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Love and words of a monopoly  作者: 空色 鈴
3/7

2

弾む会話。幸せな生活。楽しい時間。

幸せはすぐ傍に転がっている。そして、幸せは、繊細だ。

2


「ね、朱嗚(しゅき)。このお皿はどこにしまえばいいかしら」

 日が真上に昇った麗らかな午後。日のよく当たる小さなリビングルームで、明るい女の声が響いた。

「これなんだけど」

 白いエプロン姿の女は、リビングのすぐ隣のキッチンから顔を出して青年を探す。

 頭よりも上に掲げられた小さな掌には、拭いたばかりのガラスの皿がある。机を片付けていた青年、朱嗚は顔を上げ、屈めていた腰を真っ直ぐ伸ばした。

「ああ、それはこっちだよ」

 ガラスの模様を見た朱嗚は、小走りで狭いキッチンへと入る。そして、女から皿を受け取った。

「これは高い所のだから、俺が片付けるよ」

「ありがと」

 皿から手を離した女は僅かに頬を染め、嬉しそうに瞳を細めた。

「こっちこそ、洗ってくれてありがとう。()()

 受け取った皿を高い位置にある食器棚の奥に片付けながら、朱嗚も照れを隠すように髪を掻き揚げた。

「今日は皿、割れなかったね」

「ふふっ、アタシだってやればできるんだから」

「初めは割ってばっかりだったのにな」

「初めは初め! 今は今だからいいの!」

ぷぅ、と頬を膨らませた女、真葵に、朱嗚が可愛いと笑う。それにつられて、膨れっ面だった真葵もすぐに笑顔になった。

 さして大きくもないマンションの一室は、暖かく甘い幸せな空気で満たされていた。


 雨の日の出会いからすでに数週間。真葵はいまだ朱嗚の家に身を置いていた。

 出会ったその日。朱嗚の家に迎えられた真葵から順にシャワーを浴び、暖房の入れられた部屋で時を過ごした。

 無言はいけないと、朱嗚は聞かれてもいない自身のことを語った。

 年齢は十八。大学に入学したばかりの一年生で、それと同時に一人暮らしを始めたこと。幼い頃から両親の仲が悪く、数年前にはついに母親が家を出ていて、別居をしながら離婚の話を進めていること。

 そこで自分ばかり話していると気づき、朱嗚は顔を赤くして口を止めた。だが、真葵は真剣に朱嗚の話を聞き、次の話を促した。

 そこから朱嗚は止まれなくなった。

 離婚はいまだ成立していない。どうにも親権問題や土地の売買などの話が上手くいかず、両親は毎日のように電話で喧嘩。顔を合わせても怒鳴り合い。朱嗚はそれを、毎日うんざりしながら眺めていたこと。

 高校まで大人しく親の喧嘩に堪えていたが、大学が県外だということを理由に家を出た。数ヶ月前に、ようやく親から解放されたこと。

 両親との楽しい思い出などはない。家の中でいつも悲しい思いばかりをしていたこと。いつも、一人だったこと。

 零れ落ちる言葉を止める術を忘れたように、朱嗚はひたすらに自分の過去を語った。

 真葵は何時間も途切れない朱嗚の話を、欠伸一つせず、親身になって耳を傾けていた。時折、綺麗な瞳に涙まで浮かべ、それが朱嗚の思いに拍車を掛けた。今まで誰にも言えなかった愚痴が、どんどんと溢れ出していった。

