059 対立
彼は恐怖と戦いながら強く、強く、一歩一歩踏み出した。その足元には瓦礫が散乱している。
「フィリップ……。」
瓦礫を踏む音が聞こえる。王は音のする方向に目を向けた。そして見つめる。真剣な表情をしたバールを、真剣な目で。
「……お前は、ボルト・ヴィンテールを覚えているか……?」
「ボルト?知らないなぁ。……もしかして君のお父さん?」
「あぁ、俺の父親だ。お前らが5年前からエネルギー源として利用している1人の男。それがボルトだ……。」
強く、まっすぐに王を睨みつけながらバールが話す。
「へぇ、あれ、君のお父さんだったんだ。」
静かに、しかし拳を強く握り締めながら王に近づくバール。そして絞り出すようにこう言った。
「ボルトは今どこにいる……!」
「さぁ?俺はそういうの全部任せてるから。今どんな状態で、どこにいるのかなんて分からない。でもそいつのお陰でこの国の経済は敗戦前より格段と成長した……。もう彼に用はない。この意味、分かるかな?」
王はゆっくりとこう投げかけた。するとバールは突然地面を強く蹴り、凄まじいスピードで王に攻撃を仕掛ける。
その拳を王は辛うじて掻い潜った。しかしバールは攻撃を続ける。そして拳を振りかざしながら叫ぶ。
「……俺の親父を解放しろ!!」
「だからどこにいるか分からないって言ってるだろ?今頃どこかで野垂れ死んでるよ。」
「自分たちの好きなようにして、用がなくなったらそれで終わりなのか!!なぜその人の気持ちや家族のことを考えられないんだ!!」
言葉の強さと比例して、バールの攻撃は威力を増していく。遠くでディープ達が見守っているが、心配をかき消すようにフィリップを圧倒する。パワーを多く消費し、攻撃を躱し続けるフィリップの体力は既に限界に近づいていた。
力強い拳がフィリップを襲う。
「いったい何人の犠牲を生んだと思ってるんだ……!」
「……犠牲?君たちだって犠牲は出しているじゃないか。平和のためなら許すのか?」
「ふざけんな……っ悪のために生まれた犠牲を、正当化するな!!」
王はこの一撃を読んでいたかのように躱し、バールの隙を逃さず反撃する。
「ぐっ……」
王が放った攻撃を受け、身体を宙に浮かせ、転がり、倒れ込むバール。それを見下しながら王は語る。
「いいか……?争いが生まれない世界では平和なんて言葉は存在しない。この世の全てに対立するものがあるのならば、戦争がなければ貴様らが願う平和など生まれない……。」
王は続けた。
「国の名誉を守る。それが俺の正義……。そして貴様らは悪だ。正義と悪は常に対立している。……だから俺は戦うんだ。」
「違う……そんなの理由になってない!皆それぞれ過去があり、家族があり、仲間がいる。それを壊していいはずがないんだ!!」
激しく対立するバールとフィリップ。彼らの傷だらけの顔には、大粒の汗が流れている。
それぞれの正義がぶつかるこの争いは、多くの犠牲者を出し、いよいよ最終局面を迎えるのであった。




