《第2章〜観光①〜》
「違う、違う。そんなに踏ん張ってちゃいつまで経っても飛べやしないわよ」
そう言って、リリーは声をあげて笑った。
「いい?まずはホウキに跨る、これはできてるわね。それから全身の力を抜いて…慣れないうちは目も瞑った方がいいわね」
私と椿はリリーに言われた通りホウキに跨り目を閉じた。
「そして『πετώ』と心の中で強く念じるの。そうしたら…ほら、飛べるでしょ?」
そんなことで…と思いながらもリリーに倣って『πετώ』と念じてみると
「す、すごい!ほんとに飛んでる!」
「わわわ、で、でもこれ浮いてるだけじゃない!?なんかフラフラするし…うわっ」
いつもと違う目線にはしゃぐ私とは裏腹に、椿は安定しないホウキの動きにあたふたしていた。
「これどうやって移動するの?」
「そんなの簡単よ?進みたい方向に身体を傾けるだけ!慣れればその必要も無くなるんだけどね」
リリーはまたも簡単に言ってのけたが、これがまた難しかった。
私は身体を傾けた反動によりホウキを中心に一回転し。
椿はというとスピードのコントロールができず、ホウキにしがみついているので精一杯という様子だった。
…そんなこんなでホウキに乗れるようになった私たちはようやく青闇の森の観光に出掛けることとなった。
「さ!折角だから私が青闇の森を案内するわ!」