050 殺意
ビシュ城の裏庭では、バールがこんな相手と遭遇していた。
「よう、ここに来る前の爆弾、びっくりしただろ?実はあれ、俺が仕掛けたんだ」
バールが出会したのはゼロだった。渋い声で笑うゼロは、あの爆撃によってどれだけの被害が出たか知っているのだろうか。彼の表情からはとてもそうは思えない。
(ハヤトのやつ、こんな時にどこ行ったんだよ)
バールがそう思っていると、後ろから声がした。
「バール!」
声を上げたのはディープだった。弟子のピンチに、周りで敵兵の相手をしていた師匠が駆けつける。バールとディープでゼロを倒す。これが理想の形。
だが、ディープの相手はゼロでは無かった。
「残念だけど、お前はこっち。」
死角の方からメロルが飛び出してくる。ディープはバールのいる所から完全に遠ざけられてしまった。
「主力はタイマンで勝負するんだ。数で抑えられちゃつまらないだろ? 」
勝負を楽しんでいるような表情のゼロと、鋭い眼差しで相手を睨みつけるバール。いったいどちらに軍配が上がるのだろう。
一方その頃、また違った戦闘が行われていた地下室。
変わり果てた師匠の姿を目にし、大きすぎるショックを与えられたハヤトは、ただ目の前の敵を殺戮するだけの兵器と化していた。
暗く寂しい絶望感は、爆発的な殺意へと変化する。
ブラックデビル。その名の通り、真っ黒なオーラが全身を纏っている。そのためか、彼の白い頭がよく目立っていた。目は大きく見開いているが、その焦点は合っていない。
ゆっくりと刀を抜いた。
様子がおかしいハヤトを見て、たじろぐハーロン博士を、凍てつく闇の様な恐怖が襲う。
ハヤトがゆっくりと歩き出す。今の彼に自我はあるのだろうか。いつもなら羅天術で刀を冷気で覆い、両手でしっかりと握っているはずなのだが、今は刀は冷気を纏わず静かに右手にぶら下げられている。その様子を見る限り、おそらく自我はないだろう。
「か、完全に気が狂ったか……!」
これは戦うべきではない。そう判断したハーロン博士は背中を向け、一目散に隠し扉のある出口へと逃げ出すのだが、いつの間にかハヤトはハーロン博士の目の前にいた。
血しぶきを上げながら彼の両腕、両脚、胴体、そして頭部が床に鈍い音を立てながら崩れ落ちる。腕は完全にバラバラにされ、胴体は真っ二つになっていた。
彼に自分の身体の肉が切り開かれる感覚はあったのだろうか。気づかぬうちに身体を切り刻まれてしまった科学者は、そのまま生き絶えてしまった。
返り血で真っ赤に染まったハヤトは、刀を納めることもせず、その場に倒れ込んでしまう。




