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にゃんこさんと甘いもの

本日1回目の更新になります。

「あむあむあむあむ……」

 首筋がくすぐったい。

「あむあむあむあむあむあむあむ……」

「うひゃ! なに? あ、ミケーレか」

 ミケーレは恵に馬乗りになって首筋を甘噛みしていた。

「おはようございますにゃ。ご主人様。どうですかにゃ? あたしの息、いい匂いするかにゃ? はーっ……」

 毎日風呂に入り、毎日歯を磨いている。

 習慣が変わって、ミケーレ自身も驚いたり嬉しかったりするのだろうか。

「う、うん。いい匂いだよ」

 ミケーレ自身から漂う甘いような香りも相まって、たまらなくなってくる恵。

 おまけに息を吐いている場所が、恵の鼻先数ミリなのだ。

 ちょっと顔を上げれば唇が触れてしまう距離。

 恵の心臓はハードロックのドラムのように高鳴っていく。

 ミケーレの村ではどうだったかは知らないが、恵にとっては最初からミケーレは可愛かった。

 風呂に入るようになり、綺麗な長い髪をブラッシングするようになって。

 さらに美少女化してしまっている。

 美少女でおまけにリアル猫耳娘のミケーレの顔がこんなに近いのだ。

 残暑厳しい九月。

 エアコンをかけていたので、上掛けは使っていない。

 ミケーレはエアコンの効いた部屋がえらくお気に入りで、外に出るとまだへたってしまうらしい。

 そんな状態、要はパジャマ一枚隔てたお腹の上にミケーレが乗っているのだ。

 意識をするなという方がおかしいだろう。

 柔らかくてとてもいい匂いのするミケーレ。

 彼女の背中越しに見える尻尾は立っている、楽しいのだろう。

 やっとミケーレは自分の顔と恵の顔の距離に気付いて、慌てて身体を起して少し後ずさる。

 すると、とんでもない場所にミケーレのお尻が乗っかってしまうのだ。

 ぐにっ

 恵はやばいと思った。

「あれ? なんにゃこれ。あっ、ぁん! 変なところに固いのが当たってる」

 ミケーレはお腹の辺りまで移動すると、後ろ手に自分のお尻の辺りをごそごそまさぐり始めた。

「ちょ。こら、駄目だって。それ触っちゃだめだから」

 恵は力の限り横に回った。

 うつ伏せになった恵にミケーレは不思議そうな顔をしている。

「なんか、固いけど柔らかいのがあったような……」

「あのね。それは男の大事な部分だから。その、ミケーレがあまりにも可愛いから、その、ちょっと」

 ミケーレは恵の背中に胸を押し付けてきた。

 恵の耳元で囁くミケーレ。

「ご主人様のえっち。もしかして。あたしで興奮しちゃったんですか?」

「ごめんなさい。僕も男だから、そのね」

「なんだか、恥ずかしいような、嬉しいような。こうやって、ご主人様の匂い嗅いでるとふわーっとしてくるんです。そうするとさっきご主人様のが当たってたあたり、太腿の付け根がむずむずしてくるんです。あむあむあむ……」

 また甘噛みを始めるミケーレ、

「頼むから降りてください。ごはん食べないと、歯磨かないと駄目でしょ」

「あ、ごはん出来てたの忘れてました。ごめんなさいだにゃ。下で待ってるにゃ」

 ミケーレが階段を下りていく音が聞こえる。

 天然なのか、それとも狙ってからかっていたのか、よくわからなくなった恵。


 朝ごはんはハンバーグではなかった。

 さすがに朝からがっつり食べるのはきついので助かった。

 朝食が終わって、恵は紅茶の入れ方を教えていた。

「これはね、ティーサーバーっていうんだ。これにこれくらい紅茶の茶葉を入れてね。お湯を入れてキッチンタイマーを四分くらいでいいかな」

 ピッピッピッピッ

 スタートボタンを押す。

 ピーっ


 ピピピピ……

「これでこの上にあるのをぎゅっと押して」

 恵は上のレバーを押して、茶こしを押し下げた。

「あとはカップに注いでできあがり」

 ミケーレと自分のカップに紅茶を注いだ。

「どうぞ。飲んでみて」

「はいですにゃ。ふぁ、とてもいい香りですにゃ……あつっ!」

 ミケーレの尻尾が膨れ上がった。

 ハンバーグはちゃんと冷ましてから食べていたようで気付かなかったが。

 ミケーレは予想通り、猫舌だったようだ。

「軽く牛乳を注いでも美味しいよ。あ、ちょっとまって」

 恵は生クリームのパックと角砂糖を持ってくる。

「ご主人様、その四角いのってなんですにゃ?」

「これは角砂糖っていってね、砂糖を固めたものなんだ」

「えっ。お砂糖ですかにゃ? 生まれて初めて見ましたにゃ……」

 恵は角砂糖を二つ入れてかき混ぜてから、生クリームをちょっと多めに入れた。

 軽くかき混ぜてカップを触ってみると程よく冷めていた。

「はい。飲んでみて、もう熱くないと思うから」

「は、はいですにゃ。ふわぁ、あまあまですにゃ……お砂糖ってこんなに甘いんですね。顎がぐあぐあしそうなくらいに甘いです」

 最後は素に戻っていたミケーレ。

 尻尾が立っていた、機嫌が凄くいいみたいだ。

 猫と同じで同じサインが出るから解かりやすくて、微笑ましい。

「砂糖ってそんなに貴重なものなの?」

「はいですにゃ。あたしの村にはありませんですにゃ。高貴なお方しか口にできないって聞いてますにゃ……」

「そっか。こっちでは珍しくないものだからね。これからは好きなときに飲めるんだけど。飲み過ぎたら太るから、運動は欠かせないけどね」

 そのときミケーレの尻尾がぶわっと膨れた。

「も、もしかして、あたし重たかったですか?」

「いやいやいや。軽すぎるくらいだよ。ここに来たときも痩せすぎかなって思ったくらいだから」

 決してお世辞ではない。

 病的なくらいに痩せていたのは間違いないのだから。

「そうですか、安心しました」

 恵は台所の戸棚からクッキーを持ってくる。

「お茶を飲みながらこれ食べると美味しいよ。クッキーっていうお菓子なんだ」

 恐る恐る手を伸ばして、口に運ぶミケーレ。

 サクッ

「甘っ! さくさくして美味しい。くっきーっていうんですか。これ大好きな味です」

 両手で持って小さな口を動かして食べている。

 まるでリスが食べているかのような仕草。

 それがにゃんこがしているものだから、萌えまくりの恵だった。

「うはー。可愛いなぁ……」

 つい口に出してしまう恵。

「えっ? あたしが?」

「うん。すっごく可愛い……」

 ぼーっと見つめているので、ぽろっと答えてしまう。

「……うにゃぁ……」

 四つの耳まで真っ赤にしながらも、クッキーを食べる速度は変わらなかった。


読んでいただいてありがとうございます。


ブックマーク、及びご評価ありがとうございます。

これを糧にがんばりますので、よろしくお願いします。


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