ベトベムの二度目の危機
ジャッジメントライトが次にテロを起こすのがベトベムであることを私たちは知った。三年前を思い出す。あの時はベトベムのギルドが半壊し、町もほぼ壊滅に近い状態となってしまった。そして、ベトベムの上空で私とティノちゃんはジャッジメントライトの連中と戦った。その後でアソパと遭遇し、戦って敗北し、力不足を感じた。
「では、このことをベトベムのギルドに伝えてきます」
「早急に頼む。早く動けばそれだけ、反撃の準備ができるからな」
「装備の用意をしておけ! ベトベムのギルドにあるだけの装備じゃ、絶対に足らなくなるぞ!」
「食料も用意しろ! 魔力切れのことを考えるんだ!」
「腕利きの戦士にこのことを伝えろ! あの時のようにベトベムを危険な目に合わせてたまるか!」
ギルドの人たちは、すぐに次に起こるであろうベトベムのテロの対策を練り始めた。流石に動きが早い。そう思っていると、ティノちゃんが私に近付いた。
「で、私たちはどうしますか?」
「私たちもできることをしましょう。その前に、ラゴンさんの元へ向かうわよ」
「はい」
その後、私とティノちゃんは部屋に戻って出かける支度を始めた。支度をする中、ティノちゃんがこう聞いて来た。
「いつラゴンさんの元へ向かいますか?」
「明日には行きたいわね。ラリネットからだと、かなり遠いと思うけど」
「場所を覚えているので、私の魔力で飛べば一時間で着くと思います」
「飛んでくれる? ありがとう」
私はティノちゃんに抱き着きながらこう言った。その時のティノちゃんの顔は、とても嬉しそうな表情になっていた。そんな中、ヴァーギンさんが話しかけた。
(前もって俺の方から師匠の方に連絡しておくか?)
(え? そんなことができるんですか?)
(師匠も俺に触れたから、テレパシーで話ができるかもしれない。ちょっとやってみる)
そう言って、ヴァーギンさんはテレパシーを始めた。ラゴンさんに通じればいいんだけど。
俺は師匠のことを思い浮かびながら、声を発し続けた。しばらくすると、師匠の驚く声が聞こえた。
(ヴァーギン! わしに何か用か?)
(師匠、俺の声が聞こえるんですね)
(当たり前じゃ。どうやら、テレパシーの力もそれなりに強くなったみたいじゃの。でも、いきなり話しかけるな。今、エロ映画見てたんじゃぞ)
(はぁ……あなたって人は……それよりも、明日師匠の下へ向かいます)
(明日? 急じゃのー。ジャッジメントライトのことはどうなった? 一人くらい強敵を倒したか?)
(幹部の一人、アソパを倒しました。ですが、新たな問題が出てきたので……)
(で、わしにアドバイスを授けてくれと。ま、エクスのねーちゃんとまた会えるから問題なしじゃがの)
(ティノもいるから、セクハラしようとした途端に塵になりますよ)
(確かにの……しゃーない。はぁ……)
師匠は残念そうにため息を吐いた。師匠……エクスにセクハラをしようとしているのか? やろうとしたら、その場で両腕を斬り落とされるかもしれないのに。本当に仕方ない人だ。
(二人とも、師匠には明日行くと連絡した。今日はもう一日休んで、明日出発しよう)
俺がこう言うと、二人は返事をした。
話を終えた後、私とティノちゃんはボロ小屋の所へ向かった。私とティノちゃんは戦いが終わった後、すぐにギルドに運ばれたため、あのボロ小屋がどうなったのか知らなかったのだ。
「まだギルドの戦士がいますね」
「ええ。まだ何かあるようね」
私とティノちゃんは慌ただしく動くギルドの戦士を見ながらこう言った。そんな中、一人のギルドの戦士が私とティノちゃんに気付き、頭を下げた。
「お疲れ様です、エクスさん! ティノさん! あなた方のおかげで、ジャッジメントライトのアジトの一つを潰すことができました!」
そのギルドの戦士は大声でこう言ったが、私はその戦士に近付いてこう言った。
