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悪魔殺しの猟犬  作者: 鮫トラ
第二章 見たのか? 見たんだろう?
18/21

4ノック 炎の雨


 数歩後ずさった男は痛みを吹き飛ばす様に、その喉を天へと向け吠える。時代さえ違ったら、きっと人々は彼をドラゴンか何かだと勘違いしていただろう。

 ミューリスはそんな彼を前にして、意外と落ち着いていた。相手はこの前のような悪魔ではないからだろうか。そんなことを考えつつ、相手がどう動くか待つ。


「フゥーッ、フゥーッ。グゥゥゥッ……()()め……! よくも俺の手を……!」


 ギラりと怒りに染まった眼光が、ミューリスとその前に立つクティトを睨む。クティトは軽く肩を竦めると、ミューリスの後ろへと下がる。男の目はクティトだけを追っている。その血走った眼からは、先ほどのような理性は感じられない。

 まるで、血に飢えた獣のようだ。

 視線で気付いたクティトは、ミューリスへと顎をしゃくってみせる。男の視線は一度、ミューリスの方へと向くが、すぐにクティトへと戻る。


「アンタ、ちょっと手をあの憲兵の方に翳してごらん」


 クティトはミューリスの耳元でそう囁く。その声が、ひんやりと鼓膜を撫でていき、ミューリスは僅かに身震いした。だが、言う通りに右手を翳す。


「こ、こうですか?」

「そうそう。そのままね」


 そっと、クティトの手がミューリスの右腕に振れる。氷のような冷たさの中に、ふわりと彼女の体温が伝わって来たミューリスは、自分の鼓動が速くなっていくのを感じ、頬に熱が集まる。

 クティトのニオイが鼻を撫でる。ひんやりとしていて、甘いような花のようでいて柑橘系のような不思議なニオイがした。


「あ、あの……! クティトさん……?」

「ほら、前向いて」

「は、はい」


 甘く囁くような声が耳を痺れさせる。本来の姿となった彼女は、普段の時と違う雰囲気だ。あまり、話さず表情の変化も少ない。だが、今は真逆ともいえる。


「放て」


 クティトがそっとと吐息を吐き出すと同時に、冷気がミューリスの右手を取り巻き――拳大の氷のつぶてが打ち出される。


「えっ?」


 撃ちだされたそれはまっすぐに男へと向かい――衝突。白い霧と血液が空を舞う。


「グアァァァッ!?」


 男の肩が吹き飛ぶ。そして、ゴロリと手首のない腕が地面を転がり、血だまりを作る。ミューリスはなにが起こったのかわからず、ただその光景を見ていた。

 いったい何が起きたのか。ミューリスがぎこちない動きで顔を横へと向ければ、クティトは笑っていた。まるで、悪戯が大成功したとでもいう子どものような無邪気な笑み。


「命中。やるじゃん」


 まるで、ミューリスがやったかのようにクティトは言う。だが、ミューリス自身は意味がわからなかった。なんせ、相手の肩を吹き飛ばす程の魔法なんて使えないのだから。

 ゆえに困惑に満ちた眼差しでクティトを見つめてしまう。が、彼女はクククと笑っているだけだった。


「え、あ、いや……あの……」

「くくく、ほら、見てみなよ」

「え、いや、なにい……って……」


 軽く肩を叩かれ、顔を前へと向ける。すると、剣を持った手で吹っ飛ばされた肩口を押えた男は、クティトから、ミューリスへと視線を移す。その眼光は怒りと殺意を先ほどよりも強めているように見える。

 あぁ、もしかして……そこまで来て、ミューリスは理解した。敵は、クティトにしか興味がなかった。まぁ、そうだろう。こんな弱そうな自分よりも、明らかに強いクティトを倒したいに決まっている。そこまで考えたミューリスは、彼女がそっと離れていく。


