044 ブラックデビル
地下室の上の研究室で、男がニヤリと笑っている。
すでにこの世の全てを支配したかの様な満足げな表情の男は、自分の息子でさえも迷うことなく殺害してしまった。人間兵器という恐ろしい力を行使して。
「素晴らしい!まだ完成品ではないというのにこの戦闘能力……そうだ、この薬さえあれば、私は世界を滅ぼすことができる……ブラックデビルで私は世界を支配するのだぁぁぁ!!」
「ブラックデビル」それがこの薬の名前らしい。投与してすぐに効果はないが、ある条件を達成すると人間の身体を根本から変えてしまう薬。
その条件とは、一体どんなものなのだろう。
「拒絶反応で使えなくなってしまった者もいたが、やはり与えるストレスが大きければ大きいほどその分大きな効果を得られる。ククク……完成までもうすぐだ…… 」
薬を投与した状態で心理的なストレスを与える。それが効果発動の条件だった。
ストレスの強さ、種類によって効果は変わるらしい。
男はニタニタと笑いながら、パソコンを操作している。その画面には、何かの数値が映し出されている。おそらく、人間兵器となってしまった者の身体能力などをまとめたデータであろう。
パソコンの隣には、ホルマリン漬けにされた肉片のような物も置いてある。
不気味な研究室の下の地下室では、もう二度と動くことができなくなってしまったサンダースの身体が転がっていた。それは、最後まで何かに抗おうとしていた様な体勢をしていた。
すると、男の研究所に1人の訪問者が来た。
暗くてよくわからないが、白衣らしきものを羽織り、丸いメガネをかけている。
それはなんと、メロルの紹介でロスクルド帝国入りしたあの科学者だった。
ハーロンはロスクルド帝国で起こったことをすべて話した。
王族の遺伝子には不思議な情報がプログラムされていること。その遺伝子を自らの体内に取り込み、力を得ようとしていること。何か過去に変な薬は飲まされなかったかと聞いた結果、ここにたどり着いたこと。
「……なるほど。まさか再びロスクルド帝国に私の力を貸すことになるとは思わなかったが、丁度良い。私も、この強力な力を世界に見せつけようと思っていたところだ。」
「わ、分かっていただけると助かります……。そこで、私にもその薬、つ、使ってくれませんかね……? 」
男が少し考える。
「確かに力が欲しいのなら遺伝子を体内に取り込むより薬を投与する方が容易で早い。しかし、これはすべての人間に効果があるものではない。身体が拒否反応を起こせば……死ぬぞ? 」
「か、構いません……成功すれば大きな力を手に入れられますし、失敗してもわ、私は一度王様に殺されそうになった身です。い、命なんぞ惜しくはありません……。」
そうか、わかった。必死に要求するハーロンに男はそう返事をした。
薄暗い研究室の中で、5年の時を経て男は再びロスクルド帝国と手を結ぶ。そして、誓い合う。必ず協力し、世界を支配する。と。




