054 最強と最狂
ビシュ城・王の間。外見は白く塗られた壁で覆われ、広く美しい裏庭があることで世界的にも有名なこの城。そこは、戦場と化していた。
テツの攻撃を受けたフィリップが、広間の柱の近くでうずくまる。どうやら骨が折れてしまった様だ。なかなか動き出すことはできない。
そんな王を諦めさせるかの様にテツが言った。
「お主の父が泣いとるわい。こんなに世界中を巻き込み、大きな被害を出しても結局国を守ることが出来んわけじゃからな。」
その言葉は、自身の首を絞めるものとなった。フィリップの頭の中には、昔の父との記憶が蘇る。
フィリップがゆっくりと立ち上がる。彼の目の周りは、その黒い髪と判別できないほど暗く、大きな怒りに満ち溢れていた。
そう。それはまるでブラックデビルで一度クリーガーと化してしまったハヤトのように。
「お主……力を隠しておったな? 」
テツの声はおそらく聞こえていないだろう。ブラックデビルには自我を無くし、周囲の影響を受けないために周りの事を一切遮断するという効果もあるのだろう。
そして彼は、骨が折れているとは思えない速
さと力強さでテツに襲いかかる。先程まで一方的にやられていたフィリップだが、今度はテツが押されている。
テツは間髪入れずに打ち込まれる攻撃を押されながらもなんとか受けきっていた。
「ここまでの力を……なぜ隠しておった? 」
やはりテツの声には反応しなかった。ただ目の前の目標を殺す。それだけだった。
「ぐぅ……う…なかなかのパワーじゃ……」
テツは左腕で攻撃を受けた。しかし、予想以上のパワーに押されて、その左腕は折れてしまう。
「油断しておったわい。使える羅天術が制限されてしまった。力を隠してるのはお主だけでは無いのじゃが、今はまだかのう。」
そう言ってテツは理性を失ったフィリップから離れた。
離れてもなお襲いかかってくる相手に対して、テツは右の掌に気を集中させた。みるみると掌にパワーが込められていく。フィリップがある程度まで近づいたその瞬間。
テツに込められたパワーは形を変えて、青色の波動弾のようなものへと変化した。そして掌を相手に向け、パワーを放つ。
テツから放たれたものは自我のないフィリップを広間の壁まで吹き飛ばした。柱は何本か折れ、壁には穴が開き、外からの光が差し込んでいる。王の周りは瓦礫で足の踏み場も無くなってしまっていた。
瓦礫に埋もれたフィリップはそのまま動かなくなった。おそらくブラックデビルの副作用のせいでもあるだろう。体力消費が大きいため、時間が経ち過ぎると動けなくなってしまう様だ。
「しくじったな。王よ。お前はもう少しワシの力を計算すべきじゃった。」
気を失ってしまったフィリップにゆっくりと近づき、最後の攻撃を仕掛けようとするテツ。その掌には、先ほどと同じパワーが込められていた。




