072 生命の雫
エド班と別れ、反対側からテワ国を目指すクロガネ班は、ビバ帝国の隣に位置する東ペビア国に到着していた。
東ペビア国の中央に位置する山岳地帯。そこにはウリ・ベガドという独自の風習や文化を持つ戦闘民族が存在する。
「ビバ帝国のクロガネだ。ちょっと案内役を呼んでくれないか。」
クロガネは、父親であるテツがこの民族と関係していることから、ウリ・ベガドの中では名前が知られていたのだ。
「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ。」
事前に連絡をとっていたのだろうか。呼んで間も無く案内役が来た。
「ここの長老に会いたいんだが、話を通して欲しい。」
「はい。クロガネさまのご要望でしたら、なんなりと。」
当然のように付いていくクロガネの後ろで、モエとその弟子のリオーネが小声でささやき合う。
「意外とすんなり会えちゃうのね」
「どういう関係なんでしょうか……」
一行は、集落の奥にある、厚い土壁で覆われた大きな円形の建物へと案内された。建物に入ると、中には一本も毛が生えていない丸い頭をした老人が立っている。
「しばらくぶりじゃのう。クロガネ。皆さん、よく来てくださった。ワシはこの部族の長、アルバじゃ。心から歓迎しよう。」
「よう。じいさん。実はちょっとした頼みがあるんだが……」
長老の合図で案内役が席を外すと、クロガネは現在テワ国で起こっていること、そしてこれから起ころうとしていることを全て話した。
「なんと……そんな恐ろしいことが……もしそうだとしたら、この国も、そしてこの集落も終わってしまうわい。」
「だからじいさんに協力してもらおうと思ってるんだ。これは、他の人にはなるべく言わないでくれ。混乱は避けたい。」
「うむ……しかし、村人が姿を消すというのはどういうことなんじゃ?殺すならまだしも、連れ去って何をするつもりなのか分からんのう。」
「多分、何かに利用したいんだ。戦力を大きくするのか、それともまた何か別の理由があるのか。憶測だけどな。」
「……お主らは戦うと言うんじゃな。全く、命がいくつあっても足らんわい。」
そう言って長老は、棚の中から2つの古びた壺を取り出した。
「なんだ?それ」
「これは、生命の雫と呼ばれる古より伝わる薬じゃ。これを飲むとどんな怪我も、どんな病気も瞬時に治すことができる。」
「そりゃあ便利だな。ありがたく受け取るぜ」
クロガネが何の躊躇もなく壺を受け取ろうとしたその時、長老の刺すような、威圧感に溢れる視線を感じた。
「確かに持っておくだけで戦闘において有利になるじゃろう。ただし、1回の使用につきそれぞれ最大10年。お主らの命を短くすることになる。軽く扱える物では無いぞ。」
「どんくらい縮まったか分かんねえってことか。まさに、ハイリスクハイリターンって訳だ。」
古くからの戦闘民族であるウリ・ベガドの民に協力を仰いだクロガネ班。罪のない人々が連れ去られていく中、それらを救うため、また、敵の計画を阻止するための準備が着々と進められていく。




