ひとまず戦いは終わった
戦いを終えた後、私はギルドの戦士に連れられてラリネットのギルドへ戻ることになった。予想以上に体力と魔力を消耗し、私の体はもう動けない。休むことを優先しよう。治療を受けた後、私はギルドで借りている部屋に戻った。部屋の中には、一足先に戻っていたティノちゃんがくつろいでいた。
「エクスさん。治療は終わったんですか?」
「ええ。とりあえずもう寝るわ……体力の限界……」
私はそう言ってベッドの上で横になった。かなり疲れていたのだろう、それからすぐに私は眠ってしまったようだ。
翌朝、私は自分の腹の音で目を覚ました。そういえば、昨日は戻って来たから何も食べていない。時計を見ると、朝の六時を指していた。確かギルドに戻って来たのは午後の五時。治療とか受けて部屋に戻って来たのが七時ぐらい。あれからすぐに寝たから……半日ぐらい爆睡していたようだ。
「エクスさん……おはようございます」
近くのベッドで寝ていたティノちゃんが目を覚ました。あくびをしながら私の方を振り向き、頬を触った。
「元気ですか?」
「ええ。今は何か食べたいわ。昨日、晩御飯食べてなかったから」
「そうですね。あの後すぐに眠ってしまったので……」
ティノちゃんは再び大きなあくびをすると、軽く寝癖を直して着替えを始めた。さて、私も支度を終えて朝食を食べに行こう。
私とティノちゃんはキッチンへ向かい、朝食を食べ始めた。昨日、晩御飯を食べていないからかなりお腹が空いている。
「すみません。デカメキンメダイの煮付けのセット。ご飯とみそ汁大盛で。それと、三百グラムのステーキを単品でお願いします」
「あいよ。エクスさん、朝からかなり食べるね」
「昨日、戦いが終わって帰って来たから何も食べていないので」
「そうかいそうかい。それじゃ、たくさん食べないといけないねぇ!」
「私は生姜焼きのセットでお願いします」
「あいよ! エクスさんがデカメキンメダイの煮付けのセット、ご飯みそ汁大盛。それとステーキ三百グラム。ティノさんが生姜焼きのセットで。ティノさん、ご飯とみそ汁は普通でいいかい?」
「普通でお願いします」
「注文は以上だね! それじゃ、ササッと作るからちょっと待っててね!」
キッチンのおばちゃんが笑いながらこう言った。その後、デカメキンメダイの煮付けの甘い匂いが漂ってきた。その後、肉を焼く音が響き渡った。その音を聞いた直後、私の腹が反応を起こし、大きな音を鳴らした。
「本当にお腹が空いているんですね」
「えへへ……まぁね」
公共の場で大きな腹の音を鳴らしたことを察し、私は少し恥ずかしくなった。まぁ、衝動的なものだし仕方ないね。それから、私とティノちゃんは食事を始めた。
「見ろよ。あの英雄、エクス・シルバハートだぞ」
「かなり大食いと聞くが……朝からすごい量だな」
「当たり前だろ、昨日は返ってきて治療して、その後すぐに寝たそうだぞ。腹が減るわけだよ」
「にしても、あれだけの量を朝から食えるか? 俺は無理だ」
などと、ギルドの戦士たちの会話が聞こえてきた。私は目の前のデカメキンメダイの煮付けやステーキを平らげ、腹の様子を察した。まだ余裕がある……と言うか、まだ満腹になった気分じゃない。
「すみませーん。ステーキおかわりお願いしまーす」
この声を聞き、ギルドの戦士たちは驚いた。唯一、動揺しなかったのがティノちゃんとキッチンのおばちゃんだけだった。
「ステーキのおかわりね。重さはどうするー?」
「さっきと同じ、三百でお願いします」
「あいよー! それじゃ、すぐに焼くからねー!」
と言って、キッチンのおばちゃんは再びステーキを焼き始めた。ギルドの戦士たちが驚く中、ティノちゃんはお茶を飲んでいた。
「エクスさん。胃もたれしても私は治療できませんよ」
「大丈夫。まだまだいけるよ」
私はそう言いながら、自分の腹をさすった。
朝食を食べ終えた後、私とティノちゃんは今後のことについて話を始めていた。
