002 ディープ
「いてて……なんだ?この女」
「ぶつかっといてなんだこの女は失礼なんじゃない?私はディープ。ちょっと飲みすぎちゃったけどおかげで酔いが覚めたよ〜」
と、言いつつもその足元はふらついている。
「俺急がなきゃだから、じゃあなオバさん」
「オバ……さん?? 」
オバさんという単語に引っ掛かったらしい。ディープの顔はみるみる変わっていく。
「うわぁぁぁ?!」
その場を後にしようとした瞬間、物凄い強さで引き寄せられるバール。この時のバールには何が起こったのか分からなかった。
(ん?この匂い、どこかで…… )
ディープはとても鼻が効く。ディープはなぜかバールの匂いをどこかで嗅いだことがあったのだ。
「あんた、こんな時間に何してるのさ」
「何でもいいだろ」
「ははーん、さては家出だな? 」
「そんなんじゃねえよ。じゃあな」
「分かってるって。あんた、今は帰る家が無いんだろ。そんでラドンヌのミルクティーパンを盗んで逃げてるってところかな」
「何でそこまで…… 」
「匂い消さなきゃ追って来てる奴らが良い鼻してたら捕まっちゃうわよ? 」
そんなに臭かったか?と思いバールは自分の服の匂いを嗅いだ。
「それより、寝る所無いんならウチおいでよ」
「行くわけねぇだろ!!」
「だったら、無理やり連れて帰るまで!!」
またもやバールの体が動かなくなった。いや、固まってしまったのだ。
「なんだこの馬鹿力、体が動かせねぇ」
「静かにしてた方が身のためよ♡」
長い坂道を登り、鬱蒼とする林の中を抜けていく
「おいっどこまで連れて行くんだよ」
「もうちょっとの我慢!」
我慢してついて行き、林を抜けると、周りの風景にはとても似合わず、どうやっても目立ってしまう一軒の豪邸があった。