詩 菓子 / 星 他
菓子
食卓の上に和菓子がふたつ。
妻が仕事の帰りに買ってきた。
「あした休みだから、いっしょに食べようね」
しかし、夕食をすますと、妻はストーブの上に
ヤカンをのせたまま、寝入ってしまった。
一週間の疲れが一度に出たのだろう。
茶をいれるためにヤカンに入れた湯が、
いまは夜の静寂の中でチンチンと音をたてている。
菓子を見つめていると、それがまるで
主人を失った無機物のようで、悲しくなってしまう。
空
昨夜まで続いた雨も、すっきり幕を落し
思い切り空を取り込む
青い空気が胸いっぱいに広がり、
清らかな風になって体中を走る
隠ぺい、改ざん、ごまかしと、
一瞬押しつぶされ、窒息しそうな世相を吐き切って、
ふたたび、平和な空を 胸いっぱい取り込む
ごめんね
他ばかり気遣って、ほとんど、かまってやらなかった。
むしろ不潔な付属品のように、手先を伸ばすことさえしなかった。
だけど、キミは黙って七十年ものあいだ、ボクを支えてくれた。
「ごめんね」
背筋を海老にしながら、きみの指先を擦ったり、さすったりする。
星
「ママ」
どうしたの?
「お星さまってすごいね」
どうして?
「風が吹いて 雨もあんなに、たくさん降ったのに
まっすぐまっすぐ、輝いているんだもん」
震災や水害で困っている人たちに、たくさんたくさん届くといいね。