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22. 発電所

22. 発電所




 除染作業が完了し、四十八時間が経過したところで、日本政府の派遣した専門チームが当該地域の各所で放射性物質の検出を試みたが検出できなかった。除染完了である。これで問題なく、核融合発電プラントの建設が可能となった。


 前日、日銀の臨時金融政策決定会合が開かれ全会一致で、二十年以上続けて来たゼロ金利政策の終了と民間金融機関への貸出し基準レートを年率1.5パーセントとすることを決定し、即日実施した。また、急激な円高に対し、『為替相場の動向を注視し、柔軟かつ強力に対応する』とのコメントを出し、為替介入の可能性を示唆した。


 除染の完了と日銀の動きなどにより、連日のストップ高を記録していた銘柄も除染関連銘柄や国債を大量に保有する金融株などに値が付き始め、東証株価指数TOPIXは先週木曜日比三十パーセント高を記録して引けた。(アギラカナショックの前日、ちなみにアギラカナショック当日を日本ではゴールデンフライデーと誰からともなく呼称し始めた。日本以外の国は全く逆のデスフライデーとかヘルフライデーと呼んでいるらしい)


 まだすべての銘柄が寄り付いているわけではないので、あす以降、さらにTOPIXは上昇する見込みである。そういった上昇基調ではあるが、東京市場は徐々に落ち着きを取り戻し始めていた。海外の主要市場も乱高下を繰り返しているものの、徐々に落ち着きを取り戻しつつある。円は全通貨に対しさらに円高が進み、ドル円で先週木曜日比、二十パーセントの円高で推移している。





 強襲揚陸艦AA-0001に収納していた二隻の一般作業艇を原発跡地である核融合発電プラント建設予定地に向かわせて、敷地の整地および成形作業を行わせる予定だ。すでに核融合発電プラント関連の機材は工作艦から運搬済みのため、据え付け用の土台が完成次第、地表に降ろし設置する予定である。


 電力会社に派遣していたアレキサンドラが既存の送電設備と核融合発電プラントとの接続方法を詰めてAA-0001に帰還したのを受け、核融合ユニットおよび、付随装置の設定もAA-0001の中であらかた終ってしまった。



 当日、日本政府の派遣した専門チームが放射性物質の検出作業を終えた夕方から、二隻の一般作業艇が降下し、敷地の整地および成形作業を開始した。作業内容は、土木用ナノボットを敷地の上に均一に振り撒いただけである。ナノボットは散布後自己増殖しつつ、あらかじめ入力された計画図を基に、地面の形を成形しつつ固化して行った。作業の終了信号を作業艇から受けたナノボットは不活性化し、数時間後には全てのナノボットが自壊した。



 土木用ナノボットにより整地され硬化された地面には、排水溝が計画図どおり幾筋も走り、各所に設けられた集水桝に雨水が流れ込むようになっている。集水桝に集まった雨水は、さらに太い排水溝を通り、50メートルプールほどの処理池に集められる。


 処理池の中には、排水処理用ナノボットが散布されており、可能性は低いが、もし有害物質が発生した場合には、その分解除去を行うようになっている。処理済みの水は、海に放流されるが、一部発電プラントの燃料としても利用される。


 排水溝と現在は見た目は同じようにみえる配管用側溝も何本も作られており、こちらは日本側の電力会社が受け持って最終工事を行うことになっており、監視用機器のケーブル等が敷設され、敷設後はふたをされる予定である。


 プラント据え付け台は、一辺15メートルほどの正方形で、高さ30センチ程度。その据え付け台が核融合発電プラント二基分敷地中央部に並んでいる。


 日も暮れて辺りも暗くなった中、上空より降下して来た作業艇に積まれた核融合ユニットに付随装置を取り付けられた核融合発電プラント(1辺10メートルの枠だけでできた立方体の箱に収まっている)二基が、並んだ据え付け台の上に設置された。


