残りの幹部とボスの登場
最悪な状況だ。ジャッジメントライトの幹部、シクとレパン。そして、ジャッジメントライトを立ち上げたボスであり、ラゴンさんの弟子であり、ギルドの戦士だったザムがこの場に来てしまった。エクスは立ち上がり、俺を構えた。少ない魔力と体力で戦うつもりだが、無茶だ!
(エクス、ここはティノを連れて逃げるんだ!)
(逃げたとしても、こいつらが追って来たらどうします? 何を考えてこいつらがここに来たか分かりませんが……戦うとしたら、やるだけです)
確かにそうだ。逃げ出しても、今の体力と魔力じゃすぐに追いつかれる。だとしたら、無茶をしてまでもここで戦うのが得策なのか? だが……勝てる確率は低い。
「ここで……終わりにしてやる!」
エクスは俺を構え、幹部のシクとレパンに斬りかかった。だが、ザムがエクスの斬撃を豪華な剣で受け止めた。
「グッ! ウウッ……」
「君がエクス・シルバハートか。新聞やテレビで君の活躍は知っているよ」
「あんたがザムって元ギルドの戦士だった男ね。ギルドの戦士がどうしてこんなことをやってるのよ!」
「その質問に答える義務はない。それに、私たちは君と戦うために来たわけじゃない」
ザムは後ろに下がり、エクスから離れた。エクスは追いかけようとしたのだが、シクとレパンがエクスの前に立った。
「ザム様を殺すつもりか?」
「だとしたら、私たちが相手になるわよ」
「どけ!」
「そんな状態で上から目線でそんなこと言われても、あまり怖くないわよ」
と、シクはこう言った。エクスは悔しそうな顔をしているのだが、シクの言う通りだ。今のエクスじゃ、覇気がない。疲れ切っているせいだろう。
そんな中、ザムは倒れているアソパに近付いた。
「ザム……様……」
「酷い姿になったな、アソパ。幹部の一人がここまでやられるとは思ってもいなかったぞ」
「ザム様……俺はまだ……戦えます」
「戦える? その状態で戦えるわけがないだろう。腕も足も動かすことができないくせに、戦えると強がりを言うな」
「強がりでは……ありません」
「私に向かって嘘を言わないでくれ」
ザムは剣を持ち、アソパに刃を向けた。あいつ……仲間を殺すつもりか!
「アソパ。君との縁もここで終わりだ。君もよく言ってただろう。役立たずは処分すると」
「グッ……」
「ではさらばだ。あの世でジャッジメントライトの繁栄を祈ってくれ」
ザムはアソパに向かって剣を突き刺した。刺さった部分は左胸。心臓がある場所だ。アソパは一瞬だけ苦しそうな顔をしたが、すぐにその表情は固まり、アソパは動かなくなった。
なんてことだ。ザムの奴はアソパを殺してしまった! 自分のために手足となって働いていたのに、部下に対して感情は持ってないの?
「あんた……アソパに対して何の感情もないの?」
「持っていた。だが、君に倒された瞬間、アソパには情をかけるほどの価値はなくなった」
「この野郎……」
私はかすかに残っていた魔力を使い、ザムに近付こうとした。だが、シクとレパンが私の前に立った。
「何度も言わせないでよ。ザム様に近付けさせない」
「これ以上動くと、あなたを殺す」
「やれるもんならやってみなさいよ、犯罪者が!」
私は大声で叫んだ。そして、剣を持ってシクとレパンに斬りかかった。レパンは後ろに下がって私の攻撃をかわしたが、シクは小さな剣で私の攻撃を受け止めた。
「グッ……うう……」
「勢いがあるのは口だけ? 力を感じないわよ」
シクは小さな剣を払い、私を吹き飛ばした。力も魔力もないため、私は空中で態勢を整えることもできず、そのまま地面に倒れた。
「エクスさん!」
ティノちゃんが倒れたまま叫んだ。アソパとの戦いで疲れが溜まっているようだ。まだ、倒れている。私は何とか立ち上がり、歩いて近付いてくるシクを睨んだ。
「そんな状態でよく戦えるわね。私が殺してあげるわ」
そう言って、シクは小さな剣に魔力を注いだ。小さな剣の刃は、音を立てて凍った。
「私のアイシクルソードで殺してあげるわ。楽に死ぬことができるから、安心して死んでね」
