徘徊する心象風景
人間って、なんでここまで一つ所にじっと、立ち止まっていられるのでしょうね。っていうか、たぶん、私はってことなんでしょうね・・・皆さんは、この忙しい時代、じっとしては居られないことでしょうに。で、私だけでも、じっとしてることになってます。
「諦めたくないために」
両手を合わせたその中に
それは徐々に湧き上がり
そして溢れ、滴り落ちる
その一滴が、散り、霧になり
そして、空間を広げる
張り詰めた世界の中で
何を創り出そうというのか
あなたは立つ、時の女神
光の中に
永遠の中に
あなたは誰を待ち
捧げ続けるのか
時は溢れ
流れ落ちるばかり
立ち尽くす女神ならば
そこにたどり着き
縋りつくことができるならば
その溢れる時の雫の恩恵に
浴することができるのか
集めたそれで過去に飛べるのか
取り返しができないと
諦めていた後悔の渦の中心へ
夢の中で繰り返し唇を噛む
その悔恨の元の地へ
「もう一度還るところは・・・」
人気なく、皆帰ってしまった会社の中で
ただ一人機械を動かしていると
ふと、思いだしてしまうのですよ
いつも一人だけだなあって
動き始めて、調子が取れてしまうと
手持無沙汰でボンヤリしている
ああ、あの時もそうだったなあって
まわりまわって
くるくるまわって
また同じところ、また同じ時
なんかこう、変わらない
なんかこう、つまらない
なんかこう、寂しいな
再び帰ってくるのが怖かったのだけど
もう二度と来たくないはずの世界なのだけど
知らぬ間に帰ってきてしまうと
なんだか懐かしく故郷みたい
もう遠くなったはずの時が
今ここに再び
旅立っておいてきたはずの世界が
また目の前に広がる
今度はいつ、もう一度ここへ
今度は何、何をしてここへ
「世界に広がる夜と闇」
歪められた夜の闇と
街の吐き出す霧の中
響く足音に見え隠れする顔は
薄汚れて疲れ切っている
切り裂かれた空は輝きを失い
凍てついた海原に沈む心は
失意にも似ている
遠く、山の頂に光るものは
何か、涙のキラメキを思わせるけれど
それは希望という名の迷い児なのか
歩き続ける足は重い
このまま公園のベンチで寝転がり
夜の明けるまで目をつぶり
耳を押さえていたら、もしや
押し寄せる日常の足音から
逃げ切る事が出来はしないか・・・
夜はいつまでも明けず
闇は限りなく深い
「小さな眼」
通いなれた幹線道路の
小さなトンネルを抜けたところに
名前の知らない木々が立っている
いつもは気にも留めないそれらに
今日
ふと、目が向いた
排気ガスが渦巻く中で
それでも肩を寄せ合っている木々
一瞬で走り過ぎて、そして
しばらくして目の隅に残っている
ものに気付く
薄汚れた葉の蔭
ほの暗い細かい枝の奥に
たしかに小さな眼があった
暗い瞳のそれは
私の忘れてきてしまった心?
走り過ぎたそこには
まだ居てくれるのかな
それとも失意のうちに立ち去ったのか
ならば
ああ、今頃どこを
彷徨っているのか
なんだか、妙に、静かになってます。もとに戻っちゃった? んでしょうか?