049 光
「いてて……」
あたりを見回すと、どうやら落とし穴で狭い地下室に落とされたようだ。
訓練で身体を鍛えたハヤトなら、ジャンプすれば外に出られそうな高さだった。
「しまったなぁ、皆とはぐれちゃった。」
ハヤトは急いで上へ登ろうとしたが、視界の隅である男の姿を捉えた。
「なんだ…ただの子供じゃないですか。ヒヒヒ……まず1人ですね。」
汚れた白衣に丸い眼鏡。そこにいたのはブラックデビルでクリーガーと化したハーロン博士だった。
「わ、私にはわかります。君は強い。ただし、私の前では敵いませんけどね……!!」
そう言ってハヤトに襲いかかるハーロン。
通常の3倍の量のブラックデビルで強化した身体能力から繰り出される速さは、さすがのハヤトでもついて行くのがやっとだった。
「なんだよこいつ……速すぎるよ」
次々と飛んでくる拳を受け止めるので精一杯で、刀を抜く暇も無かった。
ハヤトを殴り続けるハーロン博士は気持ちよさそうな顔をしている。
(すごい……すごい!戦闘訓練も受けたことがない私が、子供とはいえ相手の兵士を圧倒している……!!)
男の攻撃は休むことなくハヤトを襲い続ける。
ハヤトはなんとかして刀を抜く隙を探すが、攻撃自体に重みがあり、確実にダメージが蓄積されている。
ハーロン博士が体制を変える一瞬の隙をなんとか目で捉えたが、反撃には至らなかった。
「うっ……」
ハーロン博士の膝蹴りが、ハヤトの腹に命中する。
「ビバ帝国の人達は皆この程度なんですかぁ??……そういえば、これ、あなた方の仲間でしょう? 」
ハーロン博士が「これ」と呼ぶものは思わず目を覆いたくなるようなものだった。
ハーロン博士が指差した物は、綺麗に真っ二つにされたサンダースの遺体だった。おまけに足も切断されている身体を綿の出た人形のように縫い合わせ、まるで生きているかのように見せている。
ハヤトは自分の目を何度も疑った。
「師匠……? 」
自分の世界から光が消えたような、悲しい表情。その目が表すのは絶望。それだけで満ち溢れていた。
「おやおや、あなたの師匠だったんですか。これは失礼。しかし、一人で敵の研究所に乗り込んでくる割には弱かったみたいですよ。この男。」
そう言ってハーロン博士はサンダースの身体をこちらへ放り投げた。
適当に縫い合わされた身体はすでにバラバラになりかけている。
……ハヤトの中で、何かがぷつんと切れる音がした。自分を育ててくれた、愛する師匠が酷い姿にされ、こんなにも雑な扱いを受けている。その光景を目にしたハヤトの心で、湧き上がってくる憎悪。黒煙に包まれたようにどす黒いその感情は、簡単には抑えることはできない。
その瞬間、ハヤトに投与されたブラックデビルの効果が発動する。