 朱嗚の話が一通り終わると、今度は真葵が自身を語り始めた。

 歳は不明。見た目からして十六,七歳だろうと言われていたと、真葵は苦笑した。血液型も生まれも分からない。真葵は自分のことを、名前しか知らなかった。

 親の記憶はなく、真葵は今まで親戚の伯父に育てられた。学校には通わず、伯父に言葉や文字の読み書き、勉強を教わった。

 だがその伯父も、真葵と朱嗚が出会った早朝に亡くなったらしい。原因も死因も不明だと、真葵は言った。

 知りもしない親戚に財産を根こそぎ奪い取られ、終いには住んでいた家すら追い出された。そんな不幸続きのところで、真葵は朱嗚と出会ったのだ。

 心に傷を負っていた二人。色々なことを話し、お互いのことを知り、傷を舐め合った。

 数時間語り合っただけで、二人は完全に、相手に心を許していた。

 惹かれ合っていた。

 真葵には帰るところがない。朱嗚は一人暮らし。二人は誰に相談することもなく、自然の流れに沿うように、次の日から一緒に暮らし始めた。疑問など持たなかった。

 二人は毎日お互いの好きなものや趣味のことを話し、他愛もない世間話を楽しんだ。テレビを見て笑い転げ、ゲームをしたり、二人で作った少し歪な形の料理を食べた。

 荷物が満載していた空き部屋の掃除をし、真葵の部屋とした。寂しかった冷蔵庫の中身は野菜や肉、フルーツで賑わいを見せるようになった。

 二人で買い物に出かけては真葵の生活用品を揃え、揃いのマグカップまで買った。物の少なかった部屋は可愛らしい小物で溢れるようになった。

 真葵は、笑顔を絶やさなくなった。朱嗚の家に着てしばらくは時々暗い表情を見せていたが、数週間もすれば表情には笑顔ばかりが咲いていた。

 真葵の微笑みは、親のことで悩んでいた朱嗚の心を癒した。今まで家に居れば親のことばかりが頭に浮かび、憂鬱になっていた朱嗚から、両親のことを忘れさせてくれた。

 その恩を返すように、朱嗚はあまり世間を知らない真葵のために、知っていることは何でも話した。学校、簡単な遊びや、遠い世界の話。一般常識や勉強、料理に掃除。

 新しい世界を知っていく度に、真葵はどんな些細なことでも喜んだ。朱嗚との会話は、真葵の空っぽになっていた心を満たしていった。

 朱嗚は真葵を見たその時から。真葵は朱嗚の優しさに。二人はいつの間にか、同じ想いを心に抱いていた。

 甘く淡い、恋心。

 二人が想いを口にすることはなかったが、会話を交わす度に、瞳を合わせる度に、綺麗な思いを膨らませていった。

 相手は自分と同じ気持ちでいる。言葉にせずとも、二人は気づき始めていた。

 二人は幸せだった。

 今までの人生の中で一番の、本当に心の底からの幸せだと感じていた。




 ふわふわと浮くような、温かな天気。

 雲はない。綺麗な青空が広がり、泳げてしまいそうな色をしている。差し込む光は鋭くはない。柔らかい日差しが、昼間の部屋を照らしていた。

 窓の傍で眠っている朱嗚は、きらきらとした日差しを直に浴びていた。 腹には朱嗚が真葵へとプレゼントした、ピンクのブランケットが乗っている。先程まで真葵が使い、十分に日を浴びたブランケット。安物の絨毯もたっぷりと日光を含み、朱嗚の眠りを深くしている。

 つい数分前に起きた真葵は暖められた絨毯に寝転び、熟睡する朱嗚を眺めていた。

 眠っている時の朱嗚は幼い。普段、真葵に色々なことを教えてくれる朱嗚は大人びている。だが、こうして気を抜いている時は子どものようだ。そのギャップに、真葵は顔を綻ばせてしまう。

「しゅーき」

 細い指でつん、と朱嗚の頬を突く。何度突いても、朱嗚は身じろぎ一つしない。完全に警戒心を解き、安心のままに惰眠を貪っている。それが余計と真葵の口元をつり上がらせる。

 二人で暮らし始めてから、もう一ヶ月以上となる。

 初めは無知だった真葵だが、最近はできることも増えてきた。掃除に洗濯、布団を干すこともできるようになった。それに伴うように二人の仲は更に深まり、スキンシップも多くなっている。

