第17話
「どうも、ちょっと聞きたいことがあるので少しお話しできませんか?」
「い、いきなりなんだ!どこから来たんだ!」
「あぁ、今はそういうのどうでもいいので俺の質問に答えてくださいよ。いいですか?」
商人の男は自分のおかれている状況が理解できたのか、俺の問いかけに首を縦に振った。
「じゃまず、以前ヴィーナス王国との国境付近へ向かった貴族が殺されたことは知ってるか?」
「もちろん知ってる。それがなんだ」
「でも本当は殺されたんじゃなくてヴィーナス王国に寝返ってことは?」
「!??」
「ははは、なんで知ってるのかって聞きたそうな面持ちじゃないか。それはな――」
俺は表情を無にして殺気を込めながら続ける
「俺だからだ。――俺はお前たち裏切り者だけの未来を見た。そしたらなんと、この国の秘密情報をヴィーナス王国に売ってこの国を終わらせようとしてたみたいでな」
こいつらの未来だけを見ることは、この世界の未来を見ることとは違い誰かが不幸になることはない。
「どうする?ここで今すぐ死ぬか、罪を償って寿命で死ぬか。選んでいいぞ」
「わ、分かった。全て話すから、そのナイフをしまってくれ」
「それは助かる」
商人を捕らえた後は馬車に乗り、ギルドに帰りながらいろいろと聞き出していた。
「まず、お前たちをヴィーナス王国に受け入れた集団はなんなんだ?」
「そいつらは、ヴィーナス王国国王の側近の女が従えてるやつらだ。その女はつい最近ヴィーナス王国に来たみたいで、なのにいつの間にか国王の側近として気に入られてるみたいで俺にもよく分からないんだ」
つい最近ヴィーナス王国に来たならおそらくリズベルだな。
「お前がヴィーナス王国に行くときは何人ほどの刺客が送られる?」
「おそらく、前と変わらず5人だ。5人とも同じ能力持ちだ」
「そうか、それはいいことを聞いた。――もちろんお前はお留守番だぞ?お前の代わりは俺たちがするからな」
「なぁ、いったいお前たちはなんなんだ?なぜ俺のことが分かった」
「知りたいなら、俺の名前を聞き出してみろ。そうしたら俺が嫌がっても分かるかもな」
「俺の能力も知っているのか!?」
そりゃ秘密を知ってる相手が初めて会う相手なら驚くだろうな。俺はその後男のことは無視してギルドに帰ってきた。
あれを言わないといけないのか。恥ずかしくてたまったものじゃない。
「ただいまりーな」
するとマリーナがおかえりと返す。あのとき冗談で言ったのに、と肩をとんとんされることで、信じた過去の俺に注意を促したくてたまらない。
「じゃこいつがその商人だからこのあとは煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「おっけー。でもヴィーナス王国からの刺客たちもちゃんと連れて帰ってきてね。なんでも聞き出しちゃうから」
笑顔の裏に恐怖を感じる。顔はかわいいのが余計にそれを増して現している。
刺客たちについては分からないことが多い。リズベルはすぐに国王の側近として気に入られたのなら人を魅了、又は洗脳させることもできるかもしれない。そうなれば刺客たちは捕まった瞬間に死ぬように言われている可能性もある。死んでしまっては情報を聞くこともできない。
だからまずはその能力を無効化してもらう必要があるな。
するとそこにちょうどよくルイベルトがギルドへ入ってきた。
「ナイスタイミングだ、ルイベルト。3日後、前言ってたように俺とリールと3人で護衛として商人と刺客たちとの合流地点に向かうぞ」
「もう捕まえたのか?俺はまた何もできなかったじゃないか。誘えよな」
「3日後にたくさん役に立てるから心配するなよ」
「それもそうだな」
ショボンとするルイベルトを励ます。そして俺はやることがあるのでここで話しを終える。
「じゃ俺は王城に行くから何か刺客たちについて分かったことがあったら後で知らせてくれ」
そう言い残し馬車を走らせた。
乗り心地の良い馬車は晴天と相性がよく、すぐに睡魔が襲ってきた。自由に能力を使えるが使うほど疲労が溜まっていく気がして思っているほど多くの能力を使うことはできない。
王城へついた頃に俺も目を開け、意識をしっかり保って中へ進んでいく。
そのまま進んでいくとローズベルク国王のいる玉座へついた。俺はいつもの俺ではなく礼儀正しく、国王に不可視の部屋へ来るように伝えた。
しばらくして国王が不可視の部屋に入ってきた。
「すみません、いきなり呼んでしまって」
「いや、問題ない。それで、私を呼んだ理由はなんだ?」
「はい、今護衛騎士に商人の護衛としてSランクの依頼が出ていると思います。なのでその依頼を俺たちフローレスが受けることにして護衛騎士は一人も同行させないようにしてもらいたいのです」
「あぁ、それは構わない。だがなぜだ?」
「例の貴族の件ですが、依頼を出している商人も協力関係にあったようで、刺客たちと会うとのことだったのでら俺たちが代わりに出向き捕らえるためです」
「もうそこまで調べ上げたのか。さすがだ。――よし、分かった。依頼を受けている護衛騎士にはなくなったと伝えよう」
「ありがとうございます。それでは失礼します」
一礼して不可視の部屋を出る。
今回の件が片付けばまた一歩神の使いに近づくことができる大事な場面だ。俺は気合を入れ直して馬車に乗り王都を出た。
そこまで時間はかからなかったし、今日は1つ依頼をやって帰るか。
ギルドに戻ると先程いたルイベルトとリールは依頼に行ったとのことだった。本当に人のために動くのが好きなやつらだと改めて実感する。これがフローレスなんだな。
そうしてBランクの依頼を手に取り、依頼者のとこへ向かった。
それから依頼をこなす日々が3日続いて、ついに刺客たちとのご対面の日となった。
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