確信
秋が深まる。
こころさんに取材の日がやって来た。
石井さんが運転する社用車に乗り、借りているスタジオに向かう。
十六時前、こころさんが来た。
彼女はよく笑い、よく話した。
「なぜ、恋愛コラムを始められたんですか?」
「んー、学生時代、恋愛相談をよく受けて。けっこう多くのカップルの仲を取り持ったんですよね。もしかしてこれ、仕事にできるかなって思って。それで」
「そうなんですね。その相談に対するお答えや、今書いていらっしゃる恋愛コラムには、ご自身の経験が反映されているんですか?」
「自分の恋愛は上手くいかないことの方が多いかな。でも、失敗もたくさんしてるから、アドバイスもできる。だから、けっこうつらい失恋もしますけど、わたしは恋愛をやめないんです」
こころさんは笑って言った。
「わたしにも恋愛のアドバイスをしてくださいますか?」
聞くべきことがすべて終わったあとで、わたしはそんなことを言っていた。
「ええ、もちろんです。どんなことで悩んでるんですか? 丸山さん美人でモテそうなのに」
「今の恋人と付き合い続けていいかどうか、とか」
「丸山さんって、自分の意見言うの苦手でしょ」
「そう、ですね」
「今の彼氏と付き合ってて大丈夫かどうか、相手のことを知らないからあれですけど……。結婚を前提とするお付き合いなら、自分の意見を頻繁に聞いてくれる人とか、自分の話を引き出してくれる人とかがいいと思います」
「なぜですか?」
「だって、丸山さんみたいなタイプは、そういう人と付き合わないと、苦しくなっちゃいますよ。自分の意見を自分で言えないんだから。仕事柄人の話を聞くことの方が多いんだろうけど、女って本来おしゃべりな生き物ですから」
ふっと、納得するわたし。
中学生の頃から今まで、わたしが自分らしく、自分が楽しいように生きてきた記憶がどこにあるのだろう。
「そうですね……。ありがとうございます。では、弊社の商品の話に入らせてもらいますね」
そう言って取材に戻る。
わたしの中から、恋人の影は消えかかっていた。
あの人がわたしを大切にするやり方に、わたしが幸せになれる道はないのだ。
取材を終えて会社に戻る道で、石井さんが言う。
「丸山さんが自分の恋愛相談をするとは意外だった」
「……わたしも、なんであんなことを言ってしまったのかわかりません」
「それで、アドバイスを聞いて、今後どうするか決まったか」
石井さんに聞かれ、わたしは決意した。
「彼とはお別れします。もしかしたら、もう恋人を作ることもしないかも……」
結婚をしたい気持ちはどこかにあった。真っ白なウエディングドレスを着て、結婚式を挙げるという小さい頃の憧れが消えたわけではない。
でも、ずっと一人でいて、ものすごくつらいかと聞かれれば、別にそんなこともない。
「次に彼氏に会うのはいつ?」
「それが、忙しいみたいで、決まってないんですよね」
「別れたら報告してよ。今日の取材を聞いてた俺の特権ってことで」
「はい」
別れる未来が確かに見えた。
誠と別れるときよりも、ずっと強い確信だった。




