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62.会談

誤字報告ありがとうございます。

62.会談



 アルゼ艦隊の司令官の名前は、アイーシャ・マルコというらしい。てっきり男性かと思っていたが、女性だったようだ。


 会談場所として、マリアに頼み、アルゼ艦隊を収容した第3宇宙港近くに会議室を新たに設けた。主に資源の備蓄場所として使用しているアギラカナの中間層にはいくらでも余裕が有るので必要なら大概のものが作成可能なのだそうだ。


 今回の会談には、先方がマルコ司令官とスヴェンという名の副官の二名。こちら側は、俺とマリアの二名に護衛の陸戦隊員六名が従っている。



 今日は正式な会談であるため、連合王国宇宙軍将官服を着て大将を示す襟に3個の金ボタンを着けている。ついでに反対側の襟に、アーセンの侯爵を示すダイヤ付きのバッジも付けようかと思ったが、さすがにやりすぎかと思いそれは付けなかった。同行したマリアは、いつもの制服で襟に中佐を示す銀ボタンを2つ付けている。単なるハッタリかもしれないが、ハッタリもバカには出来ないと俺は思っている。


 会議室に入ると、すでに先方は席についており、俺達が入室するとともに立ち上がった。先方の司令官は女性ということなので、目の前の紺色の上下を着た黒髪の女性なのだろう。見た目は三十代くらいに見える。付き従っている男性は二十代に見える。


 異なった文化というか種族であるわけだからこういった場合の儀礼は適当でいいのだろう。先方の見た目は全くの地球人なのだから、おそらく、何気ない動作が相手にとって極端な無礼な行動にはならないのではなかろうか。いずれにせよ、問題があればマリアが対応してくれるだろう。


 同時通訳装置をテーブル上に置いているので、お互いの意思の疎通には問題はない。


「私がこの宇宙船国家アギラカナの代表を務めます山田圭一と申します」


「私は、大アルゼ帝国宇宙軍G013星系(太陽系)先遣部隊の司令官を務めています、宇宙軍中将、5等爵アイーシャ・マルコです。投降した我々に対し十分な境遇を与えていただき感謝いたします」


『閣下、5等爵というのは、地球で言うところの伯爵辺りに相当します』


『ずいぶん偉い人なんだな』


『閣下はアーセンのれっきとした侯爵ではありませんか』


『そうだったな』


「何か、そちらの方で不足しているものなどあればおっしゃってください。すぐに取り揃えます」


「いいえ、そういったものはございません。お気遣いありがとうございます」


「それは良かった。現在、我々はあなた方の艦隊を拘束しておりますが、こちらの要求を承諾していただけるならすぐにでも、アルゼへ帰還していただいて構いません」


「要求といいますと?」


「まず、正面スクリーンの映像をご覧ください。この映像は三日前我々の探査機が捉えたものです。場所は、そちらの呼称でミトカナ星系という星系です。映し出されている惑星は、その星系に唯一存在するシノーという惑星です」


 会議室の正面スクリーンに映し出された惑星シノーが崩壊していく様子が映し出された。


 大気に包まれやや緑がかった青い惑星に最初に閃光が走り破壊の波が惑星表面を伝わっていく。一度、二度と閃光が走りそのたびに惑星が打ち震える。最初の内はまばらだった閃光を伴った破壊もついには、数えきれないほどになり、一連の破壊が終わった時には惑星シノーは赤黒く輝く球体となっていた。惑星の周りには吹き飛んだ大気と蒸発した海からの水蒸気が薄く取り巻き、飛び散った惑星の破片がリングを形成し始めている。


「この惑星には、推定二十万名の人が居住していた模様です」


 最初、惑星の破壊を淡々と眺めていたアルゼ側の二人だったが、今の一言に息をのんだ。


「この破壊は我々がゼノと呼ぶ星間生命体の衝突によりもたらされました。今回観測されたゼノの数は約五万。比較的少数です。このゼノは、惑星内の重金属を取り込むことで繁殖し数を増やします。惑星内の重金属を採り尽くすと近傍の星系に重金属を求め飛び立ちます」


 ここで、スクリーンにゼノの姿が映し出された。


「形状はこのような紡錘形で長さ40メートル程度です。質量は百万トンから四百万トン。中性子線を後部より放射することで宇宙空間を高速で移動し最高速度は光速の15パーセントほどになります。また、ゼノの前面は超高密度の物質に覆われており、比較的柔らかい側面、後方を攻撃したとしても核兵器程度では撃破できません。おそらくアルゼ帝国にはゼノを撃破可能な兵器は存在しないと思われます。


 また、先ほどお見せしたミトカナ星系の近傍にある一星系も内惑星は全てゼノに破壊されていました。そこではすでにゼノが新たな繁殖地を求めて飛びたっており、恒星間空間を移動中と思われます。この移動中のゼノについては現在我々が探査機を複数送り込み探知を急いでいます」


「いま見せていただいた映像が真実だとして、閣下は我々にどのような要求をされるのでしょうか?」


「我々にとっても、ゼノが脅威であることは同じですが、幸い我々はゼノを撃破する手段を持っています。従いまして、今回明らかになったゼノについて、これらを速やかに殲滅せんめつしたいと考えています。そこで、アルゼ政府に対しアルゼ領域における我々の作戦行動を認めていただきたいというのが一点。もう一点は、当然ですがこの太陽系への無断進入を止めていただきたいということの二点のみです。この二点をマルコ提督より本国政府に伝えていただきたいと思っています」


「本国政府がどのような回答をするのかは私にはわかりませんが、もし本国政府がアギラカナのアルゼ領域内における軍事作戦行動を認めないといった場合はいかがなさいますか?」


「現在行方の分からない恒星間空間を移動中のゼノですが、最悪有人星系に到着してしまいます。それも、数年先の近い未来です。我々の太陽系には直接の脅威とならないでしょうが、見逃して多くの人が犠牲になるのを見過ごすわけにはいきませんので、アルゼ政府の了解が得られなくとも、ゼノに対する攻撃は行います。また、我々の作戦行動について妨げとなるような動きに対してもしかるべき対応をさせていただきます」


「しかるべき対応といいますと?」


「我々の探査機は、すでにアルゼの首都惑星の詳細な情報を取得しています。最悪の場合、我々の手でそちらの首都惑星アーゼーンの制圧も視野に入れています。その際、星系内のアルゼ側作戦艦艇を全艦撃破していると思います」


「わかりました。本国政府に申し伝えます」


「よろしくお願いします。我々は、アルゼ政府の回答の有無や内容にかかわらず、間もなくミトカナ星系にこのアギラカナで訪れますので、その際、提督の艦隊を解放いたしましょう。その方が、帰還時間が短縮されると思います」


「アギラカナで訪れるというのはどういった意味でしょうか?」


「このアギラカナはそれ自体が超空間ジャンプ可能な宇宙船なのです」


「???」


 いきなりそんなことを言われれば、こうなるよな。




短編SF『我、奇襲ニ成功セリ』

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宜しくお願いします。


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― 新着の感想 ―
宇宙ネコ案件 優位側だと気持ちいいねw
マルコ「(終わったコレ……勝てるわけな……)」
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