、ラゴンさんはにやりと笑った。
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