 痛むのだろう。食いしばった口からシュウシュウと息を漏らしながら、男は血走った眼でミューリスを睨む。ぞくりと殺気がミューリスに突き刺さる。冷汗で背中を濡らしながら、そっと体勢を低く構える。男は片足の踵上げ、剣を構える。


 あ、まずい。そう思った次の瞬間――


「シュゥゥゥゥゥ」


 男が大地を踏み砕く勢いで駆け出す。凄まじい速度で迫る。ミューリスは冷静に息を吐き出すと、まず、斜めに振り下ろされた男の刃をバックステップで躱す。

 十分距離を開けて躱したが、風が体に吹きつける。だが、それに気を取られている時間は無い。男は斜めに振り下ろした剣を、そのまま横薙ぎに払う。ミューリスはそれを横跳びで躱す。


 衝撃波が転がっていた煉瓦を吹き飛ばす。ミューリスはぐるんと一回転して立ち上がる。だが、男の攻撃は終わらない。起き上がったミューリスへと駆け寄り、飛びつくように剣を振り下ろす。


 カンッ! 叩き潰すようなその刃を、ミューリスは目前まで迫ってきていた剣の腹を、ナイフで思いっきり叩き、ギリギリで軌道を横に逸らす。

 肉を斬り裂くはずだった刃は地面を斬り裂き、凄まじい衝撃がミューリスの真横から響く。足元からビリビリと響くそれを感じている暇はない。ミューリスは痺れる手からナイフを捨てると、そのまま男の懐へと潜り込み――


「ごめんなさい」


 コートの内側から注射器を取り出す。透明な液体が入ったソレの先には、太い針が輝いている。ミューリスは男が剣を持ち上げる前に、素早く首筋へと近づき、その注射器を――突き刺す。


「――ぐっ!?」


 針が刺さり、液体が注入されるや否や、男は小さく呻き声を漏らし、体を一瞬だけ痙攣させると、白目を剥きそのまま前のめりに倒れる。

 このままでは潰されてしまうので、ミューリスが身を引こうと動くと、急に背後からグッと体を引っ張られ、抱き留められる。ハッと振り向けば、呆れ顔でクティトがミューリスを見ていた。

 ズシン。という音が響く。ミューリスはピクリとも動かない男を見ながら、ホッと息を吐き出した。


「なにそれ」


 クティトはそう言って、男の頸に刺さった注射器を指さす。ミューリスはコートの内側から、もう一本注射器を取り出し、見せる。透明な液体が揺れ、光を反射する。


「これですか? 実は、サマンサさんに貰ったんです。協会の技術部隊? の隊長さんが作ってくれたらしいんですけど、生き物にこの液体を注入すれば、たちまち眠ってしまう――その名も“みんなころりん”。です!」


 サマンサに言われた通りに得意げにまるで自分が作ったかのように言えば、冷たい視線がミューリスを突き刺す。


「へぇ、そりゃすごいね」


 冷めた紅茶のように冷たい反応が返って来る。その眼差しと声から、“なんなんだコイツ”と思われているのは火を見るよりも明らかだ。

 ミューリスは恥ずかしさで真っ赤になりながら、それをしまうと、クティトの両肩をがしりと掴み、早口で弁解する。


「あの! ち、違いますからね!? これは、サマンサさんに説明するときはこうしろとですね! 言われていたんです! 本当ですからね!? だから、そんな目で見ないでくださいよ!」


 必死にそう言うと、クティトは「わかった、わかった」とだけ言ってそっとミューリスから離れる。ミューリスはガックリと項垂れ、穴があったら入って蓋でも閉めて閉じ篭りたい気分だった。




 そんなやり取りを終え、ミューリスは、気まずそうに振り向き、いまだ眠っている男へと顔を向ける。うつ伏せでは息ができないのではと思っていたが、シュウシュウという音が聞こえている辺り、呼吸は問題ないようだ。

