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『ブラックデビル』〜人類vs人間兵器〜  作者: ヒュンメン
大陸戦争編
52/83

052 永訣

東陣営。

ビシュ城の正面では、アランの奇襲によって1人の兵士が倒れてしまった。


「トゲゾウさん!!」


クロガネが急いで駆け寄るも、今度はレイが邪魔をしてくる。


「バンズ!手を貸してくれ!!」


クロガネは近くにいたバンズに協力を仰ぐ。人数差で有利な状況を作りたかったのだ。


「へっ!俺を忘れるなよ。」


トゲゾウへの攻撃を終えたアランが戻ってくる。これで人数の差は無くなってしまった。


しかし、ここで意外な人物が参入してくる。

それは、他の敵兵の相手をしていたビュウだった。以前より大きくなった弓と速いスピードでアラン目がけて向かってくる。


油断していたのか、アランは驚いた顔をしている。


そしてビュウは、


「お前の…相手は……俺だぁぁぁぁぁあ!!」


そう叫びながら強力なパワーが込められた矢をアランに放った。




その横で、倒れている1人の兵士。名をトゲゾウという。彼は六槍師の1人で、多くの弟子を持つ。その内の1人、モエが彼のもとへ駆け寄っていた。

救護係を務めることもあるモエは、得意の回復用の羅天術で彼の治療をしている。


「師匠……すぐに治療しますから……もう少し頑張ってください……。」


先程まで敵兵と争い、かなり疲弊しているはずの彼女は、目に涙を浮かべながら彼の手当てをする。


そんな彼女を安心させるように、柔らかい表情をしながらトゲゾウはこう言った。


「もういい。き、君は戦闘へ戻りなさい。ほら、君の助けが必要ですよ。」


師匠の言葉を無視してまで治療を続けるモエを諭す様に、ゆっくりとトゲゾウが話を続ける。きっと脚はひどく痛んでいるだろう。


「み、見たら分かる通り、私の脚はもう使い物にならない。それにこんなに血が出ているんだ。君なら分かるだろ?いくら羅天術で脚の状態が良くなったとしても、血までは増やせないんだ。治ったとしてもわ、私は動くことはできないよ。」


分かってはいたが、改めてその現実を知らされたモエの目からは涙が溢れ出る。


「……私が……私が安全な所まで運びますから!だから……だからもう少しだけ続けさせてください!」


嗚咽混じりに泣きながら話すモエを、優しそうな表情でトゲゾウが見つめる。


「……モエ。師匠から最初で最後の命令です。」


「命令」という言葉を使って今までに無かったくらい強く押し付けた。


「戦闘に戻りなさい。今すぐに。」


「できません!もうすぐ終わりますから、もう少しだけ……」


トゲゾウの柔らかな表情はだんだん力の無いものに変わっていく。


「……君は……君は本当に強くなった。日々の鍛錬を怠らなかった証拠です。これなら安心して国を、いや世界を任せられる……。」


そう言って目を閉じたトゲゾウを、モエが見つめる。


「師匠……? 」


「時間だ。私はまだここで君の戦いを見守っているから、君の成長した姿、見せてください……。」


最後の方はほとんど聞き取れなかった。多量の出血で意識を失ってしまったトゲゾウは、そのまま帰らぬ人となった。


遠くでクロガネ達が奮闘している声が響く。しかしそんなものはモエの耳には全く届いていない。そして彼女は、子供の様に大きく口を開けて泣き叫んだ。

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