 その後、作業艇により燃料である水の給水管を取り付けアギラカナ側のプラント建設工事は終了した。明日からは、電力会社による各種の工事が始まる予定だ。確認作業を含め工事は二カ月を予定しているらしい。


 核融合発電プラントの本体である核融合ユニットは、それ自体が船殻に準じる素材でできており、小型の球形宇宙船のようなものであるため、自然災害はもちろんのこと、地球に存在する核兵器程度ならその直撃にも平然と耐えることができるそうだ。




 俺は、強襲艦の自分の部屋で、発電プラントの建設作業をモニター越しに見ている。昼間に映したように鮮明なカラー映像だ。


 見ていて、そう面白いものでもないため少し飽きてきた。それで日本で放送されている番組を見ることにする。モニターのリモコンは俺の家にあったものと同じ形をしていた。無論メーカーのロゴは付いていない。これは、いいのかなあ。


 切り替えたチャンネルでは、ニュースが流れていた。


「防衛省は本日夕方、人民朝鮮から大型の発射体一基が発射されたと発表しました。発射体は飛翔後、日本の排他的経済水域(EEZ)を越え、領空上空で消失したということです。

 山野次郎防衛大臣は記者団に、発射体の消失にアギラカナが関与しているとは断定できないが、発射体の消失時、破片などが観測されていないためその可能性は高いのではないかと説明しました。この件に関しまして人民朝鮮、アギラカナ両国とも声明などは現在のところ出していないようです」



 いいタイミングで、人民朝鮮がミサイルを打ち上げてくれたおかげで、うちが口先だけでないことが分かったんじゃないかな。この分だと、日本海のあの島からも、民主朝鮮の連中は勝手に引き揚げていくかもしれないな。まあ、それをしたらあそこの政権は吹き飛ぶだろうからそれはないか。


 次に切り替えたチャンネルから、はでなオープニング音楽が流れてきた。どうやらアニメが始まるところらしい。オープニングで高校生くらいの坊主頭の主人公が、渋めのコートを着たヒロイン役の女の子と西洋の中世風の街の中をえらい勢いで走り回っている。道行く人や馬車などにひどい迷惑が掛かって大変そうなのだが、誰も二人を止めようともしない。まあ、所詮しょせんはアニメだよな。


 ここで、アニメタイトルとスポンサー名が大きく映し出された。


       『真・巻き込まれ召喚。 収納士って……』


「ご覧の放送は、法蔵院グループとご覧のスポンサーでお送りします」


 面白くなさそうなタイトルなので、チャンネルを元に戻したら、建設作業はあらかた終わっていた。あしたに備えてもう寝よう。




大型の発射体ですが、日本領空(高度100キロまで)を通過する時には高度が100キロを超えていると思います。この場合領空侵犯にならないかもしれませんが、作中では遠慮なく破片すら残らないよう撃ち落しました。

感想でご心配していただきましたので、あらすじ、と第1話前書きに「この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称・国名等は架空であり、実在のものとは関係ありません」のおまじないを入れときました。


2020年1月7日


 作中の法蔵院グループはペンネーム山口遊子の『アギラカナ外伝、法蔵院麗華』に登場する架空の巨大企業グループです。


 ペンネーム山口遊子作『アギラカナ外伝、法蔵院麗華』URL : https://ncode.syosetu.com/n4131fy/ もよろしくお願いします。


 by 山口遊子ヤマグチユウシ ことさらペンネーム山口遊子ヤマグチユウシを宣伝しました。



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― 新着の感想 ―
[良い点] なんだって!神アニメじゃないか!(わかりやすいごますり
[気になる点] 後出しジャンケンぽくなるのですが、発電方式を宇宙空間での太陽光発電にして送受信システムを除染跡地に置くのが良かったかなと思います。太陽光発電のコストが世界的に下り当時の価格の1/10に…
[一言] もしかして、今なら5000兆円印刷しても大丈夫なんじゃ…
感想一覧
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