 この一ヶ月、真葵は幸せだけを感じていた。

 昼食も終え満腹で、暖かい。全てを満たされた幸せに浸り、真葵は再びまどろみに落ち始める。


 ――プルルル


 だが、耳障りな機械音によって、真葵は現実に引き戻された。

 真葵は驚いたように顔を上げ、ぱっちりと開いてしまった瞳で周りを見る。小さな机と中古のソファ。そこから視線を上げれば、音の原因が映された。

 最近では滅多に鳴かなくなった白の電話。それが突然、自分の存在を思い出したように叫んでいる。ピカピカと太陽ではない光を放ち、早く取れと真葵を急かしているようだった。

「朱嗚、電話」

 瞳を擦りながら、真葵は急いで隣の朱嗚に声を掛けた。だが、

「ん、うー……」

 呼ばれた朱嗚は小さく唸る。出された声は寝言らしく、すぐにまた寝息に変わってしまった。


――プルルルル


 電話は鳴り続ける。

 止まない電話の音に、真葵は戸惑いながらも立ち上がった。電話に視線を向け、しかし覚悟しきれずにやはり朱嗚を見る。

 朱嗚が起きる気配は、ない。


 ――プルルルルル


 電話の着信音は続く。

 普段、電話を取るのは朱嗚の役目だ。だが真葵は、どうしても気持ちよさそうに熟睡している朱嗚を起こす気になれなかった。

「……よし」

 ぐっと拳を握り、真葵は覚悟を決めた。

 生まれてこの方、真葵は電話と接したことがない。しかし、これはまた新たなことができるようになるチャンスだと、自身を奮い立たせて電話の元へと向かっていく。ぎこちない動きに、白のワンピースと長い黒髪が、ふわりと靡く。

 そしてついに、真葵は電話の前に立った。

 電話は鳴り止まない。相変わらず煩く音を出している。音が、真葵の緊張を膨らませていく。

 それでも、真葵は朱嗚を起こしてしまう前にと、恐る恐る受話器に手を掛けた。

「も、もしもし」

 受話器を耳に当て声を出す。

 真葵とって、初めての電話の対応だ。以前朱嗚に教えられた通り声を出したものの、声は上ずっていた。それでいて、不安感と好奇心に胸が高鳴る。

『あ、あなた誰? え、何で女の子、が?』

 しかし、返ってきた声は、朱嗚に教えられたものとはまったく異なるものだった。

 家庭教師の進めや、怪しい宗教の勧誘でもない。驚き混じりで、困惑したような返答だ。

『あれ、電話番号……うん、合ってるのに』

 電話の主は、少し大人びた女の声だった。戸惑ったような声で「え、え?」と繰り返し、次の言葉を捜している。

「もしもし」

 返ってこない返事と、進まない話。困惑と良く分からない苛立ちを覚えた真葵は、見えない相手にもう一度呼び掛ける。

 そうすれば、電話の向こう側から慌てた声が返ってきた。

『あ、ごめんなさい! 私は、有香って言います。えっと、朱嗚君、いますか』

「朱、嗚」

 朱嗚。

 自己紹介よりも何よりも。その名前を女の声で聞いた途端、真葵の心に黒が渦巻いた。同時に心臓がドクリと脈を打つ。

 邪悪なもやもやとした気体状のものが、真葵の頭の真上から足の指先までを巡る。黒は、真葵の身体の全てを支配していく。そんな、見えない感覚。

 真葵の中で、言葉には出来ない想いが音を立てて崩れる。

『最近、朱嗚君、大学に来てないみたいだから心配で。携帯にもメールや電話したんだけど、繋がらないからこっちの電話に、あ、一人暮らしって聞いてたので、さっきはすみませんでした……あの、もしもし?』

