世界樹がありました
遥か彼方にゴブリンを目の前にした世界樹ユグドラシルの根本に、突然光が集まった。太陽のような熱量を持ち激しい光をまき散らした中心には人影が現れました。
だんだんと光量が減り光が落ち着くころには20代前半ぐらいの年齢の背の高い引きしまった肉体の男が立っていました。
目を開いた男あたりを見渡すと眼前には遥か彼方までひろがる広大な平原と湖が広がり、背後には見上げるほど高い樹木が立っていました。
男がきょろきょろと周りを伺っていると上から声が聞こえました。
(愛しき我が子よ、聞こえますか?)
男はもっときょろきょろとあたりを見渡しましたが近くに誰かいる様子はありません。
(…愛しき我が子よ、聞こえてますか?)
上を見上げても世界樹の幹と葉っぱが見えるばかり。
(…わが子よ、聞こえているなら返事をしなさい)
試しに世界樹の幹の周りをぐるっと回ってみようと歩きだしました。
(おーい聞こえてる?)
岩の裏をめくってみると虫がいるのを見つけました。
(…もしかして聞こえてない?)
男は世界樹の方をチラ見しましたが、すぐに顔を戻し虫をツンツンとつつきました。
(絶対今の聞こえてたよな!?こっち見たもんな?)
男は虫に興味を無くしたのか湖の方に歩き出しました。
(聞こえてるんだったら返事しろって!返事が無理ならこっち向けって)
男は頑なに世界樹の方を見ようとしません。
(…こっち向かなきゃまた光に戻すぞ?)
「…何ですか?」
男は観念して不満そうに世界樹の方に向きました。
(よく聞きなさいユグ太郎)
「えっもしかして俺のこと?マジでそんなダサい名前なん?」
(なんか文句あんのか?)
「いやいやもうカッコイイ名前にしましょうよカタストロフィとか」
(何その厨二っぽい発想?ユグドラシルから生まれた長男だからユグ太郎…ユグドラシル太郎でもいいぞ)
「なにそのウルトラマンタ○ウみたいな」
(はいはいそんなことはどうでもいいの。遥か彼方にゴブリンの軍団がいて世界樹を狙ってんの。それを退治するのが君の使命です)
「どうでもよくないんですが…まあ世界樹枯れると俺も一緒に死んじゃうとかそんなパターン何だろうしサクッとやっちゃいますよ」
(流石わが子!話が早いね)
「ゴブリンの数と距離はどれくらいなんですか?」
(100万ぐらいとここまで50kmぐらいかな)
「数多すぎ一人でどうにかできる範疇こえてますよ!しかもめっちゃ近いじゃないですか!?なんでもっと早くに対策打たなかったんですか!?」