表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

日常の中で

懸命に働いている方々に敬意をこめて、ご自愛くださいとお伝えします。

  「山里の秋」


一雨ごとに 寒さはつのり

ものみなシンと 静まり眠る

あれほど風に 大きく揺れた

竹の林も 静かに眠る


挿絵(By みてみん)


実った稲も 刈られた田には

切り刻まれた 藁散り散りて

朝方冷えた 空気の中で

白い霧の子 立ち昇らせる


遠く近くで 啼く鳥たちも

わずか残った 柿の実めざし

先争って 飛び集うのか

家の軒端で ひとしきり啼く


挿絵(By みてみん)


木の葉、草の葉 色付き始め

野に棲む蟲も 寒さを逃れ

散り敷く木の葉 搔き分け眠る

眠れよ眠れ ものみな眠れ


陽も傾いて 黄色を帯びて

力ない様 見ないで眠れ

もうすぐ降り積む 霜、雪避けて

眠れよ眠れ ものみな眠れ




  「作られた世界の中でのこと」


時を刻む音の中に

寄る辺なき心は安らぎを見出す

無秩序な自然の中に

恐怖と死とを感じる時

生存のすべてをかけて

素のままの自然を破壊する


挿絵(By みてみん)


残された残骸を寄せ集め

居心地の良い巣を営々として作る

そして、そこからは一歩たりとも出ようともしない

それが私たちの存在のすべて


作られた自然

作られた環境

作られたつながりの中に

安らぎを求める


今では素のままの自然の中で

生きる事さえできない私は

ひたすらに

作られた世界に安住を求め

残酷な自然は飼いならされたものに

置き換えられていく


挿絵(By みてみん)


巧妙に隠された絶望は

切り離された繋がりの中で

両の目をつぶらなければ

否応なく瞳に映りこみ

心の深い所に沈殿していく


失われた素のままの自然は

何もかも得たように見える心の中に

渇望を生み

満たされぬ欲望を育て

そして滅びを約束するのだろうか




  「木枯らし吹く中で」


北の山から吹き下ろす

心の中まで冷たくなるような風


小春日和がしばらく続いた後に

いまにも小雪がちらつきそうな雲が来た


挿絵(By みてみん)


気のせいなのか、遠くから飛ばされて

白い小片が舞っている


人通りの途絶えた街にも

電線を鳴らして飛び回る風がいる


上衣の襟を立てて背を丸めた

私の行くところは何処なのだろうか


挿絵(By みてみん)


打ち捨てられたシチュー鍋は

湯気がまとわりつくように、幻想を引きずっている


人のいない工場のチャイムは

昼時の知らせを歌い、終わる


ボンヤリと立ち尽くす私の心は

拠り所を失って凍えていく




  「今、生きている」


海よりの風がビョオービョーと吹きすさび

窓の露は見る間に白く凍りつく

遠く、漁火らしき灯りも滲み始め

そして見えなくなった


挿絵(By みてみん)


車体もグラグラと揺れて

明朝、無事に目覚めることができるのだろうか

ふと、不安の中に居ることを自覚する


軽い酔いの中に不安を沈ませて

朝方の冷たい空気を思い、そして

その冷え切った中

眠りが安らかであるように祈る


体のあちらこちらの疲れと、節々の痛みに

生きていることの悲しみと

わずかばかりの希望に

縋りついていることを想う


絶え間なく走り去る人々の呻きと

持っていき場のない溜め息の中で

この酔いが

深い眠りを招いてくれることを、願う

残りあと二回の更新です。すでに書かれてしまったものなので、変更はしない方針です。推敲も、最低限にとどめています。ご納得、ご満足いただけていますでしょうか。でも、どうにもならないのですけど・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