045 嵐の前の
〜ロスクルド帝国〜
研究室で盟約が結ばれたその頃、ロスクルド帝国も動き出していた。
古都ミレリンにて、再び集まる兵士長達。その中心にはフィリップがいて、その隣にはメロルがいる。
「いい?敵は戦力が揃ったら必ず攻めてくる。正直うちらも戦力を削がれたけど、あいつらが攻めてくる前にこっちも迎え撃つ準備をする。わかった? 」
「フローリッヒ、お前は前線に出ずにフィリップ様の護衛に当たって。」
六槍師を1人撃ち破った実力が評価され、王の周りの守りを堅くするためにフローリッヒが選ばれた。メロルが彼の顔を見るが、彼は黙って下を向き、目を閉じている。
「それからレイ、お前は……」
メロルが兵士長1人1人に指示を出すその横で、ゼロが念入りに何かの作業をしている。
そんなことは気にも留めないアランは少し声を荒げてこう言った。
「あんなの、戦力でもなんでもなかっただろ。結局俺達でぶちのめさねぇといけないんだよ。」
「燃えてるな、アラン。六槍師に負けたから。」
レイが茶化すと、
「だから負けてねぇって言ってんだろ!あ〜、早くぶっ殺してぇ……!!」
兵士長達は戦意に満ち溢れている。
すると、レイがこんな疑問を投げかける。
「それより、誰がバーグラーを倒したかわからないのか?単純なパワーだけだったらここにいる誰よりも強いぜ。あいつ。」
「ふん。やられたってことはそれまでのやつだったってことさ。」
アランが冷たい態度をとるが、
「テツ」
メロルがそう言った。
メロルは分かっていたのだ。テツの強さを
「あの老人だけは、舐めてかからないほうがいいわよ。」
普段は猫の様な目のメロルが、珍しく顔をこわばらせた。
ついさっきまで無表情だったフィリップの顔も、憎しみの込められたものに変わっていた。
〜セラドンマー大陸・ニラドン国〜
ここは空気がとても澄んでいて、人の手があまり加えられていないためか、星が綺麗に見える。アンドロメダ座が輝く星空の下で、1人の老人がくしゃみをした。
「まったく、誰かが噂をしておるわい。」
この老人もまた、争いに向けての準備を終えていたのだった。
〜フメイ大陸・デネグ共和国〜
「はぁ……はぁ……。」
訓練が始まってからふた月ほど経っただろうか。アカツキ義勇団はみるみるうちに成長していった。
何もなくただ広いだけの土地でバールが息を切らしている。煌く汗が頬を伝っていく。
「これだ……!」
挑戦的な眼をして拳を握りしめる。
バールの足元には、バラバラに粉砕された大きな岩の欠片が不規則に散らばっていた。
〜アメーメー大陸・北方コヘバス国〜
「本当にいいのか?この量で。」
「え、ええ……これで私は最強になる……!」
ここにも、バール達とは違う形だが力を手に入れた者がいた。
「お前に投与したのは通常の3倍だ。もし拒否反応を起こしたら確実に死ぬぞ」
そう忠告されるも、力を目の前にした科学者には全く届いていなかった。
それぞれの勢力が準備を進めるこの戦争を、大陸戦争と名付けよう。悲劇的で激しい争いの幕が切って落とされる。




