078 偽り
「ハヤトがロスクルド帝国に……?って、どういうことですか?!バンズさん!」
目を丸くしたまま動かないハヤトの代わりに、バールが食いついた。
「……あいつらは、繰り返された戦争の裏で、身体能力を極限まで上げる薬を開発していたんだ。名はブラックデビル。……その薬を使い、人間兵器を生み出す。そして世界を支配する。そんな計画を立てていた。」
「ボクが……利用……?」
「そしてその計画の中心となったのが、マイキー・サンダース。俺らの師匠の親父さんだ。……ハヤト。お前はそいつにブラックデビルを投与されている。師匠に保護された後は記憶を消されているから、何も覚えてなくて当然だけどな。」
バンズのその言葉は、受け入れがたい現実に気を落とす、少年の心にダメージを重ねた。色々な考えが頭を目まぐるしく駆け回っているためか、ハヤトは時間がゆっくりと流れているように感じていた。
「そんな……ボクが人間兵器……?じゃあ今までの力は、ボク自身の力じゃ無かったってこと……?」
「もし、大陸戦争での生き残りがいて、その計画を続けているのだとすれば、最近の失踪事件に関係している可能性は高い。だから試す価値はあるって言ったんだ。心当たりがあったからな。」
この話はバンズ以外誰も知らなかったようだ。皆、驚いた表情をしている。と同時に、敵の計画の恐ろしさを再認識することとなった。
「てことは、その薬で強化された人間が、人々を襲うかも知れないっていうの?」
「ディープの言う通りだ。これは、早急に作戦を決行せねばならない状況かも知れん。」
「大陸戦争はまだ終わっていなかった。と言うことか……。」
「でもな、エド。師匠も言ってたが、ブラックデビルをこっち側の戦力として使う手だってあるんだ。実際、使いこなせれば大きな戦力となるのはまず間違いない。」
しかし、現在の状況よりも、自分の今までが否定されたことの方が、この時のハヤトには重要だった。
「そんな……今までのボクの力は……敵のもの……?師匠との特訓は……?」
「違うね」
ハヤトが落ち込んでいると、突然、隣から声がした。いつも隣で聞いてきたような、馴染みのある声。
「ハヤトの強さは俺が知ってる。俺が敵に襲われそうな時は何回も助けられたし、一緒に厳しい訓練だってしてきた。それを今更否定されてたまるかよ。ハヤトの強さはお前自身の強さだ。」
「バール……。」
「もし偽物の力だとしても、これから自分のものにすればいいんだよ。お前だっていつも頑張ってるじゃないか。これからも皆で頑張ろうぜ。」
静かに膝をついていたハヤトに、バールが手を差し伸べる。これまで、駄目な時はお互い支え合ってきた仲間同士。それは、いかなる状況においても変わることはなかった。




