第12話
食事を終えて予想外のことも聞けた俺は戸惑いながら自分の部屋へと帰ってきた。ルイベルトの言っていたことが気になるがまずは次の目的を決める。
騎士隊長としての地位と名誉は俺一人で神の使いを倒すために必要だったが今は仲間とともに行動することが多くなった。そのため計画を練り直さなければいけない。
とは言っても一人で行動することもあるが、まずはフローレス全員で話し合う必要があるな。
「とりあえず今日は寝るか」
そう自分に言い聞かせて横になった。思ったより疲れていたらしく、強烈な睡魔に襲われたと自覚することもなく朝を迎えた。
窓を開けると今日も気持ちのいい陽の光が俺の脳を覚醒させる。気合いを入れ部屋を出るがそれと同時に隣の部屋から誰かが出てきた。
「おはようカナト、昨日は忙しかったからしっかり眠れたでしょ?」
リールだった。
「あぁ、疲れもすっかり取れたよ。ってかなんでリールがここにいるんだよ」
「なんでって、私も昨日からここの部屋に住むことになったんだよ」
「いや、聞いてないわ」
「それはそうでしょ。言ってないから」
ごもっともだがせめて何か一言言ってくれればいいものを。
昨日リールは俺との食事を終えたあと、俺とは逆の帰路についていたはずなんだけどな。
「じゃ一緒にギルドに向かいながら話しでもするか」
「うん、いいよ」
いろいろと気になることもあるからな。
「昨日創作能力について教わったあとどこに行ったんだ?」
「あぁ、あれはデルクの武器屋に頼んでたこの剣を取りに行ってた」
これこれと見せてくる剣はこれといった特徴はないように見えた。
「何に使うんだ?」
「創作能力だよ、この剣には想像したことを付与できるようにデルクに強化してもらったんだ」
「そんなこともできるのか、意外とデルクの能力も万能だな」
全知の他に時間を止めることができるリールには相性がいいかもしれない。俺のように能力が曖昧なものじゃなく時間を止めるという固定された能力を操るほうが想像はしやすい。
「フローレスはみんな特別だからね。普通じゃ考えられない能力を持ってるしそれを想像で自由自在に扱える。まさにこの国のための精鋭部隊って感じ」
「そうだな。それにしてもみんなこの国のためにってなんであんなにやる気があるんだろうな」
「それはこの国が大好きだから、ただそれだけだと思うよ。この国はあんまり人に害を与えるような能力を持って生まれないんだよ」
「どういうことだ?」
「ローズベルク国王の能力が【能力を操作する能力】だから、生まれてくる子供の能力が人に害を与えるような能力にならないようにしてるんだよ」
王族、貴族が恵まれた能力を持って生まれてくるこの世界、もちろん現国王ならば相当なものだと思っていたがなかなかの能力だな。
「そうなのか、ならローズベルク国王も呪文は口に出す必要がない能力持ちか」
「うん、でも国民全員に常に発動させてるからその能力の使い方以外できないんだ」
「自分の能力を国民のために使う、か。それは国民たちは知っていることなのか?」
「うん、もちろん知ってるよ」
「それならこの国のために動くのは当たり前だな」
自分の能力を国民のために使い、国民はこの国のために能力を使う。この関係を築いた国王はさすがはあの大男が後ろについているだけはあるな。
「あっ、もうついたね。カナトは今日も依頼を受けるの?」
「いや、依頼じゃないけど少しSランクの依頼をどんなものか調べようと思ってね」
Sランク依頼はギルドにはほとんど出回ることはないが裏で行動することができるので、俺はどんなものか知っておくため行動してみる。
「そっか、じゃ私は依頼に行くよ。じゃね」
あぁ、またな。そう言ってリールを見送り、俺はマリーナのとこへ向かう。
「マリーナいるか?」
「はいはーい、ちょっと待ってね」
いつものマリーナが奥から出てくる。昨日リールが変なこと言うから変に意識してしまってマリーナが余計に可愛く見えてくる。
「ん?どうしたの、そんな顔を赤くして」
「いや、これは……なんでもない」
「怪しいなぁ」
顔を覗いてくるがそれを回避して話しを続ける。
「さっそくだけど教えてくれ。Sランク依頼は裏で動けると言ってたけど、どうすれば依頼を見つけれるんだ?」
「それはね、昨日行った不可視の部屋に行けば分かるよ。そこにSランク依頼がフローレス用に貼ってあるから」
「意外と便利なんだなあの部屋。普通は何をする部屋なんだ?」
不可視と言うなら目では見えないのだろうがそれ以外、違和感は特に感じなかった。
「あの部屋は無いみたいなものだよ。ローズベルク国王と私たちフローレス以外は見えないし入れない。ただそれだけの部屋」
「言葉の意味そのままってことか。いろいろとありがとな教えてくれて」
「ううん、初めてのSランク依頼、ワクワクするね。でも依頼中の護衛騎士に、姿はもちろん気配も感じさせたらだめだからね、そこだけ注意して」
「あぁ、わかってる。じゃ行ってくる」
そして俺は王都へ向かいそのまま不可視の部屋に入った。
うわー意外とSランク多いな。これを全部やるって大変だぞ、護衛騎士。
俺はSランク依頼中の貴族護衛の依頼についていくことにした。この王都からスタートし、隣国のヴィーナス王国との国境付近まで護衛するということだった。
「もしかしたらヴィーナス王国の集団について知れるかもしれないな」
独り言をこぼし、ルイベルトが確かな情報を持ってくる前に何か手がかりを掴めたら良いとさっそく行動を開始した。
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