テスト投稿 よみきりー「けんしのひとまくー」
まえガキ
まえガキ
まえガキ
まえガキ
まえガキ
まえガキ
まえガキ
しゅらあああん
夕日を受けて血の色に染まる剣が奴の腰から引き抜かれた。
種類は片手用のミドルソード。ミスリル製。
だが、その意匠はまがまがしいと言う他ない捻じくれた黒の装飾に覆われている。
赤く染まった刀身と合わせれば邪悪な魔剣の一振りのようだ。
奴は剣を中段に構えた。
向き合う俺は、大剣の握りにぐっと力を込めて脇に構える。
単純に力押しで斬りかかっても
剣の軌道が見切られたら一撃では倒せないかもしれない。
だが、刀身を背中の後ろへ回して相手の視界から見えなくしてしまえば
防御を遅らせることはできる。
もし防がれたとしても奴の体勢が十分でないならば、
ミドルソードの細くて頼りない防御なんて弾き飛ばして
奴ごと叩き斬ることができるだろう。
――勝負は一瞬ッ!
俺は、地面を強く踏み切り、駆けだした。
大剣を体で隠したまま姿勢を低くし、疾走する。
奴の動きに変わりはない。
リラックスした体勢のまま右手で中段にミドルソードを構え、
剣先をゆらゆらと動かしている。
俺がどこから切り込んでも対応して反撃できるような<後の先の構え>。
俺の構えを見ても大剣の重さを奴ならばギリギリ捌けると思っているのだろう。
だが、その見込みは甘いッ!
俺と奴の距離がゼロになる。
当たれば確実に倒せる。
その距離まで肉薄した俺はスピードを力に変え、
一気に剣を振り上げた。
奴も剣を振り下ろすが
俺の方が速い!
奴の体に武器が食い込む感触
もしくは
奴のミドルソードをへし折る感触
が、続くはずだった。
だが、剣を通して手に伝わったのは
乾いた何かを大量に薙ぎ払う奇妙な感覚。
俺が異常を察知し距離を取ろうとした時、
奴の剣が俺の左肩を切り裂いた。
「――ぐッ!」
飛ぶと同時に斬りつけられ、
俺はバランスを崩してごろごろと地面に転がる。
すぐに傷を確かめるが幸運にも深くは切られていない。
あと0コンマ数秒反応が送れていれば
左手が使えなくなっていたかもしれないが
この程度なら戦闘に支障はないだろう。
そうして俺は奴に目を移す。
いや、正確には、奴を見た時その左腕に視線を奪われた。
白―――。
奴の手はおびただしい数の白い物体に覆われていた。
乳白色の棒状の物体。
一本一本は人間の腕よりも細い。
だがその硬さは時として武器にも、そして盾にもなることは誰もが知っている。
地上に生きるほとんどの生き物を体の内から支えるモノ――骨だ。
奴の腕は無数の骨に覆われているのだ。
「――なんだ、お前。人間やめたのか?」
「おいおい、酷い事言うなぁ。人間はやめてないさ。これは魔法だよ。死霊術さ。」
「けっ、おなじだろうが。闇魔法なんて使うやつは人間辞めてぇ奴が使うもんだ。」
うかつだった。
奴は俺の大剣での打ち込みをミドルソードで捌くのは初めから無理だと分かっていた。
そこまではいい。
だが奴は、俺の攻撃を剣で捌くように見せかけ、
代わりに死霊術とやらで呼び出した大量の骨を束ねて盾にしたのだ。
俺は奴が魔法を使うことを知らなかった。
俺は奴のことを剣に誇りを掛けた剣士だと思っていた。
少なくとも最後に会った時は、奴は誇り高い剣士だった。
だから奴が俺の大剣をミドルソードで捌こうとしているのだと
微塵も疑わなかった。
自分の腕と技量に誇りを持つ剣士ならば、自分の剣で応じるだろうと。
「なぜ魔法なんかに頼ったッ!剣士ともあろう者が、剣技を磨くことを諦め魔法に逃げるとはなッ!見損なったぞッ!」
「だらだらと血を流したままヒザをついているのだ誰だい、大剣士。結果を見てから言ってみてはどうだい?」
何が奴をここまで変えてしまったのかを俺は知らない。
一流の剣士ならば、剣が魔法に劣るモノじゃないと分かっていたはずだ。
だが、奴は自分で切り開いてきたはずの剣の道を裏切った。
「結果と言ったな。ならば結果とやらを見せてやろう。俺の剣が、お前の魔法を切り裂く結果を。」
(終)
あとガキ
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