表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラノベ残酷物語  作者: 秋山完
1/54

01●落ちるも地獄、受かるも地獄のコンテスト?

01●落ちるも地獄、受かるも地獄のコンテスト?



 この駄文をしたためている本日、2023年4月1日、エイプリルフール。

 


 とある投稿サイトが主宰する国内最大規模のラノベコンテスト。

 その応募カテゴリーのひとつに、“プロ作家専用”が登場したということですね。

 驚愕しました。

 特別枠とはいえ、“プロ作家が《《公式に》》、アマチュア作家たちのコンテストに参加する”とは、これ如何に……です。


 20世紀のコンテスト事情を多少とも体験した身としては、すでに新人コンテストでなんらかの入賞を果たして晴れてプロ作家となられた方は、その出版社の編集氏が担当について、次作以降の相談に乗り、企画やプロットを吟味して、さらなる出版につなげてあげる……といった形で“新人作家を育てていく”のが常道でありました。


 しかし21世紀に入って十数年が過ぎたころ、こんな話を耳にしました。

 投稿サイトで驚異的なPV数を誇る作品を出し、それが認められてプロデビューした新進作家さんが「第二作を出したいのですが」と出版社の編集さんに持ちかけたとき、編集氏はこう答えたといいます。

「それじゃ、新作を投稿サイトに上げて、もう一度、驚異的なPV数を獲得して下さい。それができたら検討しましょう」

 いやこれ、ちょっとキツいのでは……?

 この話、投稿サイトの皆様は良くご存じかと思いますが、私は人づてに聞いただけであって、都市伝説みたく真偽の不確かなフェイクテールに過ぎないかもしれません。しかし、これが事実だったとしたら、まさに“ラノベ作家残酷物語”ですね。あ、あくまで個人的な感想ですよ。


 とはいえ、この噂話が、とあるサイトの巨大コンテストで、公式の“プロ枠”を設ける形で実現してしまったとは……

 いやはや、驚天動地。

「プロの皆さんも、アマの皆さんと同じ競技場コロシアムで勝負して下さい。ハンデはつけてあげます。それで勝ち残ったら、出版を実現できます」

 ……ということでしょうか?

 うーん、これもキツいのでは……。(あ、あくまで私の個人的な感想です!)

 だって、応募作は長編だけで一万を超え、その中から出版を勝ち取れるのは十作も無いわけですから、これはもう宝くじのレベル……いや、お釈迦様が地獄に垂らした蜘蛛の糸を登る気分でしょうか、太宰治先生のあの作品は未来予測SFだったのか。


 その良し悪しは別として、いわゆるラノベ作家とその志望者を取り巻く環境が、20世紀と21世紀とで…いや、むしろここ数年で…ガラリと変わってしまったことを示す決定的な事例ではないかと思います。


 プロ作家デビューしても、待つのは地獄……??


       *


 ラノベ関係のコンテストに入賞して、デビュー作と続編の二冊目を出されたあたりで、ふっつりと活動を停止される作家さんが目立ちます。

 お名前には触れませんが、コンテストの過去入賞者をネット検索して、その著書を買おうとさらに検索した時、あの方も、この方も……と、調べるたびに驚きます。ここ十年ばかりでコンテストから世に出られた新人ラノベ作家さんの大半がそうではないでしょうか。(あくまで個人の感想です。統計を取ったわけではありませんので)


 待つのは地獄、その先は修羅道なのか……


 ということは、端的に言うと、ラノベ作家で食べていくことは、この時代、「まず絶対不可能の、泡沫うたかたの夢に過ぎないのだ」と、覚悟しなくてはならないということです。

 デビュー後に運よく生き残っても、十年先は全然わかりません。

 その間にメガメガなヒット作をものして、一生ヒャッハーな蓄財ができるならともかく、そこまで行きつかずに業界を去った作家さんも数多あまたおられることでしょう。


 2022年に168回(下半期)を迎えた、あの偉大な芥川賞ですら、過去の受賞者のうち、私たちが思い出せるのは何人なのか……


 ともあれ、こうまでも“生残率”が低いとなると、そもそもコンテストに、どのような意味があるのか……といった、ソモソモ論議が生まれても不思議が無いように思えます。

 入賞して、デビュー作を出して、売れれば次作へと生き残れるはず。

 しかし大半が、たちまち消えてしまわれる……

 これではコンテスト開催結果のコスパが悪すぎるのではないかと、老婆心なおせっかい気分になったりならなかったり……。

 生き残りの率が少ない理由は、「売れなかった」に尽きるのでしようが、それならば、賞を出したコンテスト主宰者の側の市場予測の見通しが外れたことも物語るのではないか……

 いや、この市場環境に対して、どのような展望を持って、コンテストが開催されているのか……ですね。


 誰がためにコンテストの鐘は鳴る……のか。


 つまり、コンテストの趣旨や役割も、20世紀が終わってからの二十年ばかりで、根本的に変質したのではないでしょうか?


 登竜門から地獄門へと。


 21世紀の今、投稿サイトに小説などを書く私たちは、もう、コンテストは二十年前のコンテストとは違う、ひょっとすると、“本質的に違う”ということを肝に銘じた方がよさそうです。


 というのは……

 後の章で触れますが、一般にラノベの対象年代とされている「十代~二十代の若者層」がこの二十年で激減し、さらに激減し続けていることに、いかに対処するか……という課題に直結するからです。

 読者層そのものも、もはや二十年前とは“本質的に違う”のですね。



       *


 昔はなかった、いまどきのコンテストの“応募者サービス(?)”として、「一次選考に通った作品で、最終選考に残れなかった作品には、その評価を作者へメールで差し上げます」というのがあったりしますね。

 でも、それって、もらって喜ばれているのかなあ?

 というのは、送られてくる評価に何が書かれていても、作者が“落選”したことに変わりがない、いわば“トドメの落選通知”となるからです。ハラキリの直後に斬首されるみたいなものでしょう?

 評価に褒め言葉があれば、落選者にとって、それは“ホメ殺し”です。虚無感が残るでしょう。

 逆に欠点を指摘する言葉があれば、落選者にとっては、心の傷口に塩を摺り込まれるようなものでしょう。

 欠点を直して再挑戦すれば作品が採用されるわけではありませんし、指摘された欠点が本当に欠点であるのか、そのまま鵜呑みに信じていいものやら……ですし。

 予備校の模擬試験ではないのですから、ね。

 常識的に、落選した作者は、黙って、そっとしておいてあげるのが一番いいと思います。

 しばらくして立ち直れば、再挑戦されるでしょう。

 ですから、落ちた作品の「評価シート」なるものを百人二百人の落選者に送る労力とコストがあるならば、たとえ奨励賞でも、受賞者を一人増やしてもらった方が、応募者にとって有難いのでは……

 あ、あくまで個人の素朴な感想ですよ。こうすべきという主張ではありませんので……。


 なんだか、最近のコンテストは、魔訶不思議。

 私の理解の限度を超えているような気もいたします。


 うーん、これってただのボヤキかなあ。

 でもまあ、不思議なことは正直不思議なので……




     【次章へ続きます】




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