 今度は、真葵の声がなくなる。有香という女の声が、怪訝そうに問いかけてくるが、もはや真葵にその声は聞こえていなかった。

 受話器から響く、顔も知らない女の声。胸の高鳴りと黒い靄が大きくなっていく。不快が広がっていく。

『もしもし、もしもし?』

「朱嗚は、アナタなんかと話はしないわ」

 真葵は受話器を握り締め、無表情な、光を失った瞳で答えた。

 みしりと、受話器が唸った。

『え、ちょっ、』

 ガチャリ。

 女が言葉を発する隙も与えず、真葵は電話を本体に押し付けた。電波が遮断される。

 部屋は穏やかな世界を取り戻した。しかし、真葵から溢れ出す感情が、心地の良い無音を不気味なものへと変えていく。

 電話握りしめたまま真葵は放心し、立ち竦む。動くことを忘れていた。

濁りだした虚ろの瞳。表情筋が硬くなり、唇は青みを帯びて顔も蒼白に染まっていく。息すら、薄くなっていく。

 真葵の頭の中に、忘れかけていた過去が蘇る。少し前の、朱嗚とで会う前の記憶が、溢れ出していく。


 アタシを、アイしてるってイったのに。

 アタシだけをスキってイってくれたのに。

 アタシを置いて行かないってイったのに。

 マタ、離れてイく。

 マタ、置いて、イかれる。

 マタ、取らレテ、しまウ。


 ――イカナイデ――




 *** ***


「真葵?」

 名を呼べば、びくりと真葵が動いた。

 朱嗚の目に映るのは、いつもの真葵だ。なぜか一瞬、雨に打たれているように見えたため名前を呼んだのだが、部屋に佇むのは濡れてなどいない、清楚なワンピース姿の真葵だ。

 寝ぼけていたのかと朱嗚は目を擦り、重い上半身をなんとか起こす。

 時計を見れば、時刻は夕方。開けっ放しの窓から入り込んでくる光は夕日一色で、赤が真葵の服の色を乗っ取っている。真葵の持つ受話器も、元の色を忘れさせるほど真っ赤に染められていた。

