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そして彼女は  作者: のんこ
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第1話

俺は運が悪い。


 そのせいでいろんなものを失い、人生を損している。それだけは間違いないと思う。


 例えば運動会。


 中学生の時、俺は決して運動神経は悪くなく、クラスで常に上位5位くらいには入っていた。けれど、運動会の唯一の個人種目徒競走は8人中8位だった。


 なぜ?とよく人に聞かれる。毎回毎回、俺は正直にその時のことを話しているのだが、誰も信じようとしてくれない。きっと今回もそうだろうが、一応言っておこう。


 俺が走るたった十数秒の間に俺のレーン()()に、運動会でよく使われている例の大玉が3つきたのだ。そのせいで俺だけ徒競走は障害物競争へと変わってしまった。誰かが悪意を持って転がしたのではない。風が強かっただけだったらしい。


 例えば全国模試。


 俺は決してバカだったわけではない。別に自慢ではないが、中学生の時は常に学年で5位以上だった。


 けれど、全国模試では偏差値40。これもまたなぜ?とよく人に聞かれる。


 これは恥ずかしくてあまり語っていないが、単純に先生が配る解答用紙が俺だけ数学が英語、英語が数学になっていたのだ。


 これに関しては違和感に気づかないで報告しなかった俺が悪いのかもしれないが、みんながあまりにも普通に解いているもんだから、あれ?こういうもんなの?と思ってしまったのは仕方ないと思うんだ。


 もちろん英語と数学は0点である。


 それにしても俺だけってひどくない?そんなことある?ヤバくない?


 他にも、いろんなイベントで運が悪く(言い訳ではないからね?)失敗をし続けている。


「不幸を背負っている男」という異名を持っていた俺は、よく友達がいなそうとか言われるが、


 そんなことはない!俺は頑張ったんだぞ!運が悪い挙句に友達がいないとでもなれば人生終わりだと思ったからな。


 優しい友達思いの男を心掛けたし、クラスの人気者になるために積極的にイベントに参加したりもした。


 おかげで恋愛なんぞ考えている余裕がなかった。


 それくらい忙しかったのだ。その苦労のおかげか、高校生になった今でも友達は大勢いる。いざという時に助けてくれる友達は、運の悪い俺にとって感謝しても感謝しきれない存在なのである。


 そういえば、まだ自己紹介をしていなかったな。


 俺の名前は浅野智樹(あさのともき)。私立原東高校に通う1年生だ。


 うちの高校は水泳部が全国的に強いらしいが、俺が水泳部に入ったところで運の悪さで多大な迷惑をかけることは目に見えている。


 だから俺は何とも平和そうな文芸部に属している。もともと本は好きだったし、廃部寸前だと聞き少し心配だったからだ。


 この物語はそんな失敗だらけの俺が初めての恋をする話だ。


 何度も言うが、運の悪い俺は失ったものが多い。


 だけど彼女だけは絶対に失いたくないと思った。


 さてそろそろ物語を始めよう。


 彼女は俺と同じ電車に乗っていた。


 そして彼女は――。

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