divide2 始まりの大地
主人公の名前表記を漢字の光からカタカナのミツルに統一しました。
ーーー封印暦1238年・ルッセル平原ーーーー
「ーーーっ」
ーーー眩しい
ーーーそして暖かい
そうして五感に注意を向けている間に、段々と視界が晴れてゆく。
ーーー周りが見えるようになった
ーーー
ーーー
「・・・・・・・・・」
「どうやら本当に異世界に来てしまったようだな、、、」
青い空
白い雲
遠くから聞こえる水の音
どれもミツルが住んでいた街で感じるものより澄んでいた。
ーーーで?
そんな景色ぐらい北海道にでも行けばいくらでもあるだろう。
何故ここが異世界であると彼は瞬時に理解することができたのか。
あの謎の存在との会話が彼の理解を助けたというのも当然ある。
しかし、それ以上に明白に、ここが異世界であることを示す証拠が目の前にある。
というか「いる」。
「冗談だよね。ーーーーーーマジで」
「ブァン!!!ガルルルルル、、、」
そう、「いた」のである。
証拠が。
もとい、
頭が3つ生えている犬が。
もとい、
<ケルベロスのような生物>が。
異世界転生初手で目の前になんか強そうなモンスターが佇んでいる。
ミツルはそんな運命を呪うでもなく誰を恨む訳でもなく、やり場のない怒りと、そして恐怖を抱えながら叫ぶ。
「クッソォォォォォ!!」
ミツルは一目散に走り出した。当然、ケルベロス(仮)がいる前、ではなく後ろに。
<いきなり走って逃げると動物を刺激する>
よくテレビでやっている内容だ。
しかし人間、実際の脅威を前にして冷静でいられる者は少ない。
そもそも、冷静であろうとなかろうとこの状況が致命的であることには変わりがない。
「ハァ!ハァ!」
ーーーダメだ、、、
ミツルはそれなりに足が速い。しかし、一介の高校生が四足歩行の魔獣より足が速い筈がない。
ーーー転生初手で死ぬのか俺、、、
ーーー1度目はトラック、2度目は魔獣、、、
ーーーもう死にたくない
ーーー誰か、、、
ーーーたs
「フレイ!!!」
「!!?」
人の声が聞こえたかと思うと、突如としてつい先程まで此方に向かって猛進していたケルベロス(仮)が炎上して悶えながらその場に倒れた。
ーーーおそらく死んでいる
一体誰がやったのか。
ミツルはむしろ冷静になりながら、辺りを見渡して声の主を探す。
しかし何処にも人らしき影は見当たらない。
ーーーとなると、、
上。
ミツルは視線を自分の頭上、真上に移す。
ーーーーーー
銀髪。
ツインテール。
碧眼。
絵に描いたような異世界少女が彼の頭上を浮遊していた。
否、浮遊しているというよりかは空中にある透明な床に立っているかのような佇まいである。
呆気に囚われていると、向こうの方から声が飛んできた。
「大丈夫だった!?怪我はない?」
ミツルは驚きつつも咄嗟に言葉を紡ぐ。
「だ、大丈夫です。怪我はありません。おかげで助かりました。」
「良かった、、、。この辺り一帯は何故か魔獣が頻繁に出没する地域だから、そんな軽装でふらついてちゃ、、、」
異世界少女(仮)は彼の服装を一瞥するなり言葉を詰まらせ、少しの間を開けて再び口を開いた。
「アンタ、ここら辺じゃ見ない服装ね」
ミツルはトラックに跳ねられた時に着ていた学校の制服をそのまま身につけていたので、こちらの世界の住人からすれば彼の身なりはかなり異質に映ることだろう。
「あ、えっとこの服はその、、、」
ーーーはいトラックに轢かれて死んで気づいたらこの平原にいたんですぅ☆
などと言える筈も無く説明に苦慮するミツル。
しかしそんなミツルを余所に向こうから思いがけない言葉がかけられる。
「もしかしてあなた、異世界から来た人?」
状況が理解できないミツルは混乱する脳内の思考をそのまま声に出した。
「え?、あ、はい!??」
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次回 divide3 異世界