日常の中で
懸命に働いている方々に敬意をこめて、ご自愛くださいとお伝えします。
「山里の秋」
一雨ごとに 寒さはつのり
ものみなシンと 静まり眠る
あれほど風に 大きく揺れた
竹の林も 静かに眠る
実った稲も 刈られた田には
切り刻まれた 藁散り散りて
朝方冷えた 空気の中で
白い霧の子 立ち昇らせる
遠く近くで 啼く鳥たちも
わずか残った 柿の実めざし
先争って 飛び集うのか
家の軒端で ひとしきり啼く
木の葉、草の葉 色付き始め
野に棲む蟲も 寒さを逃れ
散り敷く木の葉 搔き分け眠る
眠れよ眠れ ものみな眠れ
陽も傾いて 黄色を帯びて
力ない様 見ないで眠れ
もうすぐ降り積む 霜、雪避けて
眠れよ眠れ ものみな眠れ
「作られた世界の中でのこと」
時を刻む音の中に
寄る辺なき心は安らぎを見出す
無秩序な自然の中に
恐怖と死とを感じる時
生存のすべてをかけて
素のままの自然を破壊する
残された残骸を寄せ集め
居心地の良い巣を営々として作る
そして、そこからは一歩たりとも出ようともしない
それが私たちの存在のすべて
作られた自然
作られた環境
作られたつながりの中に
安らぎを求める
今では素のままの自然の中で
生きる事さえできない私は
ひたすらに
作られた世界に安住を求め
残酷な自然は飼いならされたものに
置き換えられていく
巧妙に隠された絶望は
切り離された繋がりの中で
両の目をつぶらなければ
否応なく瞳に映りこみ
心の深い所に沈殿していく
失われた素のままの自然は
何もかも得たように見える心の中に
渇望を生み
満たされぬ欲望を育て
そして滅びを約束するのだろうか
「木枯らし吹く中で」
北の山から吹き下ろす
心の中まで冷たくなるような風
小春日和がしばらく続いた後に
いまにも小雪がちらつきそうな雲が来た
気のせいなのか、遠くから飛ばされて
白い小片が舞っている
人通りの途絶えた街にも
電線を鳴らして飛び回る風がいる
上衣の襟を立てて背を丸めた
私の行くところは何処なのだろうか
打ち捨てられたシチュー鍋は
湯気がまとわりつくように、幻想を引きずっている
人のいない工場のチャイムは
昼時の知らせを歌い、終わる
ボンヤリと立ち尽くす私の心は
拠り所を失って凍えていく
「今、生きている」
海よりの風がビョオービョーと吹きすさび
窓の露は見る間に白く凍りつく
遠く、漁火らしき灯りも滲み始め
そして見えなくなった
車体もグラグラと揺れて
明朝、無事に目覚めることができるのだろうか
ふと、不安の中に居ることを自覚する
軽い酔いの中に不安を沈ませて
朝方の冷たい空気を思い、そして
その冷え切った中
眠りが安らかであるように祈る
体のあちらこちらの疲れと、節々の痛みに
生きていることの悲しみと
わずかばかりの希望に
縋りついていることを想う
絶え間なく走り去る人々の呻きと
持っていき場のない溜め息の中で
この酔いが
深い眠りを招いてくれることを、願う
残りあと二回の更新です。すでに書かれてしまったものなので、変更はしない方針です。推敲も、最低限にとどめています。ご納得、ご満足いただけていますでしょうか。でも、どうにもならないのですけど・・・