 クティトもいつの間にか、普段の姿へと戻り暇そうに欠伸をしている。温かい空気は確かに眠気を運んできそうだが、それを塗りつぶす死臭のせいでミューリスの顔は少し青い。


「……どうしたらいいんでしょうか」


 盗賊の死体と憲兵の死体が転がるそれらを見ながら、ミューリスは呟く。


「さぁね。てか、さっきの奴は? 後から来るって言ってなかった?」

「あれ? そう言えば姿を見ませんね……もしかして、何かあったのでしょうか」


 不安げにそう答えたミューリスが探しに行こうとすると、クティトは、そんなミューリスの手を掴んで止める。振り向けば、面倒くさそうな表情でミューリスを見上げていた。


「どうやら、探しにはいかせてくれないみたいだよ」

「え? なにを……いって……」


 何かの気配を感じて振り向く。すると、眠っていた筈の男が仁王立ちでコチラを見ていた。どうして、彼女の話では最低でも数時間は眠ったままのはずなのに……ミューリスは、男を見ながら思う。

 だが、それよりもミューリスは、男の纏う空気がさきほどとは全く異なることに気になった。ビリビリと放っていた殺気は依然としてあるものの、その中には怒りや憎しみという感情が消えていた。


――コロサネバナラナイ。


 そんな声が聞こえた。冷たくしわがれた声は、まるであの時聞いた声のようだ。


「――わっ。ク、クティトさん……?」


 庇うようにクティトがミューリスの腕を引き、自分の後ろへと隠す。真っ白な髪が風になびき、細められた青色の瞳がギラりと輝く。

 ドキリとする横顔には、先ほどまで浮かんでいた柔らかさは消えていた。ミューリスは、男とクティトを交互に見て不安に駆られる。


「クティトさん……」

「残念だけど、アンタにできることはもうない。いつの間にやられたのか知らないけど、アイツは魔力にあてられた――魔獣になってる」

「ま、魔獣!?」


 ミューリスは、酷く驚いた。魔獣は名の通り、人間以外の獣がなると思っていたからだ。クティトは、そんなミューリスの反応で「あぁ」と呟くと、言葉を続ける。


「魔獣は人間もなるよ。魔力にあてられ、濃さにもよるけど、魔力はその人間の内側を回って回って、中身を喰らい尽くし、最後に魔力は心臓を石へと変え――魔獣へと変える」

「そんな……では、あの時の村人たちも……」

「……そうだよ。あれも、放っておいたらそのうち魔獣になっていた。だから、そうなる前に殺した」


 思い出される光景。ミューリスの表情が曇っていくのを見たクティトは、静かに前を向き、体勢を低く構える。

 フワリと、冷たい空気が漂い、二人を守るように渦巻く。ミューリスは、その空気を肌で感じながら、なんて悲しい空気なんだろうと思った。


「くっそ……こうなるまで気付かなかったなんて……」


 小声でクティトはそう呟く。白い霧のようにクティトの周りに濃い冷気が漂う。男は、それを見ると、静かに瞳を開く。

 開かれた双眼は、白目まですべてが塗りつぶされた様に、真っ赤に染まっていた。血のように赤いソレは、クティトだけ見ている。


「……残念だけど、アンタには死んでもらう。協会のハンターとして、アンタのことはもう生かすわけにはいかないから」


 グッと大地を踏みしめ、クティトがミューリスの視界から消える。フワリと残り香のように冷気が大地や空気を撫でる。


 一瞬で、男の前まで距離を詰めたクティトは、右手を刃のように揃え、体を捻る。そのまま、心臓を貫かんと、突き出そうとしたその瞬間――クティトは、サッと後ろへと飛ぶ。

 シュン!