「アイシクルソード? バトルマンガのキャラみたいに必殺技に名前を付けるのね。ダサいわね」
私は笑いながらこう言った。その言動でシクは苛立ったのか、私に向かって走って来た。今の私は魔力も体力もない。だが、何とか戦うことができる。私は走って来たシクの攻撃をかわし、シクに向かって足払いを放った。
「キャアッ!」
私の足払いのせいで、シクは大きく転倒した。その隙に私は倒れたシクに向かって剣を突き刺そうとしたが、シクは横に体を動かして攻撃をかわした。
「この女!」
シクは私の両足首を持ち、大きく左右に動かした。そのせいで、私は転倒してしまった。
「グッ! この女!」
倒れた私はシクを睨んだが、シクは左手を私に向けていた。魔力で攻撃するつもりか! そう思った瞬間、シクの左手から氷柱が放たれた。私は上半身を後ろに反らして氷柱をかわしたが、シクは左手を地面に当てた。
「これで死になさい!」
次の瞬間、私は下から氷柱が発生すると察し、急いで足を動かし、その反動で後ろに下がった。その直後、私がいた場所に氷柱が発生した。
「クッ。避けたか」
「やばいことを考える女ね。私を串刺しにして殺すつもり?」
「そのつもりだよ!」
シクはそう言うと、小さな剣を持って私に襲い掛かった。だが、私とシクの間に入るように、ザムとレパンが現れた。
「シク。小競り合いはよせ。目的は果たした」
「アソパさんが作ったストッパーブレイクの残りを一つ残らず回収しました。それと、アソパさんの部下も使えないから処分しました」
レパンの言葉を聞き、シクは私を見ながら舌打ちをした。
「邪魔しないで。この女を殺さないと私の気が済まないのよ!」
シクは私の方へ向かい、小さな剣を振り下ろした。だけど、一瞬の隙を突いて私は何度も呼吸をして気分を変え、リラックスしていた。魔力はないけど、これならまだ戦うことができる!
(ヴァーギンさん、もう一度力を借ります!)
(分かった。だが、無茶をするなよ)
(はい。倒せなくても、深手を与えてやります!)
私はヴァーギンさんを振り、シクの小さな剣を弾き飛ばした。魔力もない私を見て、シクは驚いた表情をしていた。
「魔力がないのに、どこからそんな力を……」
「魔力を使わないで戦うこともできるのよ。魔力に頼るあんたじゃ、その考えに至らないでしょうね」
「ふざけたことを!」
シクは魔力を解放し、氷を使って弾かれた小さな剣を手にし、私に襲い掛かった。私は呼吸をしながらシクの攻撃をかわし、隙を見て攻撃を仕掛けようと考えた。だけど、シクの攻撃に隙はなかった。
(まずい、攻撃に隙がない!)
(ジャッジメントライトの幹部の一人、流石に強いな。エクス、反撃を考えるのは止めて、今は避けることを考えろ)
(はい)
私は後ろに下がり、シクから距離を取ろうとした。だが、シクは私を見て声を上げた。
「逃がさないわよ! エクス・シルバハート!」
シクは後ろに下がった私を見て、追いかけた。その時、シクは攻撃の手を止めていた。これが攻撃のチャンスだと私は察し、ヴァーギンさんを構えた。
(エクス、あの女を倒せなくてもいい。せめて、次の戦いに有利になるような状況を作るんだ!)
(そのつもりです! あの女の右腕を斬り落としてやります!)
私の狙いはシクの戦闘不能。どっちかの腕がなくなったら、シクは戦えないだろう。私はそう思って動いたのだが、私とシクの間に入るようにザムが現れた。ザムは私の方を向き、剣で私の攻撃を受け止めた。
「シク。これ以上エクス・シルバハートと戦うな。私たちがここに来たのは、エクス・シルバハートと戦うことではないだろう」
ザムは私の攻撃に動じず、シクに話をしていた。この時に私はヴァーギンさんに力を込めてザムの剣を破壊してザムを攻撃しようとしたのだが、ザムの剣は壊れなかった。
(が……ああ……剣が……壊れない……)
(見た目はただの剣なのに……どうして)
私とヴァーギンさんが驚いている中、ザムは私を睨んだ。
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