075 支配
バール達が異変に気づき始める1時間ほど前。
「総帥、次の目星って一体……」
「こちらの様子を伺い、まだ動かないということは相手にも準備が必要ということだ。なぁに心配するな。最終的には私たちの力の方が上。このくらいの猶予、あってないようなものだ。」
「つまり、当初の予定より多くの人間を集めるということでしょうか。」
「あぁ、その通り。正解だ。しかしこの研究室では狭いからな、もっと大きな拠点が必要になる。わかるか?スピラ。」
総帥の言葉の意味を、スピラはすぐに理解することができなかった。
「分からないか?東ペビアの王都を乗っ取るのだよ。ママクルの王は、所詮血筋のみで成り上がった雑魚だ。何もできやしない。まずはそこに狙いを定め、私たちの王国を築き上げるのだ。」
その意味を理解したのか、彼の表情は真剣なものに変化する。
「王を殺すって……本気……なんですか?」
「私が今までくだらない冗談を言ったことがあったかね?」
総帥の鋭い眼差しを感じ取ったスピラは、身を震えさせた。
そして、1時間後。
「……な……なんだ貴様らは……」
「大人しくすれば、痛みだけは最小限に抑えてやる。」
「……く……くそ……お、お前ら!余を守るのだ!!」
その王の命令で、側にいた護衛軍が動き出す──が。
「スピラ。」
「はっ。総帥。」
直後、使命を果たそうと果敢に攻めた護衛軍がバラバラと崩れ落ちる。白い床は瞬く間に赤く染まってしまった。
「ひぃぃぃぃ!!」
恐怖で腰を抜かす王だが、立ち上がる間も無く、異変が訪れる。
「これは……なんだ……?」
いつもと変わらぬはずの光景が、消え去る。この時の王は、四方を敵で囲まれたような錯覚に陥っただろう。だが実際は違った。
「いいぞ、デルッツ。側近を確保しろ。」
「はっ。総帥。」
近くにいた王の使いも、目の前に映る光景に混乱している隙に、捕らえられてしまう。
「……最後はラミューダ。お前が締めろ。そして力をできるだけ吸い取ってしまえ。」
「……た、頼む……助けてくれ……!」
王の必死な命乞いも、人間兵器の頂点に立つ者の前では無力だった。
「散れ。」




