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63.掃討1

63.掃討1



 マルコ提督が本国政府に対し、これまでの経緯とアギラカナの意向を超空間通信で伝えたようだが本国政府から明確な回答は得られなかったようだ。こちらとしても気持ちよく作戦を実行しようと思って提案したまでのことなので、どちらにせよゼノを撃滅することに変わりはない。



「これより超空間ジャンプを行う」


 俺の号令を合図に、超空間ジャンプのシーケンスがアギラカナ内でスタートする。

 

「全シャフト閉鎖!」


「全シャフト閉鎖確認」


「アギラカナ、全艦正常です」


「ジャンプ機関起動、目標、ミトカナ星系外周部 惑星シノーより5AU」


「目標、ミトカナ星系外周部 惑星シノーより5AU。ジャンプ機関起動二十秒前、一九、一八、‥‥‥、二、一、起動!」





 五日後、ミトカナ星系。


 アギラカナがジャンプアウトした宇宙空間の先には、黄色味を帯びたK型恒星ミトカナが小さく遠方に輝いていた。ここから四時間ほどかけて惑星シノーに接近する。


 マルコ提督のアルゼ艦隊についてはジャンプアウト後、間を置かず解放した。マルコ提督には簡単に今回の作戦内容は伝えてあったが、正確なデータを収集したいだろうし、自分の目でも確かめたかったらしく、アルゼ艦隊は解放位置で停止しているようだ。



 惑星シノーまでの距離60万キロ。


 アギラカナの中央指令室で主砲発射シーケンスが開始された。俺の隣に立つアマンダ中将が嬉々(きき)として命令を発した。本人にとって二度目の主砲発射がよほどうれしいらしい。しかも今回の作戦ではこちらに被害の出ることはないと予想されているのでなおさらだ。


「主砲発射準備開始」


「1番から6番、全主砲正常。主砲発射準備開始します」


「弾種、対惑星用対消滅弾。装填」


 今回は、惑星破壊が目的でゼノそのものを攻撃するわけではないので、反陽子、反中性子の区別なく対消滅用反物質として使用している。


「弾種、対惑星用対消滅弾。装填完了」


「反物質注入開始」


「反物質注入開始します。……、注入完了。注入口封鎖」


「照準、前方惑星中央。照準良し」


「主砲斉射」


「発射!」


「着弾まで二十秒。十七、十六、……、三、二、一、着弾!」



 主砲内で光速の10パーセントまで加速された六個の弾体が、前方の惑星に着弾した。着弾と同時に惑星表面の溶融物が白熱化し一部が宇宙空間まで吹き飛んで行った。その後、惑星が膨らみ始め、それが弾けて内部からあふれ出た閃光がスクリーンを埋め尽くした。


「閣下、主砲弾の爆発位置が近すぎたせいで、閃光がスクリーンを覆ってしまい爆発がはっきり見えませんでしたね。残念です。アルゼ艦隊が離れたところで観測中ですからあとで映像を送ってもらいましょうか?」


 のんきなことを言うアマンダ中将の向こうでは指令室のオペレーター達が次々と状況を報告している。


「六発全弾正常爆発。爆発位置は惑星中心よりすべて200キロ以内です。惑星シノーの完全破壊、成功しました」


「大型の破片を排除しつつ接近します」


 もう数分もすればアギラカナにも惑星の破片が衝突し始めるのだろう。アギラカナが惑星の残骸程度で被害を受けるようなことはないそうだが、ある程度の大きさの破片は、衝突前に光線兵器により迎撃、破壊すると聞いている。


 閃光が収まったスクリーンには急速に拡散するシノーの残骸があった。最初は白く輝いていた星の残骸だが十数秒後にはそれぞれ表面が赤くなりさらに表層部の温度が低下したためか黒く変色していった。


 しばらく目を凝らしてスクリーンを眺めていたが、ゼノらしきものを見つけることはできなかった。重力に引かれて少しは大きな天体が形成されるのかと思っていたのだが、六発もの主砲弾の威力が強すぎたようで、見事に惑星が消し飛んでしまったようだ。


「惑星中心部のあった位置に、多数の超高密度体の質量を検知しました」


「おそらくゼノですが、推定質量五十万トンほどで、現在動いてはいません。活動停止中ですが、先ほどの爆発で吹き飛んでいないところを見ると何らかの生命活動は継続しているのでしょう」


 これは、成体前のゼノなのか、死を迎える前のゼノなのか判断に迷うな。五十万トンしかないようだと、推進剤不足で恒星間の準光速移動はできないだろうし、惑星も吹き飛んでいるからこれ以上大きくは成れまい。いずれにせよ殲滅することに変わりはない。



「超高密度体をゼノと仮定して、すべて撃破する」


「動かない目標ですし、想定される個体数もわずかですから機雷艦を数隻投入するだけでいいでしょう。二隻で十分でしょうが、念のため四隻出します。

 1番シャフト開放」


「1番シャフト開放しました」


「機雷艦DM-0001からDM-0004出撃!」


「機雷艦DM-0001からDM-0004出撃します。……、出撃完了しました」


「シャフト閉鎖」


「シャフト閉鎖完了」


「閣下、念のためゼノブラスターを起動します。

 全ゼノブラスター起動!」


「ゼノブラスター起動!」


 起動したゼノブラスターの作る重力井戸の中に惑星の残骸が取り込まれていく。その残骸が重力井戸の中で擦れあったためか、雷も発生しているようで、ときおり発光している。


 すぐに配置についた機雷艦が活火山が爆発したような勢いで対消滅誘導弾を撃ちだし始めたが、直ぐに誘導弾の発射を終えたようだ。前方スクリーンではゼノが活動停止した時に放つ高強度中性子線が白光を伴って無数にきらめいている。


「機雷艦の発射した誘導弾が、順調にゼノの撃破を進めています。……、撃破総数四万八千七百六十五、全ゼノの撃破を確認しました」


「全機雷艦撤収します……


 1番シャフト開放、全機雷艦収容完了しました」


「シャフト閉鎖」


「シャフト閉鎖完了」



「作戦終了」



 主砲弾の斉射により反物質の備蓄量が大きく減ったくらいで、そのほかは何の問題もなく今回の作戦は終了した。



◇◇◇◇◇◇


 アギラカナの放った主砲弾が爆発して四十分後、光学観測中のアルゼ艦隊が惑星の破壊を知ることになる。マルコ提督以下はアギラカナにおいて今回の作戦の概要を聞かされていたが、実際のところ半信半疑だった。惑星に匹敵する宇宙船を目の当たりにしていたものの、彼らにとって荒唐無稽な作戦に感じられたのだが、実際に惑星が目の前で消し飛んでしまったわけだ。


 先日会談したアギラカナの代表は温厚そうな人物であったが、もしそうでなかったら、いま()の当たりにした攻撃が、首都惑星アーゼーンに向けられた可能性もあったのだ。自分たち、いやアルゼ帝国は運が良かったのだろう。マルコ提督はそう思うことにした。




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― 新着の感想 ―
シノー上に生存者がいないかどうかの探索、確認はあったほうが良いかなと思いました
[一言] やっと更新! 待ってました!
[一言] 更新お疲れさまです。 あっさりと対処終了。 さて、本星の政治家の対応はいかに。
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