第10話
俺には、何が起きたか理解できない面持ちの観衆が創作能力を上手く使えてた証明に感じ、成功した喜びを噛みしめる。
「――ポート選手試合続行不可!よって、優勝はカナト選手!!」
試合開始の銅羅とともに試合終了となった選抜試験に時間差で歓声が響く。
これで俺も騎士隊長としてフローレスに加入できる。そこからが俺のスタートラインであり、この世界にいる意味を感じさせてくれるものだ。
このあと王都に行き、王城の中にある不可視の部屋と呼ばれる部屋で叙勲式が行われる。そのため国王が会場から退室したあとすぐに王都へ向かった。
コンコン
「失礼します」
不可視の部屋に入るとそこにはフローレスの4人と国王がいた。
「それでは叙勲式を始める。と言いたいとこだがこの騎士隊長の紋章を君に渡せば終わりだ。おめでとう、今日から君も騎士隊長の歴史に名を刻んだんだ。誇りに思いなさい」
「ありがとうございます。この国のため全力で任務に取り組むことをここに誓います」
その瞬間騎士隊長となった俺は、この国のために動く重要さを紋章の重みで感じた。そして俺をわざわざ呼んだ本当の理由は別にあるのだと察していた。
「堅苦しいことはやめて、さっそく本題に入ろう。まずは正式にフローレスへの加入、おめでとう。私はこのアース王国国王のローズベルク。そちらの4人の説明は必要ないだろう?」
「はい、問題ありません」
「それでは、フローレスについて規則など詳しく説明する。まずフローレスのことを知っているのはこの部屋にいる私達だけだ。次に、フローレスのことは口外禁止でありフローレス以外の人間に能力を言うことも許されない。故に完全秘密組織とういわけだ。そして最後、神の使い7人を倒すこと。以上だ」
難しいことは何一つなかった。
「分かりました」
「この不可視の部屋はフローレスの拠点となり、会議や問題が起きた際はこの部屋に集まるようになっている。今のことを覚えこの国のために尽力してくれ」
もちろんですと言い、役目を終えたとローズベルク国王は席につく。
「よし、じゃもういいかな?ずっと立ちっぱなしだから座らせてもらうね」
マリーナがいつものマリーナになっていた。周りを見るとマリーナ以外のメンバーも座ったり国王の側で談笑をしている。
「お、おい、国王の前でそんなこと言っていいのか?」
さすがに国王の目の前でグダっとするのはまずいだろと思い声をかける。
「ん?そりゃ普通ならしないけど、ここは不可視の部屋。私達の拠点だから問題ないんだよ」
「そうなのか?」
不思議に思う俺に忘れていたと国王が再び説明する。
「私は慕われ敬われるのに飽きていてね、だからフローレスには私に素のままでいることを許可しているんだ。もちろんカナト、君も例外じゃない」
「ほ、本当にいいんですか?」
「あぁ、さすがにみんな敬語だがそれ以外はみんなここでは自由だ」
「ではお言葉に甘えて」
きっと国王はこの国が大好きなのだろう。だからこの国のことを考え国民が安心して暮らせるようにフローレスを作ったんだな。
「ねぇねぇカナト、あの決勝でどうやってポートを倒したの?全くわかんなかったよ」
マリーナが不思議そうに聞いてきた。
「あんなこと考えれるのすごいと思った」
続いてリールが私は知ってるよと遠回しに伝えてきた。さすがは全知の能力。
「簡単だよ。今から死ぬまでのポート自身が受ける『痛み』をあの一瞬に凝縮して全身に受けさせただけ。死ぬことはないけど猛烈な痛みだから気絶は確実だね」
「うわー、それは耐えられないね」
少しやりすぎたかもしれないがこの先のことを考えて試してみたかったんだ。ごめんな、ポート。
「でも、よくあれだけコントロールできたね」
コツを教えてほしいとリールが迫る。
「想像するだけだから簡単だぞ?」
「それが難しいんだよ。だからカナトみたいに呪文唱えたあと創作して能力はあんまり使えない」
日頃から妄想ばっかりしてたから簡単に感じるのか?まさかそんなことがここで役に立つとは。
「まぁ、リールには全知の能力があるからそれに頼って見たらどうだ?」
「んーいやだ、カナトに直接教えてもらうほうがいい。そっちのほうが上達しそうだから」
俺もだがリールもなかなかのチート能力なのに俺に頼る必要とは?まっいっか。
「俺教えるの下手だぞ?それでもいいならいいけど」
「全然問題ないよ。ありがと」
こうして俺はリールに創作能力のやり方を教えることになった。
「それでは、そろそろ皆もギルドへ戻り依頼をこなしてくれ」
国王の言葉にしっかり返事をしていつものギルドへと足を運ぶ。
「あぁー疲れたな。1日休んで叙勲式だったらよかったのに、なんで決勝終わったあとすぐなんだよ」
俺は部活の試合に負けて監督から練習をハードにされたときのような男子高校生になる。
「意外とこの国も忙しいんじゃないか?最近は俺のとこにもオーダーメイドの武器が欲しいってやつ、多く来るようになったしな」
「ふぅーん、まぁ試験も終わったし、これから護衛をするやつを決めたりするんだもんな。そりゃ忙しくなるか」
「あぁ、それに噂では最近リールとカナトが倒した覆面集団の他にも隣国のヴィーナス王国からこの国にスパイが来てるらしい」
「よく噂を耳にしたな。ルイベルト」
「俺の親は裏稼業専門だからな。よく情報を持ってきてみんなに依頼をしてたんだ」
ルイベルトがフローレスなのは単に能力だけじゃないってことか。
「そっか、じゃそれが依頼になったら俺が担当しようかな。もしかしたらリズベルに関係があるかもしれないし」
「わかった。詳しく聞けたらまた知らせる」
もし関係があれば、その調査から慎重に行動しないとな。まずは能力を知ること、そして倒す以外に方法がないか探ること。
重要なことは燐が他国の神の使いに渡ること。もし俺が先に見つけたのであればそれを隠し通せばいいだけ。
相手の能力が分からない限りなんとも言えないけどな。
「じゃそういうことで、俺はこのBランクの依頼に行ってくるよ」
「はいはーい、それじゃ他の話しはまた今度ってことで、みんな持ち場に戻ろうか」
そして俺は依頼先に向かい、その2時間後に報酬をもらいにギルドへ帰ってきた。
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