「あ、ごめん、電話だった?」

「うん」

「あ、そっか。出てくれたんだな、ありがとう。誰からだった?」「……うん」

 質問した答えは、返ってこない。そこで、朱嗚はようやく真葵の異変に気付いた。

「真葵、何かあった?」

 返事はない。一度は動いたものの、そこから真葵は微動だにしていない。そこで、雨の日のように見えたことが正しかったのだと、朱嗚はふら付きながらも立ち上がる。

 真葵の前に立ち、俯き気味の顔を覗き込む。そうすれば、雨に打たれていた真葵の顔と、今の真葵の表情が、朱嗚の中で重なっていた。朱嗚の額に、じわりと汗が浮かぶ。

「どうか、したのか」

 朱嗚はゆっくりと真葵へと手を伸ばし、顔にかかる黒髪を耳にかけてやる。真葵は視線だけを動かし朱嗚を真っ直ぐに見たものの、口は頑なに動かない。

「電話で何か変なこと言われたか? それともイタズラか何かの電話で、ビックリした?」

 ガラス玉のような瞳は、語らないままに朱嗚を見る。重苦しい空気に、朱嗚は真葵の頬に添えようとした手を、自身の胸の前に引っ込めてしまった。

 そのまま、しばしの沈黙が流れる。

「……朱嗚」

 沈黙を破ったのは、真葵だった。

 それ以上言葉を発することはなかったが、真葵がゆっくりと歩き始き、少しだけあった朱嗚との距離を埋めた。

 そして何の前触れもなく、真葵は話の流れに沿わない言葉を口にした。

「朱嗚、スキ」

 突然の告白。

 いつもとは少し違う口調で、それでもハッキリと。

「え……」

 その言葉を聞いた途端、朱嗚の思考も動きも、呼吸さえ全てが停止した。だが、首に絡み付いてきた細い腕によって、静止した思考はすぐに起動を始める。

「ま、真葵、ちょっとおちつ、」

「スキ。ダレよりも、スキ」

「え、ちょっ、真葵」

「ねぇ、朱嗚は? アタシのコト、スキ?」

 接近する綺麗な顔。本気の双眸が、朱嗚を捕らえて離さない。

心臓音が早まる。

 朱嗚は耳まで真っ赤に染めて、金魚のように口をパクパクと開閉する。言葉を出すことができず、朱嗚はただただ狼狽える。

 そんな目に見える焦りに構わず、真葵は更に追い討ちをかけるように朱嗚を混乱に導いていく。

「ねぇ、朱嗚はアタシを捨てないよね」

 赤い唇が朱嗚を誘う。

「伯父みたいに、アタシを置いて、いかないよね」

 大きな瞳が朱嗚を捕らえる。

「アタシを一人にしないよね。ずっと、一緒だよね」

 透き通る涙が朱嗚を惑わす。

「アタシを……独りにシナイで」

 小粒だった水の球は大粒になり、白い頬を伝って床に落ちた。床には小さな水溜りができ、静かに大きさを拡張させていく。

「ね、答えてよ、朱嗚」

 真葵は力なく、朱嗚の首から腕を離した。脱力するように全身からも力が抜かれ、真葵の体は崩れるように落ちてしまった。

 涙は止まらず、真葵は顔をくしゃくしゃにして、子供のように泣く。

「独りは、イヤ」

 小さく繰り返えされるのは、悲痛。

 親に捨てられた疎外感。伯父に置いていかれた恐怖。一人にされた、寂しさ。今の真葵には、そんな悲しみが詰まっていった。

 その思いを、朱嗚は感じ取る。

 辛い過去をもつのは朱嗚も同じだ。真葵よりは軽い孤独でも、その辛さを知っている。

「真葵」

 朱嗚は迷いを消した。戸惑いを捨て、決心を固めた。

 心拍数と泣き声だけが響く部屋で。

「俺も、好きだよ」

 愛を、伝えた。それは一ヶ月間、朱嗚の心の奥に秘められた気持ちだ。哀れなな真葵に感化されての感情ではない。

 朱嗚の頬は蒸気し、耳まで赤く染まっていく。僅かに震え、告白としては情けない声だった。しかしそんな声でも、二人きりの部屋には大きく響いた。

「ホント?」

 真葵は濡れた瞳を細め、思い人を見つめる。目の淵に溜まった涙が、つぅと流れ落ちていく。

「あぁ、本当だよ。見捨てないし、置いていかない。ずっと一緒にいるよ」

「朱嗚、ホントウ? ウソ、つかない?」

「俺もずっと一人にされたから、真葵の気持ち、よく分かるから。だから、安心して」

「……うん」

 細めた眼睛が更に細くなり、真葵にやっと笑顔が戻った。朱嗚も赤い頬で笑顔を返し、そっと真葵を抱きしめた。

 流れて止まなかった真葵の涙が、止まる。

「好きだよ」

「うん」

 涙を流しすぎ、赤くした瞳で朱嗚を見つめ、真葵も朱嗚の背に手を回す。安心の息が、乾いた喉から外に出た。

「朱嗚、朱嗚……」

 真葵の頬に、一筋の涙が伝う。悲しみではなく嬉しさの涙だった。水粒は頬を伝い、朱嗚の服へと染みを作った。

「何があっても、傍にいるよ。大切にする」

「……ウレシイ」

 二人はゆっくりと顔を見合わせ、何も言わずに、唇を合わせた。

 触れるだけのキス。ただ唇同士が触れただけだというのに、全身を燃やすように広がっていく、熱。

 唇を離した二人は、笑った。幸せそうに満面の笑みで、笑った。

 そして、真葵はもう一度、何かを確認するように舌に声を乗せる。

「何があっても、一緒だから。約束だからね。アタシがナニをしても、どんなコトをしても……一緒だよ」 その言葉に、朱嗚は言葉なく、笑顔のままで、頷いた。



これからどんどん仄暗くなっていきます。よろしくお願いいたします。

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