第一話 異世界転移って認識するには時間がかかる
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読みにくい点もあるかもしれませんが、楽しんでいただけると嬉しいです!
「エア!!逃げろぉぉぉおおおお!!!!!」
「一輝さん!あんなに強い敵なんて聞いてないですぅぅぅ!!!」
「ぐおおおおおおお!!!!!!」
俺の名前は浅見 一輝。
今、俺たちは全力で逃げている。
何故かって?ギルドで押し付けられたクエストの敵が聞いていた話とまっっったく違ったのだ。
「だから、勇者なんてやりたくないって言っただだろうが!!!」
〜時は遡り半年前〜
俺は新人パイロットとして、日本の空を飛び回り、休日はオタ活に励んでいた。
それはそれは最高の人生だった。
しかし、そんな日々はある日を境に終わりを迎えたのだった。
「浅見くん、今日は気流も良くてフライト日和だねぇ。」
「そうですね!本日は目的地も天候良好のようです!
今日はせっかくなので呑みに行きますか?」
「いいねぇ、CAさんも誘って呑みに行こうか〜」
こんなフラグとしか考えられない会話の数分後、目の前に大きな積乱雲が発生していた。
積乱雲はエネルギーが膨大なため成長も早く、雲の中は大荒れ、飛行機は揺れを回避するために、進路を変えるのがセオリーだ。
しかし、この時は既に囲まれていて、雲に入るしかなかった。
「このまま、雲に入る。シートベルトサインと揺れることをアナウンスしてくれるかい?」
俺は機長の指示に従い揺れに備えるよう連絡をした。
ドカンッ!!!
アナウンスの直後大きな揺れが俺たちを襲った。
通常、飛行機の安全に影響を及ぼすことはないため、乗務員は冷静そのものだが、客室からは悲鳴が聞こえてくる。
ピカッ!!!
目の前で稲妻が走り、一瞬何も見えなくなった。
「今のはびっくりしましたね〜」
・・・
「今のでも驚かないとは、さすがは機長ですね」
・・・
なんで無視するんだよと思いつつ、左を見ると機長の姿はそこに無かった。
「え...」
咄嗟に機体のコントロールをとり、必死に考えを巡らせる。
この状況でトイレに行くとも考えられないし、トイレに行ったなら気がつくはずだ。
しかも、客室からの悲鳴も聞こえなくなった。
俺は明らかにおかしいことに気がつき、客室に連絡を入れるが誰も取らない。
ビービービー!!!
警告音が鳴り響いた。
「今度はなんだ!?」
光っている警告灯を確認すると、GPSの異常を示しており、マップを確認すると位置情報が取得できないと表示されていた。
さすがに緊急事態となったため、管制官に緊急事態を報告した。
「メーデー、メーデー、メーデー!
こちらスマートスター175便!
積乱雲に突入後、副操縦士以外の乗員、乗客が失踪!
マップ機能も異常が発生し、現在地不明!
最寄りの空港までの誘導と捜索救難を要請します!!」
・・・
「うそ...だろ...」
管制官からの反応もなく、さすがに焦ってきたが、雲の中では死と隣り合わせなため、雲を出ることに専念することにした。
そこから雲を出るまでの時間は永遠に感じるほど長く、コックピットには警告音だけが鳴り続けていた。
「よし!明るくなってきた!雲を抜けるぞ!」
雲を抜けると、さっきまでの悪天候が嘘のように晴れていて、大荒れだった気流も落ち着いた。
「や、やっと出れた。よし、現在地を確認しよう。」
現在地を確認するため、外を見渡した時に俺は絶望した。
窓の外を、ファンタジーの世界にしかいないはずのドラゴンが飛んでいたのだ。
「待て待て待て待て待て!!!
情報量が多すぎる!!!
なんでドラゴンがいるんだよ!!!
...あ、そうか。これは夢だ!よくない夢だ!」
その時、ドラゴンと目が合った。
ドラゴンは戦いの火蓋が切られたように、火を吐きながらこちらに迫ってくる。
エンジンに火を吹かれ、警告音が鳴り響く。
「おいおいおい!!!消火!消火!」
ブーーーーン...
エンジンが止まった...
ドラゴンは消火の音に驚いたのか、遠い彼方に飛び去っていった。
ドラゴンとの空中戦は回避したが、エンジンは止まっているため長くは飛行できない。
この状況に焦っていたが、どこか冷静な自分がいた。
なぜなら、「まぁ、夢だから死にはしないでしょ♪」と余裕をかましていたからだ。
しかし、この状況にまでなって目覚めないどころか、意識がはっきりとしていく。
良い加減疲れてきたので、頬をつねって、叩いて、ひと通り自分を痛めつけるが、一向に夢から覚めない。
俺は聞いたことがあった。
夢で死ぬと脳が本当に死んだと勘違いして現実でも"死ぬ"と。
エンジンが止まってる今、このままだと死ぬ。夢でも現実でもヤバくなってきた。
「なんで!俺は!こんな状況でも起きないんだよ!!」
そんなことを言いながら全力で自傷行為を続けたが、全く夢から覚めないので、空港に緊急着陸することを決心し、空港を探した。
「ない。空港ない!!!!」
...そう。ドラゴンのいる世界に空港なんてあるわけがない。
泣きそうだった。いや、もう泣いていた。
だって、こんな訓練受けてないもん!しかも1人だし!
しかし、状況が好転するわけもなくパイロットとしての適性を疑われる醜態を晒した後は冷静になるしかなかった。
冷静になった結果
「乗員も乗客もいない今、自分だけが助かれば良い。」
そう考えた俺は、できるだけ広く直線の長い場所を探す事にした。
「あ!あそこだ!」
その場所は石畳が敷かれ、滑走路並の長さと幅が確保されていた。
明らかな人工物であったため、不時着後の救援も期待できる。
まさに都合のいい不時着場だ。
俺は冷静に片方のエンジン停止時の緊急時手順を行い、着陸体制に入る。
「よし!このまま着陸だ!」
キュキュッ!
無事に着陸したが、世の中そんな甘くない。
ドラゴンの炎でブレーキが故障していて止まらない。
目の前には大きな建物があって、どんどん近づいてくる。
ググググッッッ!!!
何かに引っ張られるような力で急に減速したが、飛行機は止まりきらない。
「お父さん、お母さん、今まで育ててくれてありがとう。」
飛行機は建物を壊しながら止まった。
「これって異世界?グハッ...」
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回も楽しみにしてくださると嬉しいです!