「これからどうします?」
「一度、ラゴンさんの元へ行くわ」
「あのエロジジイの所ですか? ザムと遭遇したことを伝えるために?」
「ええ。エロジジイだけど、ザムのことをずっと気にしていたように見えるから」
私はラゴンさんのことを思い出した。救いようのないエロジジイだが、ちゃんと過去の弟子であったザムのことを覚えている。ザムが道を外し、自分が教えた剣技で人を殺していることを知って、後悔するところもあるのだろう。
「そうですね。道を外しても、あの人にとってザムは弟子ですからね」
ティノちゃんはお茶を飲み、一息ついていた。そんな中、私はあることを思い出し、ティノちゃんにこう聞いた。
「ねぇ、昨日捕まったジャッジメントライトの連中は取り調べを受けてるの?」
「質疑応答ができる人は取り調べを受けています。ですが、ほとんどがストッパーブレイクを使ったせいで、まともに喋ることができません」
「そう……あいつらが次に何をするか気になるけど……」
「いずれまた、ベトベムを攻撃するつもりですね」
「多分ね。もう一度、あいつらがベトベムに攻めに来る可能性が高いわ。いつ来るか分からないけど……」
私はそう言った後、茶菓子を食べた。そんな中、ヴァーギンさんが話しかけてきた。
(エクス、剣聖の森に行って師匠に今回のことを話すのは俺も賛成だ。あともう一つ、目的を作ろう)
(目的ですか……)
(残りの幹部、そしてザムを倒すためにまた修行をしても、奴らは修行を終えるまで待ってくれない。その間に確実にあいつらは攻めに来る)
(そうですね……アソパがやられた以上、目的のために早く動くと思います)
ティノちゃんの言葉を聞き、私は考えた。確かにそうだ、幹部の一人が倒され、目的を果たすのが遠くなってしまった。だが、今回の事件で私とティノちゃんは大きなダメージを受けた。その隙に大きく動くだろう。
うーん。今のままでは残りの幹部とザムを倒せるかどうかと言ったら……残りの幹部は倒せると思うけど、ザムを相手にした時は分からない。魔力を感じる限り、あいつは強い。今の私でも勝てる自信がない。うーむ……その辺をあのエロジジイと一緒に考えた方がいいか。
私がこう思っていると、ギルドの戦士が部屋に入って来た。
「失礼します。昨日捕らえたジャッジメントライトの戦士が情報を吐きました。すぐ、会議室へ来てください」
おおっ、何か情報を得たようだ。どんな情報なのか気になる。私とティノちゃんは急いで立ち上がり、会議室へ向かった。
会議室にはすでにモニターの用意ができており、その周りには重役や戦士がずらりと揃っていた。
「来たか、エクス・シルバハート。そしてティノ・オーダラビト」
「昨日、激しい戦いがあったから休んでいると思うが、すまない。君たちにも今回の情報を教えたくてね」
重役が私とティノちゃんに向かって頭を下げた。私は少し笑って言葉を放った。
「大丈夫です。休むことも重要ですが、ジャッジメントライトの情報を聞くのも重要ですので。それで、何か言ったんですか?」
「次のテロの目的だ」
テロか……あいつら、まーたテロ活動を行おうとしているのか? だけど、ザムたちは去り際にアソパが作っていたストッパーブレイクを持って行った。あれを使えば、強い戦士がまた現れてしまう。そう思い、私は少し緊張した。
「あいつらは次にベトベムを攻撃しようとしている」
「やっぱり」
私の予測が当たってしまった。しかも、次と言うので、早いうちに奴らが動くことも考えられる。
「それで、いつベトベムに攻撃を仕掛けるか言っていましたか?」
「それはまだ言っていない。予定だと言っていた」
「予定……ですか」
次の攻撃目標はベトベムであるのは確定だ。だけど……いつ、あいつらが攻めに来るのか分からない。うーん、早くどうやって強くなるか考えないと!
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