 そんな音が空気を撫でる。と、思ったその時、赤とも黒とも言えない飛沫が舞う。同時に鼻をくすぐるように生臭い鉄の香りが撫でていく。

 ミューリスは反射的にその香りと飛沫の主を探す。それはすぐに見つかる。なんせ視線の先なのだから当然のことだろう。


 ゴトン、という音が遅れて聞こえた。目を向ければ、男の足元には――()()()()()()()()()()。赤い瞳は、なにが起こったのかわからないと言いたげに、ミューリスを見つめている。

 噴水のように噴き出し続ける赤黒い液体が大地と、男自身を濡らしていく。離れているとはいえ、近くにいたクティトにもそれは飛び散っていたようだ。真っ白の髪はわずかに赤黒く染まっていた。


――首を斬られた男は、まだ生きていた。当然だ。魔獣となってしまったものは、その心臓を砕かぬ限り死ぬことは無いのだから。ギギギ、と油の刺さっていないブリキのおもちゃのようなぎこちない動きで、男が一歩踏み出す。

 だが、その一歩が地を踏むことは無かった。軽い風切り音が聞こえたと思ったその時には、男の上げていた膝から下は斬り落とされていたからだ。


 ズシン、という音と共に男はその場に膝を付く。ミューリスはその光景を見ていたが、まったく状況が理解できなかった。一体なにが起こったのか……だがその答えはすぐにやって来る。


「あれ、まだ生きているんですね。やっぱり、魔獣化していたということですか」


 フワリと、男の前へと降り立つように現れたアヴィスは、そう言って顎に手を当てた。そんな彼女の手には一本の剣が握られていた。わずかに赤黒い液体が付着し、熱した鉄のような輝きを放つそれは、自身が発する熱によって空気を歪めている。

 あの剣で男の首と足を斬り飛ばしたのは明白だった。シュウ、と剣についていた血が熱によって蒸発していくのを、ミューリスは呆気に取られた様に見ていた。


「ア、アヴィス……さん……?」


 何拍も置いた後、ミューリスが口を開くと、アヴィスは振り向く。


「あっ、ミューリスさん。生きていたんですね。よかったよかった。あれ? そちらの()()さんはもしかしてクティトさんですか?」


 アヴィスは人懐っこい笑みを浮かべる。だが、その声は表情と全くあっていない。異常なほどその声は落ち着いていた。まるで、なにも無かったかのように。

 だが、ミューリスはそんな彼女に全く違和感を感じなかった。そして、思う。あぁきっと、今の彼女が本当の彼女なのだと。


「おい、アンタなにしてんの」


 いつの間にか、ミューリスの隣へと立つクティトは、アヴィスへと鋭い声を飛ばす。声をかけられた彼女は、コテン、と首を傾げ答える。


「なにって……バカな()()()()()()()しに来ただけですが?」


 アヴィスは、不思議そうにそう言うと、片膝を付く男が振り上げた腕を振り向きざまに一閃し、その腕を斬り落とすとそのまま、心臓部へと突き刺す。

 ジュウ、と熱した石の上で肉でも焼いたかのような音と黒っぽい煙が漏れだす。首のない男は断末魔も上げられず、体を震わせる。そして、ゆっくりと力尽きるように消えていく。

 数秒と立たず、男の体が完全に消滅すると、アヴィスは持っていた剣を投げ捨てる。未練もなく放り投げられたそれは、熱を失い地面に当たって粉々に砕けてしまう。


 ミューリスとクティトはただ、その光景を見ていることしかできなかった。


「……ふぅ。やっぱり死体は残らないんですね。まぁいいか」


 クルリと振り返ったアヴィスは、ミューリスとクティトを順番に見据える。サッとクティトは、ミューリスを庇うように前へと出ると、アヴィスは、肩を竦める。


「そんなに警戒しなくても私は何もしませんよ」


 両手を上げてるアヴィス。だが、その程度でクティトの警戒が解けることは無い。むしろ余計に警戒心を高める結果となる。


「アンタ、ソイツを裏切り者って呼んだな。それはどういう意味?」

「そのままの意味ですよ。まぁ、貴女たちに詳しく言う義理は無いんであまり言えないんですけど、あの人――()()()は、私たちの味方のフリをして、王の暗殺を目論む連中に情報を流そうとしたんですよ。だから、いろいろと拷問(お話し)をしてから殺そうとしたんですけど……」


