070 怪訝
バール達がシュサに到着してから数日後、ビバ帝国からエドと、その弟子達がテワ国に入国していた。
「そっちはどうだ?ビュウ。」
「誰もいません。でも、報告とは違って血の跡が全くありません。拭き取った様子も無いですし……」
「血が出ていない?どう言うことだ……まさか、体力を削らずにそのまま連れ去ったとでも言うのか……?」
エド班が発見した村からも既に人は居なくなっていたが、バール達の見つけた村とは状態が違っていた。争った痕跡もなく、まるで転送でもされたかのように静かに消えていたのだ。
「エドさん!残された村人を発見しました!」
「どこだ?ニアリー」
弟子に呼ばれ、駆けつけてみると、そこには怯えながらうずくまっていた2人の小さな子供がいた。
「お前、この村の人間か?」
エドの問いかけには反応しなかった。というより、恐怖で反応できなかったのだろう。
「少年……ここで何があったのか、教えてくれないか?」
ビュウがゆっくりと話しかけると、唇を震わせながら質問に応じた。
「……僕の……僕のお母ちゃんと、隣の家の人達が……急に……消えちゃったんだ……」
「急に消えた?」
「ここにいっぱい人がやってきて、突然目の前が真っ白になったと思ったら……皆……。僕たちは倉庫の中にいたから……。」
「敵の能力ですかね?」
「あぁ、多分な。しかも1人のものでは無い。おそらく何かと何かを組み合わせた能力だろう。」
エドが状況を整理していると、深く息を吸い、心を落ち着かせながら少年が話し始めた。
「2人……変な感じの人がいた。僕、強い人とか、悪いことしてる人を見ると、寒気がするんだ。でもその2人は、今までで1番、気持ち悪い感じがしたんだ。」
「……聞いたことがあるな。発展途上の国では、その独特な生活が原因となり、鍛えなくともパワーを感じ取ることができる子供がいるケースがある……それにしても2人か。もっと大きな力を持つ敵がいてもおかしくは無い。」
「どうします?このままここに居ても危険です。近くに安全な場所でもあるといいんですが……」
「大丈夫だ。それはルミオに任せる。」
ルミオの『特』は、任意の対象の存在感を完全に消してしまう隠蔽能力だった。対象に3秒間触れることで、存在を知られることなく行動させることができる。
「俺には君たちの姿が見えるけど、俺以外からは絶対に見えない。3日経てば自然に解除されるけど、それまで安全な所に隠れてるんだぞ」
そう言い残し、水と食料を置いてエド班はその場を後にした。