「確かにこのアジトを潰すことには成功したけど、一緒に行動したあなたの仲間は死んでしまったの。あまり達成感を感じないの」
「そうですか……そうですね。死んだ仲間の中に……自分の同期もいたので……」
その戦士は仲間の死を悼み、悔しそうに声を上げた。私はその戦士の肩を叩き、慰めた。
「あなたは死んだ仲間の分まで生きなさい」
「分かりました」
そんな中、隊長らしき人が現れ、私とティノちゃんの姿を見て敬礼した。
「お疲れ様です! エクスさん、どうしてここへ?」
「あの後、すぐにギルドに運ばれたからどうなったのか知らないの。何か見つかった?」
「いろいろとまぁ……ですが、ストッパーブレイクはほとんどありませんでした。案内します」
話を終え、私とティノちゃんは再びボロ小屋の中へ入った。
ボロ小屋の中はまだ鮮明に思い出せる。ストッパーブレイクを作るための機械が大量にあり、部屋の一部にはデリートボンバーを作る機械もあった。ここで、ストッパーブレイクを大量に作り、デリートボンバーを開発していた。だが、その機械はそのままになっていた。
「機械を残して逃げたってわけね」
「あいつら、素材だけ持って逃げたんですよ。機械はまた作ればいいんですし」
ティノちゃんの言う通りだ。機械は人の手でまた作り直すことができる。時間はかかるが、奴らのことだから絶対に作るはずだろう。それか、本拠地にそれ相当の機械があると思われる。
私とティノちゃんはボロ小屋の中を改めて調べると、時折青いシートを見かけた。近くにギルドの戦士がいたため、声をかけた。
「ねぇ、あのシートの中って何があるの?」
「ジャッジメントライトの団員の死体です。死体は、一部の部屋に押し込められるようにして入っていました」
「死因は特定できた?」
「簡易ですが、調べることができました。ストッパーブレイクを過剰に摂取したことによる中毒死です」
「ストッパーブレイクを使っても、対応できなかった人がいるってわけね……」
私はそう言いながら、うつむいた。ジャッジメントライトの奴ら、目的を果たすためなら人の命を簡単に犠牲にしてしまうのか。本当に許さない! 私はジャッジメントライトに、ザムに対しての怒りの炎を燃やした。
その後、私とティノちゃんはギルドに戻った。早く寝るため、食事より先にお風呂に入ることにした。
「ふぅ……明日はまたあのエロジジイの所ね」
「そうですね。何かアドバイスしてくれたらいいんですけど」
私の横に座るティノちゃんがこう言った。確かにね。ラゴンさんが何か助言をしてくれたらいいんだけど、あのエロジジイは状況を考えずエロいことしか考えないことがある。何かしてきたら、あのジジイの両手を斬り落としてやろうかしら。そう思っていると、ティノちゃんが私の胸をじっと見ていた。
「どうかしたの?」
「私もエクスさんみたいに胸が大きくなれたらなーって……」
どうやら、ティノちゃんは貧乳なのを気にしているようだ。前よりは大きくなったと思うんだけどなー。
「胸がでかくていいことはあまりないわよ。服を選ぶのも面倒だし、下着もちゃんとしたのを選ばないといけないからね。それに、エロジジイにエロい目で見られる」
「うーん、私は魅力的だと思うんですが……そう考えると、結構デメリットが多いですね」
「そうよ。男共は大きな胸を見てエッチなことを考えてると思うけど、こっちは大変なのよ。そんなことを考えずに、エロいことしか考えない野郎は斬り倒したいわ」
「斬り倒すのはやりすぎだと思いますが……まぁ、それなりに悩みがあるんですね」
「そうなのよ。ま、こんな風に育ったから仕方ないって思ってるけど」
私はそう言いながらため息を吐いた。そう言えば、あのエロジジイも私の胸を見ていたな。男は本当に、どうして女の胸を気にするのだろうか? エロいことしか考えないのに、そう思うとちょっとイラッとする。
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