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因縁に終止符を


 あと少しで戦いは終わる。俺はそう思った。アソパは猛攻を受けたせいで、大きなダメージを負った。もう少し攻撃を受けると、確実に倒れるだろう。


「はぁ……はぁ……まだ俺は倒れないぞ」


 苦しそうにこう言っているが、ティノの雷を撃たれたせいで発生する煙が痛々しさを感じさせる。まだ倒れないと言っていたが、電撃を受けたせいで体が動けないだろうし、エクスから受けた切り傷のせいで痛みも走るだろう。もう誰かが見ても、エクスとティノの勝利だと思うだろう。


「グッ……ウオオオオオ!」


 アソパは叫びながら、魔力を解放した。その瞬間に、激しい風が発生した。まだこれだけの魔力を持っていたのか。だが、俺から見たら悪あがきにしか見えない。魔力を持ってたとしても、今のエクスとティノの敵ではない。


「まだ立ち上がるようね。ティノちゃん、もうひと踏ん張り行ける?」


「はい。まだまだ戦えます」


「それじゃ、一気に行くわよ!」


 エクスとティノは話を終え、二手に分かれて走り出した。分かれて行動したため、アソパは動揺しながらもエクスの方を睨んだ。どうやら、エクスを先に倒すつもりか。


「エクス・シルバハート! お前を道連れにしてやる!」


 この言葉を聞く限り、エクスを巻き添えにして倒れるつもりか。だが、こんなことを言ったら考えが分かるのに。


「悪いけど、倒れるのはあんただけよ!」


 エクスは俺を構え、襲い掛かって来たアソパを睨んだ。アソパは大声を上げてエクスに接近したが、エクスは俺を使ってアソパの左肩を突き刺した。


「ギャアアアアア!」


 アソパの口から痛々しい悲鳴が発した。確かにこの一撃はかなり大きなダメージになっただろう。エクスは俺を上に振り上げ、アソパの左肩を切り裂いた。攻撃を受けたアソパは左肩を抑えながら後ろに下がった。


「はぁ……はぁ……ううっ……」


 これでもうアソパは戦えないだろう。俺はそう思った。だが、必ずエクスを倒すという気持ちは見て理解できる。しかし、これでは戦えないだろう。


「終わりね。観念しなさい」


「はぁ……はぁ……俺は……まだ……戦えるぞ。勝ったと……思うな……」


「呼吸乱した状態でそんなこと言わないの。さっさと諦めることをおススメするわよ」


「諦めない……絶対に諦めない! お前を殺す!」


「はぁ、強がってんじゃないわよ。現実を見なさい。あんたがどう動いても、どうあがいても、私には勝てない!」


 エクスはそう言って、魔力を解放した。




 まだアソパは立ち上がる。本当にしつこい。こいつ、絶対に女にモテないだろう。それに、私ばかり集中してティノちゃんのことを見ていない。同じミスを犯すなんて、本当にバカな男だ。三年前は圧倒的な力の差があって勝てなかったけど……今は私とティノちゃんの方がアソパより強い!


「これでくたばれ、エクス・シルバハート! お前はここで死ぬ運命だァァァァァ!」


 アソパは右手に大きな魔力の塊を発し、私に向けて投げた。私は魔力を解放して飛んで来たアソパの魔力の塊を跳ね返した。


「なっ……え?」


「そんな初歩的な攻撃が私に通用すると思わないでよ。あんたみたいなのに苦戦したと思うと、少し自分が情けなく思うわ。でも、あんたのおかげで強くなったから、少しはありがたく思っているわよ」


 私は驚きの表情をしているアソパに向かってこう言った。しばらくして、跳ね返った魔力の塊がアソパに命中して破裂した。


「ギャアアアアア!」


 破裂音の中に混じって、アソパの悲鳴が聞こえた。だが、まだアソパは立っていた。しつこい男だと思ったが、ティノちゃんが魔力を解放していたことを察し、にやりと笑った。


「何だ、その笑みは!」


「私たちの勝ちが確定したからね」


「私……たち?」


 私の言葉を聞き、アソパはティノちゃんのことを思い出した。今更思い出しても遅いっての。ティノちゃんはアソパに向かって大きな魔力の光線を放った。光線に飲まれたアソパは悲鳴を上げながら、遠くへ吹き飛んだ。


