053 互いの正義
相手の兵士長を不意打ちで仕留めたビュウは、もう1人の兵士長レイと戦うクロガネ達に加勢しようとしていた。
ビュウの弓矢で倒れてしまったアランを通り越して、熾烈な争いが繰り広げられている地へと向かう。
するとクロガネがこう言った。
「ビュウ!お前は西陣営に向かえ!あそこには、バール達がいる。」
「ここは俺たちに任せろ!」
それにバンズも加わる。仲間を1人失い、苛立ちを隠せないレイの攻撃をバンズがなんとか防いでいると、予期せぬ2人の助っ人が現れた。
「私たちも手伝おう!」
「正直、君たちだけじゃ厳しいネ!」
現れたのは、ビバ帝国連合側の、ロザオーン帝国の兵士長であるコンラッドとダニエルだった。彼らもまた、東陣営で奮闘していたのだ。
「ってことだ!お前の出番はここには無いぜ!」
「バンズさん……クロガネさん……。わかりました!ここは頼みます!」
そう言ってビュウは反対側の裏庭の方へと場所を変える。
ちょうどその頃。ビシュ城の一番広い部屋である王の間では、父の仇を討ち取ろうと1人の男が戦っていた。
「……覚えているか?私の父を吹き飛ばした時のことを。」
男の名はフィリップ・フォン・ヴォルケ。現在のロスクルド帝国の王である彼は、敵に向かってそう問いかけた。
昔の記憶を思い起こしながら……。
「……っ…父さん!……父さん!!」
「次の王は…お前だ。フィリップ……。」
5年前、世界を敵に回し、争いを繰り返していたこの国の王であったジャックは、敵の攻撃によって瀕死の状態にあった。
「父さん!!父さんが……父さんがいなくなったら誰がこの国の名誉を守るんだよ!!」
「なぁに……お前なら…大丈夫だ。いつまでも…私の……私の最高傑作は…お前だ。フィリップ。」
そう言って王は悲しまれつつも息絶えたという。
それからというもの、フィリップは強い統率力で国を引っ張っていった。真っ黒な復讐心に支配されながら……。
「貴様はあの時のことなんて少しも覚えていないだろうな。感触はどうだった?気持ち良かったか……?テツ。」
なんと、ジャックを殺害したのは六槍師のテツであった。ようやく訪れた復讐のチャンスを逃すまいと、フィリップはテツを睨みつけた。
「そういうお主は、今までに殺していった人々の気持ちを考えたことはあるのか?ワシらは世界を守るためにお主らと戦った。それが正義じゃからな。」
「単なる結果に過ぎない。そう言いたいのか?貴様らは正義のためなら犠牲を厭わないということだな。……面白い。ならば5年前の戦争の報復をし、帝国の名誉を守ること。それがオレの正義とでも答えておこうか。」
そう言ってじりじりと間合いを詰めるフィリップ。前のめりになりながらテツの懐に潜り込み、右手を振り上げる。
だが、攻撃を読んでいたテツが一歩下がる。ギリギリで攻撃を交わしたテツが転じて攻撃を繰り出す。
「っ……!」
思わず顔をしかめた。テツの拳の勢いそのままに一回転。
反撃にフィリップが拳を繰り出したが、テツがそれを受け止める。すぐさま左手で攻撃するが、軽く躱されてしまう。
「お主、パワーの使い方がなっとらんわい。」
テツがそう呟き、渾身のパワーを込められた拳が一発、フィリップに命中した。