 ニコリと、あっけらかんと言い放つ彼女に、ミューリスは密かに戦慄した。


「いやぁ、ちょっと油断した瞬間に逃げられちゃいましてね。一緒に来ていた仲間とも連絡が取れなかったし、地図は無いしで困っていたんですよ」

「そ、そんな時に私たちが来たということですか……?」

「はいっ。盗賊をあっさり倒していたので、きっと盗賊退治に来た人たちだな。もしかしたら、根城にいるかもしれないなーと思って」


 そこまで言ったアヴィスは、ふと、何かを思い出したかのようにニコニコと笑っていた表情をスっと、真剣な物へと変える。くすんだ赤色の視線が二人をそっと撫でる。


「さてさて、あんまり時間もありませんから、無駄話は終わりとしましょう。実は、お二人にはお願いがあるんですよ」

「お、お願い……ですか?」


 ミューリスが、不安げに聞き返すとアヴィスはニコリを頷く。


「ここにある死体。盗賊も憲兵も含めて私に任せていただけませんか?」

「え、えっと……それは……」

「ダメですか?」


 困ったように眉尻を下げる彼女に、ミューリスは言葉に詰まった。今回、ここに来た目的は盗賊退治だ。しかも、ヘイカーから直々に頼まれたものである。いいですよと軽々しくは頷けない。

 そうしていると、アヴィスは「困りましたね」と呟く。その声は落ち着いているが、本当に困っていると言うのが何となく感じ取れた。


「別にいいんじゃない」

「え?」


 二人が無言でいると、警戒しながらも普段の姿へと戻ったクティトはつまらなそうに口を開く。その言葉にアヴィスの表情が明るくなる。が、ミューリスの表情は苦い。


「クティトさん、いいのですか……? その、ヘイカーさんに怒られてしまうのでは……」

「別に、ヘイカーは別に気にしないよ。素直に憲兵にとられたって言えば許してくれるよ」


 クティトはトントン、とつま先で地面を叩く。その様子から早く、ここから立ち去りたいという雰囲気が感じられる。ミューリスは困ってしまった。が、彼女がいいと言うのならいいかと思い、ニコニコとずっとこちらを見ているアヴィスへと視線を戻す。


「では、アヴィスさん……後、よろしくお願いします」

「はいっ! 任されました。この恩は忘れません。いつか必ず、お返ししますから」


 クティトはやり取りが終わるや否や、踵を返し足早に去っていく。置いてかれそうになったミューリスはアヴィスへと頭を下げると――


「あぁ、ミューリスさん。ちょっと待ってください」


 そう言った彼女はポケットからなにかを取り出し、ミューリスへと放り投げる。慌てて受け取ってみれば、それは薄赤色の宝石だった。

きらりと輝くそれは、最初ルビーかと思ったが、少し違うようだ。ゆらりと揺れるような輝きを放つそれとアヴィスをミューリスは交互に見る。


「え、えっと……これは?」

「まぁ、ほんのちょっと特別な石ですよ。私なんかより、貴女が持っていた方がよさそうな気がしますからね。友好の証だと思って受け取っておいてください」

「は、はぁ……」


 笑顔に後押しされるように、ミューリスはお礼を言うと、それをコートの内ポケットへとしまう。と、ミューリスはクティトが歩いて行った方へと向こうとして、やめる。


「アヴィスさん」

「はい?」


 振り向いたアヴィスはニコニコと笑顔を浮かべる。ミューリスは小さく息を吸い込むと――


「クティトさんは、亜人じゃなくて()()です」


 力強い言葉に一瞬、だけ目を見開くアヴィスは、フワッと微笑む。


「それは失礼しました。次からは気を付けます」


 その声は落ち着いていたが、今までにやり取りした声の中で一番優しく暖かった。

 



 


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