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はじまり

「え、僕がクビですか?どういうことですか?説明してください」


「おうよ、何度でも言ってやるよ。クビだクビ、明日から来なくていいって言ってるんだよ。お前みたいに足  を引っ張るやつにいつまでも居座られたらたまらないんだよ!とっとと出ていけ!」


全く納得がいかなかったが、店長にそこまで言われては仕方がない。仕方なく自分用のロッカーに入っていた数少ない荷物を取り出し、いそいそとまとめ出ていくことにする。悪態の一つもつきたいところだが、一応今ままで雇ってもらった恩はある。一応お礼は言っておこう。


「今までありがとうございました」

軽く礼だけしてぱっぱと出ていく。そんな背中にまだ店長は悪態を投げかけてくる。


「おうおう、どんだけ使えなくても礼の一つぐらいは仕込まれてるもんだな!二度とうちの敷居またぐんじゃねぇぞ!おい、塩持ってこい、塩!」


店長の罵倒を背中に浴びながら、とぼとぼと帰る自分はまるで捨てられた子犬のように小さく、弱く、悲しかったのだろう。事実帰ってから、バイトの仲間からちょっと異常なほど大丈夫かどうかの連絡が来ていた。その中には社員である明子さんからも来ていた。明子さんは元職場のスーパーの社員で、バリバリ仕事もできて、人当たりも良く、俺みたいなただのバイト風情にも優しくしてくれている美人である。あわよくばお近づきになったりできないかと思って、よく話しかけるようにしているのが功を奏したようであった。初めて仕事以外で連絡が来たのが今回のクビに関することなのは不幸中の、いや火中の幸いといえるだろう。大丈夫である返信を送ると、すぐに電話がかかってきた。あまりに驚き、しばらく固まってしまった。幸い数秒でフリーズから復活できたので、慌てて電話にでる。


「歳明くん!?大丈夫?さっき出勤したときに歳明くんがいなかったから店長に聞いたらクビになったって聞いたんだけど?」


「はい、そうなんです。急にお前みたいに足を引っ張るやつに用はないから出ていけって言われて、僕もなんのことだかさっぱりわからなくって。明子さんなにか知ってますか?」


「私もさっぱりなのよ。それにしても急に態度を変えたわね。前までは猫なで声で歳明くんに仕事押し付けてたってのに。これはなにかあるわね、ちょっとこっちでも調べてみるわね。絶対に歳明くんをうちに戻してあげるから待っててね」


「はい、ありがとうございます!たしか野菜コーナーとインスタントコーナーはほぼ僕一人で回してたと思うんですけど、大丈夫なんですか?」


「全く大丈夫ではないわね。クレームが今日はいつもの三倍ぐらい来ていて、事務の人がてんてこ舞いだったわ。しかも歳明くんが担当してた野菜コーナーで商品の入れ替えがされてなくて、腐り放題になってたわね。明日からしばらくはクレーム対応と、関係各社への謝罪行脚ね」


「そうなんですか...。お疲れ様です」


「これぐらい歳明くんが受けた仕打ちを考えればどうってことないわ。今すぐにとは言えないけど絶対歳明くんを戻してみせるから、そしたらおやすみなさい。明日も早いからもう寝させて貰うわね」


悲しんでも嘆いても、どこからか新しいバイトが湧いてくるわけではない、多少の蓄えはあるがすぐに新しいバイトを探さなければ。と、そこで明子さんからなにかURLが届いていることにきづいた。どうやらそれは近くのディスカウントストアのバイトの応募要項であった。明子さんによるとそこには妹が働いていて、既に話は通してあるので応募すればすぐに雇ってくれるらしい。さっそく明日顔を合わせることになった。

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