「しまった、やりすぎました」


「そうね。早くアソパの元へ行きましょう」


 私は攻撃を終えたティノちゃんの元へ合流し、ティノちゃんと共にアソパの元へ向かった。




 アソパはボロ小屋の屋上で倒れていた。丁度、光線がボロ小屋の所で切れたのだろう。私とティノちゃんは倒れているアソパに近付き、様子を見た。


「まだ魔力を感じますね」


「やられたふりをしているのかしらね」


「う……グッ……」


 と、アソパが小さな声で悔しがるのが聞こえた。どうやら、まだ戦うみたいだ。この状態で戦おうと思っているなんて、ある意味すごい。尊敬してもいいだろう。


「クソッたれ……」


 アソパは悔しそうに立ち上がり、私たちを睨んだ。だけど、足は震えていて、腕も動かせないのか垂れた状態だ。こんな状態で戦おうと思っているなんて、ある意味すごい。


「お前らは……俺が……殺す……」


「無茶しない方がいいわよ。あんたしつこいから、これで終わりにするわ」


 私はヴァーギンさんを持ち、アソパに近付いた。だがその瞬間に、アソパは右腕を後ろに引き、魔力を解放した。


(エクス! 奴の攻撃が来るぞ!)


 ヴァーギンさんの声を聞き、私は反射的に防御の構えを取った。隙を見て反撃しようと思ったが、アソパの行動の方が早かった。だが、アソパの攻撃はヴァーギンさんの刃部分に命中した。


(ガアッ!)


(ヴァーギンさん!)


 痛々しいヴァーギンさんの声を聞き、私は思わず叫んだ。


(心配させてすまない……大丈夫だ)


(そうですか……よかった)


 ヴァーギンさんは大丈夫だと言ったため、少し安心した。刃を見回したが、ひびはできていない。だけど、ヴァーギンさんに大きなダメージを与えるなんて、アソパの奴はまだ魔力を持っていたのだろう。


「クソ……しくじっ……たか……」


 アソパは悔しそうにこう言って、床に倒れた。ティノちゃんがアソパを調べて、私にこう言った。


「魔力を感じません。生きているようですが、もう戦えないでしょう」


「そう。ふぅ……終わったわね」


「ええ」


 戦いは終わった。ジャッジメントライトの幹部の一人、アソパを倒すことができた。そう思った私はティノちゃんと共にその場に座った。




 疲れのあまり、私とティノちゃんはその場で横になっていた。動こうと思っているのだが、疲れのあまり体を動かすことはできない。もう少し休んだら、アソパを連行しようと考えた。だが、そう思った直後に強い魔力を感じた。


(誰かが来る。ギルドの人間じゃない!)


(ええ。一体誰だか分かりませんが……敵だとしたらやるだけです!)


 私はゆっくりと立ち上がり、周囲を見回した。私の目には、魔力を解放してこちらへ向かってくる三つの影があった。しばらくして、三つの影は私とティノちゃんの近くに降り立った。アソパはその三人を見て、目を開けて驚いた。


「シク……レパン……ザム様……」


 アソパの言葉を聞き、私は目を丸くして驚いた。シクと言われた女性、レパンと言われた男性はアソパと同格……つまり、ジャッジメントライトの残りの幹部。そして、ザム様と言われた男……こいつがジャッジメントライトのボス。そして、ラゴンさんの弟子だった男。元ギルドの戦士だった男だ!


「アソパ。見損なったわよ。鍛えていなかったからこんなことになるのよ」


 シクはアソパに近付き、強くアソパの顔を踏みつけた。レパンはシクに近付き、肩を叩いた。


「止まるんだ。苛立ちでこんなことをしても意味がない」


「役立たずにも丁寧すぎるのよあんたは」


「悪事を重ねたらロクなことが起きないぞ。だったら、丁寧に生きていた方がましだ」


 残りの幹部二人は私とティノちゃんのことを気にせず、話をしている。その態度にイラッとしたが、今の状態では幹部どころか、ザムに勝てない。アソパとの戦いで魔力と体力を使ってしまった! クッ……この状況、どうやって打破しよう。


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